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関西のJクラブも注目する滋賀県のジュニアチャンピオンA.Z.Rが行うトレーニング【前編】

2020年の「JFA 第44回全日本U-12サッカー選手権大会」に、滋賀県代表として出場するA.Z.R(アッズーロ)。「攻守に主導権を握るサッカー」を目指し、将来プロで活躍できる選手の育成に取り組んでいる。その育成力やチームで取り入れているトレーニング内容は、関西のJリーグクラブのアカデミーも注目しており、今年は4名がJクラブのジュニアユースに進むことが決まっている。

今回はU-12の古荘隆徳監督に「攻守で主導権を握るために必要な、駆け引きの習得と相手の逆を突くトレーニング」をテーマに実演してもらった。前編では「受け手と出し手のタイミングを掴む、パス回しのトレーニング」を紹介したい。(文・鈴木智之)

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攻守で主導権を握るには「相手の逆を突いて、駆け引きに勝つこと」

A.Z.Rは攻守に主導権を握るサッカーを目指し、テクニックに優れた選手を育成している。そのスタイルを実現させるために、古荘監督は「相手の逆を突いて、駆け引きに勝つことが重要」と考えており、「いま何をすべきなのか(攻撃or守備、パスorドリブルorシュート)を、相手がいる状況でもしっかりと判断できるように指導しています」と語る。

「今回のトレーニングでは、攻守に主導権を握るために必要なポイントを練習していきます。相手との駆け引き、相手の逆をとることを意識してプレーすることで、今なにをすべきか、攻撃か守備か、ドリブルかパスかシュートかを、選手が判断できるようになるためのトレーニングです」

最初のトレーニングは、ウォーミングアップを兼ねた「パス&コントロール」から。対面の状態で前方から来るボールをコントロールし、味方に渡す動きを繰り返していく。

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ここでのポイントは「自分のタイミングではなく、相手の動きを見ながら動き出してボールをコントロールし、パスを出す」こと。タイミング良く動き出した後に、ファーストタッチに意識を向けて、ボールを蹴ることのできる位置にコントロールしていく。

ここで古荘監督は「我慢して」と声をかけていた。ボールに速く触りたい気持ちを抑え、急いで前に出るのではなく、パスの出し手の状況を見ながら、ライン上でボールを受けることのできるタイミングまで「我慢して」動き出すことを意識づけていた。

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「自分が欲しいところ(スペース)を空けて、我慢しよう。タイミングを合わせて動き出そう」と繰り返し、伝えていく。

ボールを受ける時に欲しい場所をわざと空けておく工夫も入れる

次の練習は「予備動作を入れたパス&コントロール(1)」。最初に行った「パス&コントロール」の発展形として、ボールを受ける前に予備動作を入れるルールが追加された。

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古荘監督がまず伝えたのは、ボールを欲しい場所をわざと空けておいて、反対に進む予備動作を入れて、本来欲しいところでボールを受けること。ここでも、タイミングを合わせることを重点的にコーチングし、「我慢して、ここというタイミングで動こう」と、状況を見て動き出すことの重要性を説いていく。

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ほかには「動きに緩急をつけること」に言及。パスを受ける前の予備動作と、実際にボールを呼び込む動きが同じスピード、同じリズムになっていたので、「ボールを欲しいときにグッとスピードを上げよう。その動きでマークを外すことができるよ」とアドバイスを送っていく。選手たちはその動きを意識することで、プレーにメリハリが生まれ、良いプレーができるようになっていった。

次は「予備動作を入れたパス&コントロール(2)」。前方から来たボールを一人目の選手がスルーして、後ろにいる選手がパスを受ける。一人目の選手は、その選手からボールを受けて、パスを出す動きを繰り返していく。

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古荘監督は、地面に置いてあるマーカーを相手選手に見立て、そこを外す動きをして、身体の向きを作った状態でボールを受けるように指示。二人目の選手には、一人目の選手がボールを受けられる状態(身体の向きを作る状態)まで待って、タイミングをあわせることを要求していた。そうすることで、実際の試合に近いプレーになっており、ゲームリアリティのある練習になっていた。

パスばかりに頼らずボールを運ぶことで状況が変わり、選択肢が増える

前編最後の練習は「4対2のパス回し(プレーエリア制限)」。2人1組、3グループで実施し、各プレーエリアで2対1の数的優位ができているので、そこを利用して逆サイドへパスを通すことを意識させていく。

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ポイントは「攻守の切り替え」と「ボールをつなぐこと」。選手からは、ボールを奪われた直後に「切り替え」「(パスコースを)切ろう!」などの声が出始める。ここでは、「状況を見てプレーを決断する」ことについて、アドバイスを送っていく。

「ボールを運ぶことで状況が変わり、選択肢が増える。そうすると景色が変わるよね。パスばかり考えていると、相手は守備がしやすい。でもボールを運ぶことで、パスコースが生まれてくる。横パスを入れながら、逆サイドへ出すことを意識してボールを運ぼう」

守備では、ボールから遠い方のゾーンにいる選手が、ボールに近いところにいる選手に対して指示を出しながら、パスコースを限定させて奪うことにも言及。相手の状況を見て、いつ奪いに行くか、行かないかの判断にも働きかけていった。

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A.Z.Rの選手たちは技術レベルが高い。そんな彼らが判断に働きかける指導を受けることで、どのようにプレーが変化していくかを、ぜひ動画で滋賀県代表(ジュニア)の街クラブのトレーニングを確認してほしい。

後編では発展形として「プレーエリアを制限した6対3のパス回し」と「プレーエリアを3分割したゲーム」を行う。

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【講師】古荘隆徳/

東京農業大学を卒業後、甲賀クラブ(滋賀)、アリーバ甲賀(滋賀選抜)、SR2008(滋賀選抜)でプレー。「選手が考え、判断することにより自立心を育て、将来プロで活躍する選手の育成に務めること」をモットーに2014年に設立されたA.Z.Rで設立当初からコーチを務める。2020年度よりトップチームの監督に就任し、チームを初の全国大会出場へと導いた。