06.17.2019
自陣から中盤エリアへ侵入する際のスペースの作り方/大宮アルディージャU12が実践するビルドアップトレーニング
攻撃的なポゼッションサッカーを展開する、大宮アルディージャU12。全国的な強豪として知られる同クラブでは、どのようなトレーニングのもとにパスワークに優れたサッカーを展開していくのだろうか?「自陣エリアから中盤エリアへ侵入するために必要なビルドアップトレーニング」というテーマで行われた練習の後編では「相手がいる状況でビルドアップを実践する応用練習」の様子をお届けしたい。(文・鈴木智之)
ボールを受ける前にDFの位置を見て空いているスペースを確認しておく
動画後編、最初のトレーニングは「3対3+2フリーマン」。グリッド内でポジションを固定した3対3+2フリーマンを行い、攻撃側は守備側にボールを奪われたら切り替えて攻守交代。パスが8本通ったら、通された側は外の3人と交代するというルールだ。
U12の監督を務める金川幸司氏は「まずボールを取られないことを意識して、5人でボールを回そう」「攻撃側はひし形を早く作ること」「ボールばかりを見ずに、DFの位置を見よう。相手がボールを奪いに来たら、空いているスペースがある。次に使えるスペースはどこかを考えておこう」など、周囲を観る部分に対する声掛けをして、重要性を伝えていく。
さらに、攻撃の選手たちには「横にボールが動いているとき、縦のどこにスペースがあるかを、ボールが動いている間に見よう」とアドバイスを送り、パスを受ける選手は立つ位置を調整することでパスコースを作ること。ボールばかりを見ていると、次にプレーしやすくなるポジションには動けないことから「ビルドアップの入り口を見つけよう」などの判断に働きかける声掛けを通じて、選手たちの意識を高めていった。
動画では「背後に味方がいる場合は、その選手と真ん中のDFに対して2つパスコースを作る。自分とボールだけでなく、深い位置にいる味方を観て、どう動くかを決める」といった部分にもコーチングしているので、細かな動きを映像で確認してほしい。
ポジショニング移動でできたスペースを使って相手エリアに侵入する
トレーニングの最後は実戦形式の「6対6+GK」で締めくくり。グリッドを3つのフィールドに分け、GKボールでスタート。攻撃側は手前からフィールド1、2、3と分かれているところを、パスを繋いで前進し、ゴールを目指す。守備側はボールを奪ったら、3つのゴールいずれかを目指す。
ポイントは以下の通り。
・GKからパスを受けるとき、縦パスを入れられるポジショニングを意識する。
・攻撃するサイドにスペースがなければ、サイドチェンジする。その決断のスピードを速くする。
・守備側の2ラインの間にスペースを作り、そこへパスを入れることを意識する。
金川監督が強調していたのが「相手とずれたポジションでパスを受けること」。近場でパスを受けるだけではなく、中距離のパスも意識し、どこにスペースができるかを見る。横に動いて相手からずれて、正面からプレッシャーを受けないポジショニングを意識させていた。「人が入れ替わるとスペースができるので、それを狙おう」という声かけなどは、相手を見ながらサッカーをすることとイコールでもある。
金川監督は攻撃側の選手たちに、明快なアドバイスを送る。
「下がってボールを受けに来ると、守備側も前に来る。そうなったときに、サイドの選手が相手の背後に走り出せば、そこにパスを入れることができる。逆にそれがないと、守備側の選手は前にプレスをかければいいだけなので楽だよ。サイドの選手は相手の背後を狙っているのを見せておこう」
動画では、大宮アルディージャU12の選手たちの高いボールコントロール技術に裏打ちされたプレーを見ることができる。日本のジュニア年代のトップレベルのプレー、トレーニング内容を確認できる動画となっているので、ぜひ映像をチェックして頂ければと思う。
最後に、金川監督のメッセージを紹介して締めくくりたい。
「後編では、攻撃のオーガナイズを意識してポジションをとること。パスの出し手はビルドアップの入り口を見つけて、パスを入れることにフォーカスしてトレーニングを行いました。ボールに対してワイド、深い位置、ミドルにポジションをとることでパスコースやスペースが明確になり、攻撃がしやすくなります。意図的にバイタルエリアにボールを入れるために、攻撃のオーガナイズを整えることは非常に有効なので、ぜひ試してみてください」
【講師】金川幸司/
阪南大学を卒業後、2000年に大宮アルディージャに入団。翌年、NTT西日本熊本FCへレンタル移籍。その後、オーストラリアの「パインリバース」でプレー。引退後はセレッソ大阪サッカースクールコーチをスタートに各年代のコーチを経験。2012年以降は大宮アルディージャでユースコーチ、育成コーチ、U12コーチを経て、現在はU12監督を務めている。
取材・文 鈴木智之