02.10.2020
サッカーの1対1のコツはDFの背中側に進むこと!香川真司を輩出したFCみやぎバルセロナの練習方法
長きにわたり日本代表でも活躍した香川真司を輩出するなど、個の育成に定評があるFCみやぎバルセロナ。仙台で活動する同クラブは、「1対1」、「パス&コントロール」を始め、サッカーを行う上で必要な個人スキルの習得に力を入れている。
COACH UNITED ACADEMYでは「ジュニア年代で身につけておきたいスキルと個人戦術」というテーマで、トレーニングを実践してもらった。
前編では「ボールフィーリングと1対1の攻守のトレーニング」と題し、FCみやぎバルセロナジュニアユース 石垣博監督によるトレーニングを紹介したい。
1対1を強化したい、自身のチームでも使える練習方法がないか探しているといった人はぜひ参考にしてみてほしい。
(文・鈴木智之)
1対1でDFを振り切るには相手の重心をずらし逆を取ることが重要
石垣監督は「我々のチームはジュニアユースを対象としたチームですが、『1対1』、『パス&コントロール』はジュニア年代から強化しておくべきスキルだと思います」と話し、トレーニングがスタートした。
U-13の選手が実践するトレーニング。最初は、ウォーミングアップを兼ねたボールフィーリングから。ボールを各自1個使い、足の裏やインサイドで触り、前進、後進、方向転換を交えながらドリブルをしていくという練習方法。
石垣監督からは「ボールに触る強さを工夫して、方向を変えよう」「ボールだけが前に行かないように、たくさん触ろう」「空いているスペースに運んでいこう」というアドバイスが送られていた。
スピードを上げたドリブルの次は、リフティングへと移行。両足のインステップやインサイド、アウトサイド、頭など様々部位を使い、顔の高さにボールを上げるリフティングを繰り返していく。(顔の高さまで上げることによってボールを正確に扱う技術が求められる)
続いては「1対1の鬼ごっこ(ボールなし)」。
向かい合った状態で攻撃側と守備側に別れ、左右のマーカーのどちらかを通り抜けたら攻撃側が勝ち、タッチすれば守備側の勝ちというルールだ。(30秒で攻守が交代する)
石垣監督は選手たちのプレーをしばらく観察し、攻撃側の選手に対して、次のようにポイントを伝えていく。
「守備側の選手の前で、細かく動くのではなく、左右に動いて相手を動かし、相手の逆(背中)をとろう」
さらに、守備側の選手には「攻撃側と同じ動きしたら逆をとられるので、細かくステップを踏み、攻撃側の選手と同じ歩幅にならないように。どちらの方向にも対応できるようにしよう」と、大股にならないように注意を促していた。
その後、ボールを使って鬼ごっこを行い、「ボールを動かして、相手を動かす」ことにフォーカスしていく。
1対1の場面を突破するには「相手の背後」を突く意識を強く持つ
3つ目のトレーニングは「1対1の攻守(2ゴールライン突破)」。
1対1の状況で、攻撃側は守備側の背後2箇所にあるコーンゴールをドリブルで通過すれば勝ち。守備側はボールを奪い、攻撃側の背後にあるゴールにパスをすることを目指す。
攻撃側は1対1の鬼ごっこでやったように、守備側を揺さぶって逆を突き、突破していくこと。守備側の動きを止めないスピードで、突破を仕掛けることがポイントだ。
石垣監督は次のような声掛けで、攻撃側の選手の判断に働きかけていく。
「ファーストタッチで左右にボールを動かして、相手を動かそう。足元にボールを止めてから、判断しないように!」「相手の背中側に進むことを意識しよう。相手が背中側に誘ってくるかもしれないので、動きを良く見よう」
前編最後のトレーニングは「2対2の攻守(3ゴールライン突破)」。
設定はひとつ前の練習方法と同じだが、人数が2対2になり、マーカーゴールが3箇所に増える。
人数、ゴールの数ともに増えるが、局面は「1対1の攻守」と同じ状況になるところがポイントだ。1つのゴールが攻撃1対守備1の状況で消されていたとしても、残りのゴールは2つある。攻撃側は2つのゴールがあることを考えて、守備側との1対1の状況を攻略していく。
石垣監督は「さっきの練習と状況は同じだよ。ボールを動かして、相手の背後を突こう」というアドバイスを送り、ボールを持っていない攻撃の選手は、ボールを持っている選手がプレーしやすいように、守備の選手を引きつけて、味方がプレーするスペースを作ることの重要性を説いていく。
さらに石垣監督は、ボールを保持していない攻撃側の選手に対して、「最初はボール保持者から離れて(広がって)パスを受けるアクションを起こすが、守備側にマークされてボールを受けられない状況になった場合は、守備側の選手を引きつけて動くことで、ボールを持っている選手が突破に使えるスペースを作り出す」という部分をコーチング。
詳細は動画で確認して頂ければと思うが、サッカーのコンビネーションを使った突破において、非常に重要なプレーだ。
また、プレースピードが上がらないと見るや、「コーチが5秒数えて、その中でフィニッシュに持ち込む」というルールにすることで、素早い判断と動作に働きかけていった。
前編のトレーニングはサッカーの要素を含みつつも設定がシンプルで取り入れやすいものだ。1対1などのシンプルな練習方法も、ポイントを押さえることで選手の成長を後押ししてくれる。
サッカーコーチで、どういった練習方法を取り入れるか迷っている人、練習中にどのように声かけをするか学びたい人にとっては参考になるはずだ。
【講師】石垣博/
18歳から指導に携わりスポーツ少年団での監督、宮城県のU-12年代の地区トレセン・県トレセンなどでも監督を務める。ジュニアユース年代ではFC FRESCAでの監督経験を経て、2005年より現在のFCみやぎバルセロナの監督に就任し15年目を迎える(2011年からは女子チームも立ち上げる)。また、宮城県サッカー協会 指導部 サブチーフインストラクター(47FA C級D級インストラクター)も務めている。
取材・文 鈴木智之