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サッカーの基本となる認知・判断・実行のスキルと基本技術の習得/少人数でオープンスキルを高める練習法

以前、「サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』」では、内藤清志氏による「少人数でもできる、オープンスキルを高めるトレーニングの考え方と作り方」をテーマに講義をしてもらった。今回はその講義をもとにしたトレーニングを行うことで、選手たちのどのような能力を向上させていくかという「実践編」をお届けしたい。

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相手を入れて判断がある状態で技術の質を保てるかが重要

前編のテーマは、サッカーの基本となる認知・判断・実行の、「実行」の質の定義を子どもたちと共有すること。さらには、それを認知・判断のある中で行うことができるようにすること(オープンスキル)。

内藤氏は「個人とボールの扱い方、個人と体の動かし方に着目するとともに、相手を入れ、判断がある中で、同様の質を保てるかが重要になります」と話し、トレーニングがスタートした。

1つ目のトレーニングは「エリア内でのドリブル」。1人1個ボールを持ち、グリッド内でドリブルを実施。ポイントは、相手に当たらないように、ボールを止めないようにドリブルをすること。

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例えば、コーンドリブルのコーンは動かないので、前もってコース取りをイメージすることができる。しかし「エリア内でのドリブル」の場合、人が動くので、相手の動きを見ながら(感じながら)進路を変更する必要がある。

内藤氏は「相手の矢印を見て(感じて)、その中に入って行かないように」とアドバイスを送る。その後、ルールが「利き足だけ」「逆足だけ」と変えていき、コーチが笛を鳴らしたら、「足裏で素早く10回ボールタッチ」「アウトサイドでボールを触り、またいで前に出ていく」などのバリエーションをつけていく。

これは「ウォーミングアップとして取り組むものであり、彼らの年代を考慮して、様々なボールタッチなど、短い時間でテンポよく条件を指定する」という狙いがある。

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内藤氏はボールをまたいでドリブルで進んでいく際に「ボールと一緒に前に出ていけるように。一連のステップを意識しよう。力はいらないよ」とポイントをレクチャーしていた。

次は「鬼ごっこ」。ドリブルをしながら、背中タッチ1点、触られた方はマイナス1点。ボールを触られるとマイナス5点、ラインアウトはマイナス3点というルールだ。

このトレーニングについて、内藤氏は「ボールを出すか引くか、身体を動かすか(向きを変える)、ボールを動かすかといったボール操作の理屈と、いつ・どこで・誰と戦うことが損か得かを考えること(戦術的思考)が重要」と話す。

加えて「何となくボールに触ると、ボールと体が離れるから、操作に時間がかかり、難しくなる。体が先に回り込めば、ボールは近づいて来てくれる。ボールを押すだけではなく、引くタッチも意識しよう。もしくは、体が先にボールに回り込むこと」と、頭の中と動作をリンクすることの重要性を伝えていった。

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選手たちは鬼ごっこを通じて、ボールが体から離れない動きを、ストレスなく行えるように繰り返していく。ここで内藤氏は「相手に背中を触られないために、へその向きを変えること」を実演しながら、動作や考え方を伝えていた。このあたりの考え方、ステップワークなどは、ぜひ動画で確認してほしい。

ドリブルで相手をかわすには「アウトのタッチ」を意識する

3つ目は「3人組のリフティング」。ルールは「ファーストタッチは胸で行うこと」。味方にパスをするためには、ボールを落ち着かせることがポイントになる。

内藤氏は「正確に早くできることが大事。ボールが落ち着けば、放っておいてもタッチ数が減り、時間も短くなるよ」と早くプレーするためにはどうすればいいか、意識すべきところを簡潔に伝えていく。

「胸トラップと蹴る動作はぜんぜん違うよね? 早く蹴ることのできる状態にしなければいけないので、動きの無駄、ボールタッチの無駄をなくそう。胸トラップをするとき、手をうまく使って、胸に面ができている?」

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最後は「1分間で何人触れるか」というルールにし、早さを意識して行わせていた。

次は「足上げステップ、コーンドリブル」。ポイントは、お尻を落とさず、軸足でステップを踏むこと。内藤氏は「トラップのとき、この動きが大事になる。下を向かない。目線は上げよう」と声をかけていく。

その後、コーンドリブルに移行。ここでは「人をかわすときに、体の外側にあるボールを押して出ていくと、体がついていく。相手をかわせる選手になりたいのなら、アウトのタッチを意識しよう」と説明。アウトサイドでボールに触り、コーンをかわしてからインサイドでボールを置き直し、またアウトサイドで触るという動きを繰り返していく。

「力まずにテンポを上げる。スキーのモーグルをイメージしよう。体は前、ボールは横。ボールを横にずらすこと。それは体の操作技術だよ。そして、軸足を抜く意識を持つこと。ボールを触ってない方の足が、地面に根を張っていると、うまくいかないよ」

このリフティングとドリブルは、相手の状況により判断が変わっていくという「オープンスキル」のトレーニングではないが、競争要素を加えたり、タッチ数等は自分で選択して構わないが、「上手な選手は短い時間でやれる」といった言葉がけを行うことで、認知・判断・実行の「実行の定義(良い実行とは?)」に、共通認識が生まれると感じることができる。

前編最後のトレーニングは「パス&コントロール」。2人組で実施し、トラップするときは軸足を抜き、ボールをキャッチするイメージで止めることがポイントだ。

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その後、横からパスを受けてスタートし、前方のDF役が左右どちらに動くかを見極めて、相手がいないコースにドリブルで進んでいく動きを実施。1回のコントロールでボールを持ち出し、足元を滑るボールでパスを出し、相手に渡すことを徹底させていた。

重要なのは、「相手DFが動いたら、逆側に持ち出すこと」。しかし勘の良い守備者は、相手が持ち出すのを見越して、持ち出すためにボールが体から離れた隙を狙ってくる。

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そして、相手DFが動かない場合は、足元に矢印が向いてないことになるのでボールを「キャッチする」ことが可能になる。このように、ギリギリまで相手を観察し、相手の出方によってプレーの選択を変えることができるかが求められるトレーニングだ。

以上でトレーニング前編は終了。内容自体はシンプルなものなので、ジュニアの選手達でも十分にトライできるものになっている。加えて、内藤氏の説明、コーチングは具体的でわかりやすいので、子どもたちに伝える際の参考になるだろう。

サッカーのベースとなる身体動作、ボールコントロール技術を高めたい指導者は、ぜひこのトレーニングにチャレンジしていただければと思う。

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【講師】内藤清志/

筑波大学を卒業後、同大学大学院に進学。それと同時に指導者を志し、筑波大学蹴球部でヘッドコーチなどを長く歴任。谷口彰悟や車屋紳太郎など日本代表選手を指導。その後、サッカースクール・ジュニアユース年代の指導を経験した後、現在は筑波大学大学院に戻り自身が所属するサッカーコーチング論研究室の研究活動の傍ら、サッカーの強化・育成・普及活動を行う。