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チームの目標設定と「自信」の持たせ方/チームを成長思考に変える目標設定とリーダーシップ論

こんな時だからこそ、日々をどう過ごしていくのか「目標の大切さ」に目を向けている人も多いのではないだろうか? COACH UNITED ACADEMYでは、サッカーの育成年代のメンタルトレーニングにおいて、日本有数の現場経験を誇る、大儀見浩介氏の講義を公開中。

前編では「目標の立て方」について解説してもらったが、後編では「目標の質を高めて、達成するためにはどうすればいいか?」という視点をお届けしたい。(文・鈴木智之)

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成績や評価ではなく、学びや努力、工夫を重視する

大儀見氏の講義の特徴は、学術的な裏付けがあること。経験則だけでなく、論理的な面からもアプローチし、それを現場の指導者、選手レベルに落とし込んでいく。

動画では「達成目標理論」を紹介し、課題目標と自我目標の違いや、そこから導き出される、両者の行動・思考パターンなどを詳細に説明。

「課題目標志向の人は、能力を伸ばす行動をし、学びや努力、工夫を重視します。新しい技術の習得や能力の進歩を目指すタイプです。自我目標の人は成績を考えて、評価や比較を気にします。能力の中でしか行動せず、高評価を目指し、低評価を避けます」

成長のためには、自我目標ではなく、課題目標志向になることが大切だと言う。

「課題目標志向になるためには、現在から一度過去を振り返り、自分のチャレンジ、失敗や成功から学び、現在の目標を立てること。今までやってきたことやがんばったこと、発見や気づきから目標を立てて、今より少しだけ上の目標、つまり『がんばればできそうだな』と、やる気が出る目標を立てていきます」

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さらにこう続ける。

「未来を見て、現在を受け止めることができれば、自分の理想的な思考、行動を導き出しやすくなります。今までの努力を思い出し、未来を見て、現在に戻る。そして目標を立てるようにしてみましょう」

その際に役に立つのが、「未来(目標)から逆算して、目標を立てるテクニック」だ。動画では「10枚のコインを使ったゲーム」を例に出すことで、目標から逆算することの大切さを伝えている。このあたりは、実際に子どもたちに話をするときにも、わかりやすい内容だ。

さらには、目標の質を高めるために、重要なことに言及。

「目標の質イコール、モチベーションの質です。目標の質を高めるためには、小さな矢印(目標)を大事にし、具体的な数字を入れること。目標から逆算して、達成期限を決めること。失敗=成功の元と考えて、努力を自信に変えることが重要なんです」

成長の上でのキーワード。それが「自信」だ。大儀見氏は「結果や評価から自信を作るのではなく、自分の努力から自信を作っていきましょう」と笑顔を見せる。

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チームとして目標を立てる際のポイントとは?

ここからは、「グループ」と「チーム」の違いについて、話は進んでいく。

「グループとチームの違い。それは共通の目標の有無です。共通の目標を持っているのがチームです。だから、チームとしての目標設定が大切なのです」

大儀見氏はチーム向けの講習会などで「みなさんの最終目標はなんですか? チーム内でのあなたの役割はなんですか? 明日、あなたが何をすれば、チームの最終目標に近づくことができますか?」と質問をするという。

さらに動画では、チームとして目標を立てる際に、意識しておくべきポイントを紹介。

「チームには発展の段階があります。それが形成期→混乱期→規範期→生産・実行期です。チームのメンバーが形成され、次に来るのが混乱です。揉め事が起きやすい時期なのですが、一人ひとりが成長志向になるために、指導者がどんなサポートできるか。それを考えてみましょう」

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チームのメンバーが集まる形成期では「コーチは選手を知り、チームは各チームメイトを知る必要があります」と言う。ここでは、お互いを知るエクササイズなどでコミュニケーションをとっていく。

混乱期は意見や方向性の違いが出たり、アイデアが割れる時期だ。

「混乱期では、コーチは選手とコミュニケーションをとり、役割の明確化に取り組みましょう。このあたりからモチベーションやマインドセットのサポートをすることが重要になります」

規範期では混乱を経て、チームのルールやモラル、役割分担が決まってくる。

「この時期に、チーム全体で目標設定ができるようになるといいですね。そうすると、個人の目標が明確になり、一人ひとりが先のことを考えて行動するようになっていきます」

指導者は「どうすればより良いチームになるか」を考えて、選手と情報交換やコミュニケーションを頻繁にとることがポイントだという。

「選手にアイデアを聞いてみたり、練習日誌を使って選手と意見交換をするのも良いですね」

これらを経て、生産期へと入っていく。この段階で指導者は、選手にフィードバックを提供し、チームの雰囲気を評価する。パフォーマンスを維持するために、何が必要かを判断することを心がけると良いという。

COACH UNITED ACADEMYの本編動画では、ここで紹介した内容以外にも、チームの士気やチームスピリットが崩壊する原因、チームミーティングの原則、リーダーシップ理論など、様々なトピックを紹介している。前後編で90分を越えるボリュームになっているので、自宅待機などで時間のある今だからこそ、じっくりと見て、個人の成長、そしてチームの成長に役立ててほしい。

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【講師】大儀見浩介/
株式会社メンタリスタ 代表取締役
東海大学第一中学校(現・東海大学付属翔洋高等学校中等部)サッカー部時代に、全国優勝を経験。東海大一高ではサッカー部主将としてプレーした。東海大学で応用スポーツ心理学(メンタルトレーニング)を学び、サッカーを中心に小学生からプロまで様々なスポーツチームのメンタルトレーニングをサポート。また現在はスポーツだけでなく、教育、受験対策、ビジネス、社員研修など、様々な分野で指導にあたっている。NPO法人清水サッカー協会メンタルトレーニングアドバイザー。