11.05.2019
パスを通されてはいけないスペースの埋め方/大宮アルディージャU12のグループで連動する守備の強化方法
組織的かつテクニカルなサッカーを展開し、育成年代の強豪の地位を築く、大宮アルディージャアカデミー。COACH UNITED ACADEMYでは、U12の金川幸司監督に「グループで主導権を握る守備の実践方法」というテーマで、トレーニングを実施してもらった。動画後編では「実践形式で、連動した守備を行う応用練習」と題し、3対3や6対6+GKなど、実戦に近い形でのトレーニングを紹介したい。(文・鈴木智之)
ボールを奪いに行く前に優先的に抑えるスペースを確認する
金川監督は「前編で実施したチャレンジ&カバーの動きをベースに、人数を増やすことでライン数を増やし、連動してボールを奪うことを目的にトレーニングをしたいと思います」 と話し、トレーニングがスタートした。
最初のトレーニングは「3対3+サーバー(1way)」。
ここでは、「どの選手がボール保持者にアプローチに行くのか」「空いたスペースを誰がカバーするのか」に重点を置いてコーチング。さらに、「どこにボールが動きそうか」を予測しながら、ボール配球役のパスコースを切る動きなどについて指導。
金川監督は「やられたくないスペースを優先的に抑えて、そこから出たボールに対してアプローチしよう」と、選手同士が連動することの重要性を説いていく。
アドバイスを受けた選手たちは、ボール保持者に近い選手がアプローチに行きながら、別の守備の選手が自分のマークとボールの位置を見て、パスを出されないところに立つ動きを実行。攻撃側のパスミスを誘発するなど、良いプレーが出始める。
金川監督は、長いボールを蹴られたときに対応しやすいように、半身になる動きや、背後にボールを出されないことを第一に考えながら、ボールに対してアプローチすることなど、守備の原則について指導を行っていく。
加えて、ボール配給者の位置によって、ディフェンスラインの高さを調整することにも言及。守備側の選手は、まず攻撃側の選手に対してプレッシャーをかけられる位置に立つこと。その基準は攻撃側の選手にボールが入ったときに、すぐにプレッシャーをかけられる位置でありながら、自身の背後にスペースを作らない(背後にパスを通されない)位置に立つことだ。
「裏のスペースに一発でパスを通されると、失点する可能性が高くなる。だけど、それを恐れるあまり、ディフェンスラインを下げすぎるとプレッシャーがかからなくて、相手にボールを持たれてしまう。この2つを満たすのが、良い守備ラインの高さ。それを探りながらやろう」(金川監督)
ゲーム形式では全部のボールにプレッシャーに行く必要はない
トレーニングの最後は「6対6+GK」。
この日のテーマである「チャレンジ&カバー」の集大成となるトレーニングだ。実戦に近い6対6の状況で、インテンシティの高いプレーが繰り広げられていく。
金川監督は「ボールの取りどころを決めよう。全部プレッシャーに行く必要はない。無理に行くと、パスを出されて逃げられる」と説明し、「ボールへのアプローチと裏のスペースのカバーリング。そのどちらにも対応できる位置に立ち、全体が連動しよう。そのためにコーチングが必要だよ。どこにボールを出させるの?」と問いかけていく。
選手たちのプレーとシンクロしながら、「サイドでボールを奪うのであれば、全体がボールサイドに寄って、中を固めてパスを出させて取ること」「全員が同じイメージを持てるように、コーチングで守備のスイッチを入れること」「ボール保持者に近い選手が、まず相手の正面に入り、隣の選手はそれにともなってポジションをとること」などを、順を追って指導することで、選手たちのプレーも変化していった。
金川監督は、U-12年代の守備のポイントについて「1対1で負けない、球際で強く行く、ボールについていくことが重要で、そこはトレーニングしていかなければいけないと思います」と話し、「ジュニアユース年代を迎えるにあたっては、やられたくないスペースを予測し、全体で連動してボールを奪う部分も重要になるので、ぜひ参考にしていただければと思います」と付け加え、この日のトレーニングを締めくくった。
大宮アルディージャジュニアという、日本のU-12年代のトップレベルの選手たちのトレーニングは、COACH UNITED ACADEMYで公開中。ぜひこの機会に見てみてほしい。多くの気付きや発見があるはずだ。
【講師】金川幸司/
阪南大学を卒業後、2000年に大宮アルディージャに入団。翌年、NTT西日本熊本FCへレンタル移籍。その後、オーストラリアの「パインリバース」でプレー。引退後はセレッソ大阪サッカースクールコーチをスタートに各年代のコーチを経験。2012年以降は大宮アルディージャでユースコーチ、育成コーチ、U12コーチを経て、現在はU12監督を務めている。
取材・文 鈴木智之