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古橋亨梧など多くのプロを輩出。興國高校が行う「2方向のパス&コントロール」と「1対1」のトレーニング

セルティックで大活躍する日本代表の古橋亨梧を筆頭に、この10年で27人のプロ選手を輩出しているのが、大阪の興國高校だ。目を惹く個性派ばかりの選手を育成するのがチームを率いる内野智章監督。2006年に興國高校に就任してからも、サッカー選手としての成長に何が必要かを常に考え、選手の育成に落とし込んでいる。

今回は、内野監督の指導を学ぼうと多くのサッカー関係者が見学に訪れる「個の育成に必要なスキルと判断を高めるトレーニング」を紹介する。(文:森田将義)

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選手としての成長にコーディネーションの向上は欠かせない

興國高校のトレーニングの特徴は、選手の能力を高める工夫が施されている点だ。ウォーミングアップとして30分近く入念に行うのは、サッカー選手に必要なコーディネーションを高めるメニュー。

まず初めに、リフティングでエンドラインの中央まで往復するのがルーティンだ。タッチの種類は「両足インサイド」、「両足インステップからの胸トラップ」、「両足インステップからのヘディング」。日常生活とは違い、前進するのが難しい後ろ向きの状態でリフティングを行う事で脳に刺激を与え、コーディネーションの発達に繋げる。

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次に行うのは、2人組で行う浮き球の処理。パートナーが投げるボールを太ももでコントロールし、反対の足によるボレーで返す。足元の技術を養うだけでなく、実際の試合でよく起きる後方に下がりながらのヘディングも、練習で身に付けている。

ペナルティエリアの幅に近い40mまで離れた2人組が行うロングボールでのリフティングも興國の定番メニューで、真似をするチームも少なくない。リフティングを一定回数こなしてから、ボレーで対面の選手へと展開するのだが、ラリーを続けるためには落下点の予測が欠かせず、繰り返し練習する事で空間認知力の向上に繋がる。

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ボールを受けて、そのままリフティングをするためには正確なコントロールとキックの正確さも必要になってくる。次にロングキックからのヘディングに取り込む事で、試合で必要なヘディングのも強さも身に付いていく。

COACH UNITED ACADEMYでは、相手ゴール前を破るやめに必要なドリブルトレーニングのポイントも動画で紹介しているので、ぜひチェックしてみて欲しい。

2方向のパス&コントロールによって、実戦に必要な技術を身に付ける

高い技術を身に付けるために近年の興國高校が重用しているのが「パス&コントロール」のトレーニングだ。川崎フロンターレが行うメニューを参考にしており、チームでは「田中碧」と呼ばれている。

よくある対面でのパス交換ではなく、縦と横にサーバーを配置して行うのがメニューの特徴。ボールを受ける選手の周辺にミニマーカーで小さなグリッドを作り、受け手はグリッドから出ないようサーバーとワンタッチでパス交換する。何度か繰り返したら、タイミングをグリッドから出ないようボールをコントロールし、2タッチ目で縦から横、横から縦にボールを送る。

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勢いの弱いボールをコントロールするのは簡単だが、実際の試合では通用しない。前提としてサーバーは膝下を使い、インサイドでのシュートをイメージした速いパスを受け手に配球し、実際の試合に近い状況を作り出す。

受け手は速いボールの勢いを吸収しなければ、グリッド内でボールをコントロールできないため、止める時は身体の力を抜いて軸足の膝を柔らかくする事でボールの勢いを和らげる。

慣れないうちは上手くボールをコントロールできるか不安になるため、足元を見がちになるが、受け手から正確にパスを出そうとすると周囲の状況を把握しなければいけない。軽くステップを踏みながら、なるべくヘッドアップの時間を増やし、見る意識を高めるのもメニューの狙いだ。

速さに頼らないドリブルを身に付けるには、駆け引きが重要

パス&コントロールの徹底によって身に付けた正確な技術と共に、興國高校の特徴と言えるのがゴール前で思い切りよく仕掛けられる選手の多さ。昨季、横浜F・マリノスで開幕戦デビューを果たした樺山諒乃介や、川崎フロンターレで家長昭博の後継者として期待される永長鷹虎が代表例だ。

彼らは元々、ドリブルに必要な技術力が高かった選手だが、高校3年間のトレーニングで培った要素も多い。ドリブルに必要な相手との駆け引きとテクニックを身に付けるのが、グリッド内に4つのゴールを作って行う1vs1だ。

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グリッドの横から来るサーバーのパスを攻撃側が受けたタイミングでメニューが始まり、攻撃は4つのゴールのいずれかをドリブルで通過する。DFはボールを奪うため、片方のサイドを切って追い込んでくるため、攻撃はその逆を突かなければいけない。

そのためにはボールを触るテンポや、ステップのリズムを変える事でボールを奪おうとするなどDFの変化を生み、その瞬間にドリブルのギアを上げる。

実際の試合を想定し、対面する形の1対1だけでなく、ある程度慣れてきたらDFを背負った状態からの1対1をこなしておくのも実際の試合でドリブルするためには必要だ。

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COACH UNITED ACADEMYでは、今回の記事だけでは伝えきれないトレーニングのポイントを紹介している。内野監督のコーチングには選手のスキルとコーディネーションを向上させるためのヒントが詰まっているので、詳細は動画で確認して欲しい。

後編では今回紹介したスキルとコーディネーションを使ったより実践的なトレーニングを紹介していく。

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【講師】内野智章/
1979年7月31日生まれ。現役時代は初芝橋本高校、高知大学でMFとして活躍。卒業後は愛媛FCでもプレーした。
1年間の社会人生活を経て、2005年に興國高校の教員に。翌年からサッカー部監督に就任し、近年はFW古橋亨梧(セルティック)やMF樺山諒乃介(横浜F・マリノス)ら毎年のように複数のJリーガーを輩出している。2019年には、「全国高校サッカー選手権大会」に初出場を果たした。