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観て聞いて瞬時に判断する能力を身に付ける/U-8におけるサッカーを始めたばかりの子を指導する際のポイント

サッカーの指導を始めたばかり、もしくは指導経験の浅い人に向けて、「サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』」は様々なコンテンツを用意している。今回は「春からサッカーを始めた、U-8年代を指導するトレーニング」をテーマに、丁寧な指導に定評のある、FCみやぎバルセロナの石垣博監督に実演してもらった。

サッカーと出会う時期であり、長く集中が続かない年代でもある彼らに対して、どのようにトレーニングを進めていけばいいのだろうか? 石垣氏が日々実践している「楽しみながらサッカーが好きになり、うまくなる」トレーニングの様子をお届けしたい。(文・鈴木智之)

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動きに変化を入れるトレーニング設定を行う

トレーニングで大切になるのは「観て、瞬時に判断して動く」こと。練習プログラムも、遊びを通じて、これらに働きかける設定になっている。

1つ目のトレーニングは「ジャンケン鬼ごっこ(2人1組)」。ルールは、ジャンケンで勝ったほうが逃げて、負けたほうが追いかける。途中からコーチがカウントダウンをして、「相手を5秒以内に捕まえられるか?」に変更する。

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長座やうつ伏せの状態からスタートすることで、動きに変化をつけると同時に、子どもたちに飽きさせない工夫が施されている。

ここでのポイントは「周囲の状況を観て、瞬時に判断して動く」こと。相手との間合いや、他の選手とぶつからないことも大切だ。

石垣氏は「ぶつからないためにはどうすればいい?」「何に気をつけたらいい?」と質問することで、子どもたちに「どうすればうまくいくか」を考えさせていく。

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さらには、子どもたちの動きを見て「いいね」「よく気づいたね」「ナイス」など、肯定的な声をかけていくのが印象的だった。

応用編として、2つ目のトレーニングで「しっぽ取り鬼ごっこ」を実施。各選手のお尻にしっぽ(ビブス)をつけて、エリア内で鬼ごっこをする。しっぽを1つ取れば1点で、時間内に何点取れるかを競う。

この練習はダッシュ、ストップ、方向変換、周りを観るといった要素が含まれていて、相手との駆け引きも自然と養われる設定になっている。

子どもたちの動きを見ながら、常に声をかけて活気を生み出す

3つ目は「だるまさんが転んだ」。コーチにタッチしたら1点で、何点取れたかを競う。

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ここからはボールを使って行い、コーチの掛け声に合わせて、ボールを足で止めてストップする。慣れてきたらコーチが言った体の部位(ひざ、お尻など)で止める。

石垣氏は両足でボールを止めるように声かけをし、「どのぐらいのボールスピードなら止められそう?」といったように、ボールタッチの強弱を工夫するように導いていく。

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さらには子どもたちのプレーを見ながら「それぐらいのスピードだと止めやすいね」「上手だよ」と声をかけていた。

4つ目は「探検脱出島」。4つに別れた島があり、コーチの指示にしたがって島から島へ移動する。最初は手でボールを持ち、次からはドリブルで行う。

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この練習のテーマは「聞いて、観て、動くこと」と「早く移動するためのルートを考えること」。まずは「4秒で移動する」という設定で、ボールを手で持って移動。「山形県に行ってボールを手で地面に置き、手ぶらで青森県に移動しよう」といったように、コーチの指示にあわせて子どもたちが移動していく。

ここでは「四角形の中からボールが出たら、海に落っこちちゃうよ」「だるまさんが転んだを思い出そう」「どうやったら速く行けそう?」など、子どもたちの動きを見ながら、常に声をかけて活気を生み出すとともに、考えてプレーするためのヒントを与えていた。

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最後は「ドリブル移動からシュート」という設定にすることで、運動量が多い中でも、子どもたちは飽きずに取り組んでいた。

トレーニングの最後はゲームを行い、全員にゴールを決めさせる

5つ目は「3対3(大幅ゴール)」。ゴールを広くすることで、シュートを打つ意識を高めていく。コーチは配球に工夫し、全員にシュートチャンスを与える、良い位置にいる選手にボールを出すなどして、コントロールしていく。

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石垣氏は子どもたちのプレーを見ながら「どこに動けばシュート打てそう?」「相手はどこにいる?」などの声をかけ、シュートが決まったら「ナイスゴール!」と大きな声で盛り上げていた。

さらには、「ゴールを増やして各ゴールの幅を狭くする」という形に発展。コーンに当たらないようにシュートを打つために、子どもたちはコースを狙って蹴ることに意識を向けていた。

トレーニング全体を通して、遊び(レクリエーション)の要素を入れながらも、サッカーに必要な「観て、判断すること」に働きかけるメニューになっている。ゲーム性が高いので、子どもたちは飽きずに取り組んでいた。

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石垣氏は子どもたちの様子を見ながら、事あるごとに「どうすればうまくプレーできるか?」という視点で問いかけていた。サッカー的な視点での声かけを含めることで、サッカーに対する理解と同時に、より良いプレーにつながっていく様子が、動画から見て取れる。

なにより、コーチが率先して声を出し、肯定的な声をかけて盛り上げるという、サッカーと出会う年代において、指導者がとるべき模範的な態度が収録されている。

練習メニューはもちろんのこと、石垣氏の子どもたちとの接し方には、練習を円滑に進めるためのヒントがたくさん含まれているので、指導経験の浅い方はぜひ参考にしていただければと思う。

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【講師】石垣博/

18歳から指導に携わりスポーツ少年団での監督、宮城県のU-12年代の地区トレセン・県トレセンなどでも監督を務める。ジュニアユース年代ではFC FRESCAでの監督経験を経て、2005年より現在のFCみやぎバルセロナの監督に就任し16年目を迎える(2011年からは女子チームも立ち上げる)。また、宮城県サッカー協会 指導部 サブチーフインストラクター(47FA C級D級インストラクター)も務めている。