TOP > コラム > 前を見ながら正確なボール扱いを身に付けるトレーニング/ドリブルとパスを判断よく使い分けるための指導法

前を見ながら正確なボール扱いを身に付けるトレーニング/ドリブルとパスを判断よく使い分けるための指導法

技術と判断を備えた選手を数多く育成し、関西で注目を集めるのが今春から本格始動を開始した兵庫県の3種チーム「西宮タイガース」だ。監督を務めるのが谷元希氏。市立西宮高校を卒業してすぐに西宮SSの監督を務め、2009年度にはJFA全日本U-15フットサル大会で全国3位へと導いた人物だ。2019年に出場した全日本U-15サッカー選手権大会では、テクニカルなサッカーでJアカデミーと渡り合い、関係者から高い評価を得た。また、外部コーチとしても複数のチームに携わっており、母校・市立西宮高校の選手権8強入りにも貢献している。

今回は、谷監督が選手を育成する際に重要視する「ドリブルとパスを判断よく使い分ける選手になるための指導」を紹介していく。(文・森田将義)

この内容を動画で詳しく見る

tanigenki01_01.png

次回の記事を読む >>

顔を上げてプレーするには、パスミスをなくす正しい姿勢が重要

ドリブルとパスを判断よく使い分ける選手になるためには、周囲の状況を的確に見られるようにならなければいけない。そのためには、足元を見なくても済む正確なボール扱いが必要となる。谷監督が行う指導は、正確な技術を身につけるため、「パス&コントロール」の練習を徹底して行っている。代表的なメニューは、ウォーミングアップとして行う「3人組でのパス回し」で、正方形の角に3人の選手を配置し、隣の選手へパスを出したら次の角に移動するのがメニューのルールだ。

tanigenki01_02.png

ポイントは、ボールを受ける前後の動き。パスミスが起こる選手の多くは、ボールを受けた際に体との距離が遠いため、体勢を崩してパスをするなどフォームが乱れた結果、ボールの軌道が乱れてしまう。常にキックが乱れないフォームで蹴るためにも、来たボールに対して身体(軸足)を運んでコントロールし、蹴る瞬間にもきっちり身体を運んでから、パスを出すのが理想だ。

谷監督は「良い姿勢を保つことができれば、自然と顔が上がる。ボールを扱うより身体を扱うことで、ボールに対するストレスが少なくなれば、周囲の状況を把握できるようになる」と口にする。

tanigenki01_03.png

ボールを受けてからパスを出すまでの流れを止めず、動きながらプレーするのも意識したいポイントだ。また、パスを受ける選手がコースに入っているなら、パススピードも速めたい。慣れてきたら反対周りでもパス回しを行い、左右両足で正確にボールを扱える意識させる。また、縦横どちらかの一辺を伸ばし、長い距離でも正確にパスを出せる選手を目指す。

相手に複数の選択肢を感じさせ、優位な状況を作る

基本技術を身につけたら、次に四隅にミニマーカーを3つずつ置いた「3vs3のミニゲーム」を行う。攻撃は進行方向にあるミニマーカーにボールを当てるか、ドリブルでライン通過すればゴールとなる。守備はライン通過をさせないために、1人はライン上に立っていなければならない。

tanigenki01_04.png

ポイントになるのは、相手の変化を生むアクションだ。ボールを持った選手が縦への突破や、ミニマーカーを狙う素振りを見せれば対面するDFは縦を警戒し、横パスを出せるスペースが生まれる。DFが縦を切ったのを見た攻撃の一人がサイドに広がり、パスを受ける準備もすれば、中央が空き、ドリブル突破できるスペースが生まれる。反対にパスを出す素振りを見せれば、相手はパスコースを消すために動き、ドリブルを仕掛けるスペースが生まれ、ゴールに近づける。

tanigenki01_05.png

複数の選択肢を相手に感じさせることができれば、相手は対応に悩み、動きが止まるため、攻撃側が優位な状況を作れる。そうしたDFの動きを見た上でパスとドリブル、そしてシュートを的確に判断するのがこのトレーニングの狙いだ。

相手の変化を生むためには、ゴールを目指す意思を感じさせるのが大事だが、闇雲にゴールを目指しても手詰まりになり、相手ゴールは奪えない。仕掛ける隙がないと判断すれば、いったん後方に下げて組み立て直すのも正しい判断と言えるだろう。

出し手の動きに合わせてパスを出せば、自然と顔が上がる

3つ目のメニューとして行うのが、自陣からの組み立てをイメージした「9か所でのボール回し」。9か所に2人以上の選手を配置した状態で、判断よく2つのボールを動かすのがメニューのルール。ボールを受けてからパスを出す際は、1つ目のトレーニング(3人組でのパス回し)で学んだボールに身体を寄せる動きを徹底する。

tanigenki01_06.png

どこにボールを出してもOKだが、一番候補の選手が中央のアンカー役にパスを入れ、リターンを奥のトップ下役に入れるなど指導者の声掛けによって実際の試合をイメージさせると、より判断の質が高まっていく。

メニューを始めた当初はマーカーの位置でパスを受けるが、慣れてきたタイミングでマーカーを敵に見立て、パスを受ける瞬間に離れる動きを取り入れる。マーカーから離れる際も実際の試合を想定し、受けるギリギリのタイミングで動くよう意識させるのがポイントだ。

出し手は受け手の動きに合わせてパスを出さなければいけないため、状況を把握しようと自然と顔が上がる。出し手と受け手が同じイメージを持つのも大事だ。このように指導者が「顔を上げなさい」、「周りを見なさい」と声掛けするのではなく、メニュー設定によって、状況把握できるようにするのが判断できる選手になるために必要だ。

谷監督が実践したこの3つのトレーニングの模様は、COACH UNITED ACADEMY動画で配信しているので、ぜひ確認してほしい。後編では、より実践的な後編のトレーニングに移行していく。

次回の記事を読む >>

この内容を動画で詳しく見る

【講師】谷元希/

1986年9月5日生まれ、兵庫県出身。市立西宮高校卒業後すぐに出身クラブである西宮サッカースクール(4種)で指導者としてのキャリアをスタート。翌年に西宮サッカースクール(3種)の監督に就任した。2008年には全日本U-15フットサル選手権大会で3位、2019年には高円宮杯 JFA 全日本U-15サッカー選手権大会初出場を果たした。今年から自身が代表を務める西宮タイガースの活動がスタート。同時に、芦屋学園大学、報徳学園高校、仁川学院高校、レオSCでも指導を行っている。