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選手の個を伸ばし、チームを強くするプレーモデルの作り方/プレーモデルの必要性とトレーニングの実践方法

先ごろ、「プレーモデルの教科書」を出版した、九州産業大学監督の濵吉正則氏。UEFA PRO Coaching Diploma(ヨーロッパサッカー連盟公認プロコーチライセンス)を取得し、SVホルン(オーストリア・ブンデスリーグ2部)の監督を務めた経歴を持つ指導者だ。

COACH UNITED ACADEMYでは、昨今聞かれるようになった「プレーモデル」をテーマに、濱吉氏に講義をしてもらった。前編のテーマは「プレーモデルの必要性と作成例」。「プレーモデルとは何か」、「どのように作成して実行するのか?」を知りたい人は、ぜひ参考にしてほしい。(文・鈴木智之)

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「プレーモデル=選手を型にはめることではない」

まず濵吉氏は、プレーモデルを次のように定義づけする。

「プレーモデルとは、監督やクラブのフィロソフィーをもとに、攻守のプレー原則に従って、共通理解を持ったプレーを行い、選手個の力を引き出すために必要なものです」

ここで強調するのが、「プレーモデル=選手を型にはめることではない」ということだ。

「選手個々のゲームインテリジェンスを高め、プレーの共通のアイディアとクリエイティビティを引き出すために、基準となるプレーモデルが必要という考え方です」

それを踏まえた上で、プレーモデルの構成要素を2つに分けていく。それが「プレースピード」と「共通理解」だ。

「プレースピードはフィジカル的な要素だけでなく、判断のスピード、スプリントのスピードも含みます。共通理解は選手間のコミュニケーションや相互協力になります。ピッチにいる11人がアイデアを共有し、協力してプレーするためにも、プレーモデルが必要なのです」

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プレーモデルを用いることの目的は、次の3つとなる。

・共通理解を高め、個々の力を引き出す
・ゲームインテリジェンスを高める
・プレーの共通のアイデアとクリエイティブさを引き出す

ここでポイントになるのが「現代サッカーの特徴を踏まえて、プレーモデルを作ること」だ。

「育成年代においては、未来に向けて取り組むことが重要です。今日や明日のスターではなく、未来のスターを育成するのです。時代の流れに沿って育成をすることが、育成年代のプレーモデルでは大切なことです」

プレーモデルを作成する際に重要なのが8つの項目

ここからは、実際にどのようにしてプレーモデルを作成するのかについて、話が進んでいく。

プレーモデルを作成する際には、単なるチームの約束事ではなく、大局的な視点で考える必要があるという。その基準となるのが、次の8つの項目だ。

・選手の能力
・チームの目標
・チームや国のプレーの文化
・クラブ組織
・近代サッカーのトレンド
・指導者やチームのゲームアイデア
・プレーの原則やプレーの4局面
・フィールドごとの目的や原則

「選手の育った環境を見ながら、プレーモデルを作る必要があります。海外は顕著ですが、日本も地域によって文化があれば、土地のメンタリティも違います。それらを考慮しなければ、モダンなプレーモデルを作成しても、受け入れられないでしょう」

これらの項目をベースに、指導者やチームのゲームアイデア、プレーの原則やプレーの4局面(攻撃、守備、攻撃から守備、守備から攻撃への切り替え)、フィールドごとにどのような目的と原則を作っていくのかを複合的に考えながら、ゲームモデルを作成していく、

「まず、具体的にどのようなスタイルを志向するかを考えます。攻撃的なのか、守備的なのか。主導権を握るのか、リアクションなのか。どのようなプレーを意図的に作り出したいのかによって、スタイルが変わっていきます。攻撃では、どのようにして数的優位を作り出したいのか。守備では、ハイプレス&ハイラインをどのように作り出したいのか。そのようなことを考えながら、スタイルを設定していきます」

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そこで重要になるのが、プレーの4局面(攻撃、守備、攻撃から守備、守備から攻撃への切り替え)における、プレーの原則だ。

「育成年代に携わる人は、こんな指導を見たり、聞いたりしたことがありませんか? 試合中、選手に対して『感じろ』『感じて動け』『なんでそこに走ってないんだ』『プレーに関われ』『(ボールを奪われるのであれば)蹴っておけよ』『気
持ちが見えない』など・・・。これらはすべて指導者の主観的な言葉で、言われた選手にとっては、なにをどう改善すればいいかがわかりません」

多くの指導者にとって、耳の痛い話なのではないだろうか。とくに育成年代では、どれも聞かれる言葉である。

「このように、具体的ではない指導をしていると、選手の評価も場当たり的なものになってしまいます。そうならないためには、プレー原則を具体的に分類することが必要です。メインとなる主原則には、チーム戦術とプレーモデルの基礎となるものがあり、副原則にはグループ戦術があり、副々原則には個人戦術があります。これらを設定することで、主観的な言葉でプレーを表現することはなくなります」

動画では、ヨハン・クライフが考えた、アヤックスのプレー原則、プレー原則のポイントや効果。濵吉氏が行っている、九州産業大学のプレーモデルも紹介している。

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「選手の個々を伸ばし、チームとしても成長する」ためのプレーモデルの作り方を知りたい人は、ぜひ動画をご覧いただければと思う。

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【講師】濵吉正則/
九州産業大学サッカー部監督。UEFA PRO Coaching Diploma(ヨーロッパサッカー連盟公認プロコーチライセンス)。スロベニアサッカー協会公認 プロコーチライセンス。中学・高等学校1種 保健体育教諭免許。スロベニアでコーチングライセンスを取得し、柏レイソルU18監督、名古屋グランパストップチームコーチ、U15監督、徳島ヴォルティスユース監督、トップチームコーチ、ギラヴァンツ北九州コーチ、大宮アルディージャテクニカルアシスタント、監督通訳などを経て、2016年にSVホルン(オーストリア・ブンデスリーグ2部)の監督に就任。その後、S Vホルンの育成センター・アカデミーアドバイザーを経て、2018年より現職。