TOP > コラム > 愛知のジュニアチャンピオンチームが実践。ポゼッションを高めるカギは「個とグループで優位性」を作ること

愛知のジュニアチャンピオンチームが実践。ポゼッションを高めるカギは「個とグループで優位性」を作ること

愛知県豊田市で活動するFC ALONZA(アロンザ)は、創設6年目ながら、「第45回全日本U-12サッカー選手権大会」や「JA全農杯 全国小学生選抜サッカー決勝大会2021」に出場するなど、目覚ましい成績を残している。チームのスタイルはボールを保持して、試合の主導権を握ること。狭い局面でのパス回しやグループでの崩しに定評がある。

そこで今回は鈴木淳也監督に「個とグループで優位性を高めるポゼッショントレーニング」を実施してもらった。ボール保持に必要な、止める、蹴るの基本技術に加えて、周囲と連携してプレーするための判断、意思疎通を向上させるトレーニングを紹介したい。(文・鈴木智之)

この内容を動画で詳しく見る

PC.png

次回の記事を読む >>

ポゼッションに大切なのが「個とグループの優位性を高めること」

トレーニング前、鈴木監督はコンセプトを次のように語る。

「FC ALONZAはボールを大切にし、ボールに価値を見出しながらサッカーを追求しています。そのため、個とグループの優位性を高めることを意識しながら、トレーニングをしています。今回のトレーニングのポイントは、いつパスを出すのか、どこを観ているのか、何を探せるのか。受け手は、どこの場所を見つけられるのか、相手より先に動き始めることなどにフォーカスして実施していきます」

最初のトレーニングは「3対1」。6m四方のグリッド内で、条件付きのボールポゼッションを行う。ルールは以下のとおり。

1:インサイドのみ
2:出し手はインステップのみ(ダイレクトはインサイドOK)
3:運びながら数的優位を作る
4:ワンツーを入れながら背後を取りに行く
5:中央にコーンを設置して縦パス(パス7本で1点、コーンと敵の間を通すと1点)

alonza01_02.png

これらのルールを時間の経過とともに変えていく。鈴木監督は「できる限り、相手から遠い足でボールをコントロールすること。動きながらプレーできるようにしよう」と話し、トレーニングがスタートした。

すると早速、鈴木監督が「どの位置でボールを受けるか」を実演。横から来たボールを止めるときに、相手の正面で止めるのと、相手と離れて止めることの違いを提示し、「ボールの受け手は、優位性を保てる場所でボールを受けよう。それによって、見えるものが変わってくる」とアドバイスを送る。

さらには、ボールを止めて蹴る際の「リズムとテンポで相手の矢印をコントロールする」プレーも実演。ボール保持者のリズム、テンポによって守備側の動きがどう変わるかは、ぜひ動画で確認してほしい。

alonza01_03.png

続いて、ルールを「インサイドで止めて、インステップで蹴る」に変更(ダイレクトはインサイドOK)。

ここでは「両足でボールを蹴ることができるように。中盤の狭いエリアで大事になるプレーだよ。一歩目から、相手と駆け引きしよう」と声をかけ、「相手にプレーを予測させないこと」の重要性を伝えていく。

PC.png

パスは強弱を使い分けてDFと駆け引きを行う

次は「ボールを受けたら、空いたスペースへドリブルで運ぶ(ドライブの動き)」というルールにチェンジ。すべてのプレーでドライブをするのではなく、インサイドでのコントロール、インステップキックを使いながら、相手と駆け引きをしていく。

その後「パスを出したら、相手の背後に入ってワンツーでボールを受ける」というルールに移行。ここでは「駆け引きの中で、相手の矢印をうまく使うこと」に重点を置いていた。

鈴木監督は「どうすれば相手の矢印が出る?」と質問し、「弱いボールを出すと、相手が奪いに来る。その瞬間に矢印が出るので、背後のスペースを使うことができる」と説明。

加えて「強いボールの後に弱いボールを出すと、矢印が出る。その駆け引きを繰り返すことで、相手の矢印を操りながらサッカーができるよ」と話し、相手と駆け引きしながらプレーすることの醍醐味を説いていた。

最後のルールは、いままでのすべての要素を使って、7本パスをつなぐと1点。もしくはコーンとDFの間にボールを通すと1点。鈴木監督は「縦パスを狙いに行こう。それが攻撃のスイッチになる。守備は相手に触れる距離まで寄せよう」と話し、実戦をイメージさせるとともに、「1歩動くことで受け手が優位になる。1、2mの受ける場所をみつけられるようにしよう」と、受け手にアドバイスを送っていく。

動画にはALONZAの選手たちが、テンポよくパスを回していく様子が収録されているので、ぜひ彼らのレベルを感じて欲しい。

ボール保持者がパスを受ける位置によって数的優位を作ることができる

前編最後のトレーニングは「4対2」。7m四方のグリッドでロンドを行う。プレー方法としては、攻撃側は1人がグリッドの中央に入り、周囲の3人+中1人でボールを保持していく。

suzuki01_04.png

ここでは「近くを見ながら、遠くにパスを出す意識」をコーチング。「狭くても数的優位は作れる。受け手が敵の位置をしっかり観ることで、サポートの人数が変わってくる」と説明し、ボール保持者がパスを受ける位置によって、狭い場所でも2対1、3対2を作ることができることを伝えていった。

suzuki01_05.png

さらには、手でボールを投げて、受け手が近寄る、離れるタイミングをコーチング。「タイミングを見逃さないように。この0.5秒、1歩によって時間の貯金を作ることができるよ」と体感させていった。

動画を通じて、鈴木監督のコーチングはていねいで、実演の様子もわかりやすい。繰り返し見ることで、コーチングのポイントや伝え方など、参考になるところはたくさんあるはずだ。全容をぜひ動画で確認してほしい。

後編では、人数を増やした実戦形式のトレーニングに移っていく。

次回の記事を読む >>

この内容を動画で詳しく見る

▼▼COACH UNITED ACADEMY 会員の方のログインはこちら▼▼

【講師】鈴木淳也/
清水商業高校を卒業後、東海リーグで15年間、選手としてプレー。
2016年に設立されたFC ALONZA(愛知県)に設立のタイミングで、指導者としてのキャリアをスタート。
2021年にはクラブ初となる「全日本U-12サッカー選手権大会」、「JA全農杯 全国小学生選抜サッカー決勝大会」出場に貢献した。