TOP > コラム > 全身を使ってサッカーの基本を体感するトレーニング/U-8に必要な駆け引きと味方との連携を学ぶ練習法

全身を使ってサッカーの基本を体感するトレーニング/U-8に必要な駆け引きと味方との連携を学ぶ練習法

「サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』」では、U-8やU-10など、サッカーと出会ったばかりの子どもたちを指導する際の参考になるトレーニング動画を多数配信中だ。これまで池上正さん石垣博さんなど、ジュニア育成のスペシャリストにご登場いただき、指導の考え方やトレーニングメニューを紹介してきた。

今回は徳島ヴォルティス、FC東京で普及部長を務め、現在は、東京都サッカー協会で指導者養成に携わりながら、ボンフィンサッカースクールでフットボールダイレクターを務める川村元雄さんによる「U-8年代で身に付けたい『駆け引き』と『味方との連携』」をテーマにしたトレーニングの模様をお届けしたい。(文・鈴木智之)

この内容を動画で詳しく見る

kawamura.png

次回の記事を読む >>

U-8は両手両足など全身を使い、様々な運動体験をすることが大切

トレーニングは様々な運動体験を通じ、技術と判断に働きかけるものになっている。今回紹介する動画は「ボールを扱う技術を高める」「動きながらボールを扱う技術を高める」「グループの中でパスを出す・受けることを身に付ける」「スペースの認知とパス技術を高める」という4つのテーマから成り立っている。

川村コーチは「この年代では、両手両足など全身を使い、サッカーの基本、基礎を学ぶ中で、相手との駆け引きやタイミングを身につけることが大切です。目の前のお子さんを見て、アレンジしていただけると幸いです」と話し、トレーニングがスタートした。

最初のトレーニングは「真似っ子ステップワーク」。子どもたちはボールを手で持ちながら、コーチの動きに合わせて動いていく。

kawamura_img_002.png

バリエーションとしては、ボールを上に投げ、コーチが指示した体の場所や地面を触ってキャッチする「真似っ子キャッチ」。対面パス形式で、チームメイトが蹴った足と同じ足、逆足、ダイレクト、止めて蹴るなどが入った「真似っ子キック」など、顔を上げて周りを見て、判断して動く要素が含まれたものを実施していた。

kawamura_img_003.png

トレーニングにゲーム感覚で認知・判断・実行の要素も含ませる

2本目の動画は「動きながらボールを扱う技術を高める」がテーマ。まずは「ハンドパス」を実施し、川村コーチは「動いている人に正確に投げる練習だよ」と説明。足ではなくコントロールしやすい手を使って、味方にボールを届ける感覚を体験させていく。

kawamura_img_004.png

ここでは「味方全員が見える位置に動き、体の向きを作る」ことに言及。「いつもみんなが見えるように」と、繰り返し、声をかけていた。

また「バスケットボールのドリブル」では、ステップワークと両手を使うことを通じて、様々な運動体験を積ませるとともに「足でのドリブル」では「コーチが右腕を上げたら、右足でボールを止める」などのルールを用いて、認知、判断、実行の要素をゲーム感覚でトライしていった。

kawamura_img_005.png

グループの中で味方との連携を取る

3本目の動画のテーマは「グループの中でパスを出す・受けることを身に付ける」。個人で行ってきたものから発展させ、複数名での動きを体験していく。

kawamura_img_006.png

ここで行った「パス&コントロール」は、動いている人にパスを出し、パスを受けるトレーニングだ。川村コーチは「蹴りやすいところにボールを止めよう」「ボールが転がっている間に、味方をみつけてからボールに触ってみよう」などとシンクロしながら声をかけていく。

さらにはコーンを置いて障害物にし、「コーンに当てないようにやってみよう」と設定を変えることで難易度を調整し、子どもたちに飽きさせないように工夫していた。

kawamura_img_007.png

味方の動きとスペースの認知を同時にトレーニングする

4本目の動画は「スペースの認知とパス技術を高める」がテーマ。トレーニングは「パス&コントロール(6グリッド)」を行った。3人1組、ボール1個でグリッド間をグループで移動しながらパスをつないでいく。

kawamura_img_007.png

1つのグリッドには1グループしか入ることができないので、「空いているスペースを見つけて移動し、そこへパスを出す」という実際の試合に近いシチュエーションになっている。

ある程度プレーをしたところで、川村コーチは子どもたちを集めて「どこのスペースに移動するかをみんなで決めてやってみよう」とアドバイス。そうすることで、ボールを受けるために動く「3人目の動き」が明確になるなどの変化が出ていた。

さらには「隣のグリッドに入ると1点。2つ先のグリッドに入ると2点」とすることで、動きの量が増加。口で説明するだけでは、U-8の子たちは理解しづらいかもしれないが、ルールを設定し、実際にプレーさせることによって体で理解し、2点のプレーを子どもたちが生み出していた姿が印象的だった。

kawamura_img_008.png

今回紹介した4本の動画に収録されているメニューは、ルールや設定がシンプルでわかりやすく、すぐに真似することができるものばかり。川村コーチの声かけの内容、テンション、子どもたちへの接し方なども、大いに参考になるだろう。

動画自体も1本あたり10分前後と見やすいので、ぜひ明日からのトレーニングに取り入れていただければと思う。

次回の記事を読む >>

この内容を動画で詳しく見る

【講師】川村元雄/

4年間の体育講師(幼児教育)を経て、現在の徳島ヴォルティス、JFA四国担当、FC東京で普及部長を務めた。現在はボンフィンフットボールパークにてフットボールダイレクターとして地域のサッカーの普及育成に携わりながら、東京都キッズリーダーチーフインストラクター、指導者養成に係り、日本サッカー協会100周年記念事業においては特別功労者表彰を受賞。