TOP > コラム > サイド攻撃に対する守備の質を高める練習法/ジュニア年代から理解したいサイドにおける攻守の原理原則

サイド攻撃に対する守備の質を高める練習法/ジュニア年代から理解したいサイドにおける攻守の原理原則

東京都の強豪街クラブ・JACPA東京FC U-12の鈴木宏輝氏による「ジュニア年代から触れておきたい、サイドにおける攻守のトレーニング。後編は「サイド攻撃に対する守備の質を高める練習法」と題し、「クロスを跳ね返すためにどうするか?」について、具体的な方法をレクチャーしている。指導ですぐに使えるノウハウが詰まっているので、ぜひ参考にしてほしい。(文・鈴木智之)

この内容を動画で詳しく見る

suzuki04_01.png

<< 前回の記事を読む 

サイドの守備ではクロスを上げさせないことを最優先に考える

後編最初のトレーニングは「サイドでの守備(1対1)」。攻撃側は相手をかわして、ゴール前の味方にクロスを入れる。守備側はボールを奪えば勝ちとなる。

suzuki04_02.png

鈴木氏は守備の選手に対し、「サイドにいる攻撃の選手に、やられてはいけないことってなに?」と問いかける。

そこで「ドリブルで抜かれ、中に進入されること」という答えが返ってくる。鈴木氏は「相手に中に行かれると、ゴールに近づかれてしまう。だから、まずは相手を外(サイド)に追いやろう」と説明する。

攻撃側の選手を中ではなく、縦に行かせるためには、そのためのポジショニングが必要だ。鈴木氏は右サイドにいる攻撃の選手を中に行かせないために、右手を広げて中へのコースを牽制し、縦に行かせるように誘導していく。

「中に行かせないように腕を使い、相手を縦に行かせて、スピードを上げた瞬間に体を入れてボールを奪おう。ただし、ボールを奪うことよりも、クロスを上げさせないことを最優先に考えよう。ボールを奪いに行って抜かれると、ピンチになるからね」

suzuki04_03.png

さらには、ボールを奪いに行くときは相手に対して近い足。クロスをブロックするときは遠い足と、状況に応じて出す足についてアドバイス。動画では直後にいいプレーが出ており、コーチングのわかりやすさと選手の理解力の高さが現れていた。

ほかにも「相手がドリブルしてボールを切り替えした瞬間に、素早く寄せる」「股抜きされた場合は、ボールを追いかけるのではなく、相手の体をブロックしてマイボールにする」「相手の体の前に腕を入れて、ブロックする」など、具体的なプレーを実演を交えて紹介している。ここもぜひ動画で確認してほしい。

ニアに来たボールは、来た方向に跳ね返す

トレーニング2つ目は「サイドからの守備(1対2)」。サイドの選手はフリーでクロスを上げ、DF2人+GKで跳ね返す。鈴木氏は次のようにアドバイスを送る。

suzuki04_04.png

「まずはクリアの方向を覚えよう。ニアに来たボールは、来た方向に跳ね返すこと。体をひねってピッチの中央部にクリアすると、相手に拾われて二次攻撃を受けてしまう。ボールを蹴り上げるのではなく、ミートすることを心がけよう。クリアは遠く、高くがセオリーだよ。そしてファーサイドに来たボールは、キッカーとは反対方向(自分の背後)にクリアしよう」

クリアする選手は「OK」などの声を出し、GKは「クリア!」などの指示を出すことも大切だ。さらに、クリアボールがピッチ中央付近に行った場合、セカンドボールを拾われてシュートを打たれてしまうので、その際はマークを捨ててボールに近寄り、シュートをブロックすることにも言及していった。

手で相手を触り、マークする選手のポジショニングを把握する

続いては「サイドからの守備(2対2)」。

suzuki04_05.png

ここでは、「攻撃側の選手をつかまえること」を重点的にレクチャー。守備側の選手は、マークする攻撃の選手とボールの両方見なければいけない。ボールばかり見ていると、マークする相手を見失ってしまう。

そこでポイントになるのが「相手を触ること」だ。鈴木氏は「相手を手で触っていれば、その選手がどこにいるかがわかるので、ボールを見ることができる。

suzuki04_06.png

そして、ボールを持っている選手を見ながら、マークしている相手にボールが入る直前に寄せよう」と話し、この動きを実演。これも動画で確認してほしい部分だ。

最後は「3対3+2フリーマン」。ゴールを設置し、GKを配置。フリーマンはサイドからクロスを上げる役を担当する。

suzuki04_07.png

ここでは、前編で行った「攻撃側は第一優先のニアサイドをとること」に言及。さらには、攻撃側の選手同士が目を合わせてコミュニケーションをとってプレーし、守備側はどうやってクロスを跳ね返すかを、実戦形式の中でトレーニングしていった。

鈴木氏はトレーニングを振り返り、次のように締めくくった。

「トレーニングにはたくさんの要素を詰めましたが、一つずつ丁寧にトレーニングしていってください。ジュニア世代には難しいと思う方もいるかもしれませんが、すべて完璧にできるとは思っていません。しかし、これらに触れることで、ジュニアユースでの成長度合いが変わっていくと思います。プレーが成功した要因、失敗した要因を理解できると、振り返ることができるので、成長につながっていきます。今回ご紹介した内容を、ぜひ参考にしてみてください」

<< 前回の記事を読む 

この内容を動画で詳しく見る

【講師】鈴木宏輝/

宮城県でFC FRESCA、ベガルタ仙台スクールを指導。2004年から14年、JACPA東京Jrユースを指導し、2019年よりJACPA東京FCU-11のコーチを担当。2020年からは、U-12のコーチを担当している。Fリーグ フウガドールすみだの前身、「BOTSWANA」でもプレーし、フットサルにも精通している。JFA公認A級コーチジェネラル、フットサルC級コーチライセンスを持つ。