02.15.2021
相手を誘導してボールを奪うポイントを作る方法/バディーSCのビルドアップを打破する守備のトレーニング
2019年度の「全日本U-12サッカー選手権大会」で優勝したバディーSC。当時の選手たちが実演する動画のテーマは「前線からのプレスで、相手のビルドアップを打破する守備のトレーニング」。後編は、バディージュニアユース横浜 統括コーチの髙橋伸忠氏が実践する「連動した守備で前線からボールを奪う実戦練習」の様子をお届けしたい。(文・鈴木智之)
次のパスコースを切るなど相手に数的優位を作らせないことを意識する
昨今、ジュニア年代において、GKからボールを繋ぎ、ビルドアップをするチームも増えてきた。それに対してどのように前線から守備をし、高い位置でボールを奪うことができるか。それが今回のテーマだ。
最初のトレーニングは「5vs5(3 vs2+2vs3)」。それぞれ攻撃エリアに2名、守備エリアに3名の選手を配置する。ボールが攻撃エリアに移動したら、守備から2名が攻撃に参加し、攻撃4対守備3の設定になる。
ポイントは2つ。ひとつが、ボールに近い選手と後方の選手が連動した守備をし、簡単に縦パスを入れさせないこと。もうひとつが、縦パスが入ったとしても、次のパスコースを切り、相手に数的優位を作らせないこと。
さらに髙橋コーチは攻撃側の選手に、「守備側を困らせる動き」を指示。それが「攻撃側は縦の深さを作るポジションをとり、できたスペースに入ってボールを受ける動き」だ。
守備側はそのセオリーを踏まえた上で、簡単に縦パスを入れさせないためのポジションをとり、パスを出させたところを狙い、インターセプトする。髙橋コーチからは「縦パスを簡単に入れさせないように」「我慢強く」「行けるところは行こう」「アプローチスピードを変えよう」といったアドバイスが送られていた。
ここで強調したのが、味方同士が声を出してコミュニケーションをとること。ボールから遠いところにいる選手が、近いところにいる選手に声を出し、ポジションを微調整していく。
もっとも注意したい「縦パスに対する守備」については「ちょっとしたポジショニングのズレで、ゴールを奪われるか、ボールを奪えるか、相手の攻撃を遅らせることができるかが変わる」と話し、常に周囲の状況を見て、細かく立ち位置を変えることの重要性を説いていた。
途中から、「守備側は1人、プレスバックしてもOK」というルールに変更。そうすることで守備エリアは4対4の数的同数となる。
「守備時に人数が増えると、ボールを見る時間が長くなるから気をつけよう。そして、ボールと相手を見てポジションをとろう。マークがずれたら、味方に伝えること。そのタイミングが大事になる」(髙橋コーチ)
相手のビルドアップ時は、ボールを奪うポイントを作り出す
2つ目のトレーニングは「6vs6+1GK」。3-3-1のシステムでプレーし、攻撃側と守備側に分かれる。守備側はボールを奪ってゴールを目指し、攻撃側はコーン通過を目指す。
ポイントは「どこでボールを奪うか」。そして「奪った後にどうやってゴールを目指すか」の2つ。奪ったボールを素早く攻撃に繋げ、相手の陣形が整う前にゴールを目指していく。
このトレーニングでは「試合中によくある場面」が収録されている。相手GKからのビルドアップに対し、前から2人でプレスをかけに行ったシーンで、ボールを受けたセンターバックがGKに戻し、左サイドに展開されてしまった。
そこで髙橋コーチはプレーを止めて、「2人でプレスに行ったときに、どういう状況が起きた?」と質問し、こう続ける。「ボールホルダーをどちらかのサイドへ追い込むのならいいけど、そのプレスのかけ方だと、相手は左右どちらにも進むことができるよ」
ここで重要なのは、パスコースを切りながら、ボールホルダーを左右どちらかに誘導すること。そして、前線の選手の動きに連動して、後方の選手がポジションをとりながらプレスをかけること。空いたスペースを作らないポジショニングに意識を向けることがポイントとなる。
髙橋コーチは「相手を誘導しながら、ボールを奪うポイントを作ろう。奪うときはアプローチスピードを上げて、アクションを起こすこと。積極的に奪おう」と声をかけていた。
最後のトレーニングは「Game(7vs7+GK)」。これまで取り組んできたことを、試合の中で発揮していく。ここでも、連動した守備を第一に考えることを強調していた。
「前線と後ろの選手の守備の繋がりを意識しよう。そのためにはコミュニケーションが大事。相手を誘導して、ボールを動かさせて、トップスピードでボールを奪取すること。状況が悪ければ、守備を整えよう」
動画ではポジションバランスのとれた状態からプレスを開始し、相手のパスミスを奪って得点に繋げる場面もあった。その様子はぜひ映像で確認してほしい。
最後に、髙橋コーチは守備のポイントを次のように語った。
「大切なのは、積極的にボールを奪いに行くこと。相手を追い回すのではなく、誘導し、ボールの持ち方、体の向き、頭の位置を見て、どこにボールが出るのかを予測して、前後に連動して守備をすることを心がけています。相手がJクラブであっても引いて守るのではなく、前線からの守備にチャレンジしています」
全国トップレベルの街クラブ、バディーSCの守備を学びたい人は、ぜひ動画を御覧いただきたい。多くの発見があるはずだ。
【講師】髙橋伸忠/
1996年からバディーサッカークラブで指導者を始める。
現在はバディージュニアユース統括として指導する傍ら、バディーサッカークラブのスクール、横浜市トレセンU-11、U-12でも指導者を務めている。
取材・文 鈴木智之