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ポゼッションをしながらドリブルも取り入れる。興國高校が実践する繋ぎながら仕掛けるロンドのトレーニング

この10年で27人にもJリーガーを輩出しているのが、大阪の興國高校を支えるのが、内野智章監督による「個の育成に必要なスキルと判断を高めるトレーニング」。

前編では、より上のステージで活躍できる選手に欠かせないコーディネーションを高めるトレーニングを紹介したが、後編では判断力を高める実践的なトレーニングを紹介していく。(文:森田将義)

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ロンドの狙いは"ボールを失わない"のではなく、繋ぎながら仕掛ける

トレーニングの前半に行った「基礎トレーニング」、「パス&コントロール」、「4ゴールの1対1」で身に付けた基本技術や動作を、実践的なトレーニングで確認していくのが後編で行うトレーニングの狙いだ。

パスやドリブルといったスキルを試合で上手く発揮するために、必要な判断力を高めていく。

始めに行うのは、5m四方のグリッドで行う「3vs1のロンド」。原則3タッチ以内で、キープやドリブルの後はダイレクトでパスを出さなければいけないが、ドリブルでのスイッチも可能というルールで行う。

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3対1の状況でボールを回すのは簡単だが、単なるボール回しで終わらずにポゼッションしながらドリブルで仕掛けて行くのがメニューの狙い。ボールを回しながら、逆をとってDFの背後を抜け出すのが理想とするプレーだ。

そのためにはパス回しによって相手を食い付かせ、身体を寄せてきた瞬間にドリブルで一気に引き離したい。

以下の写真のようにボールをおさめた選手のフォローに入り、スイッチで抜け出すのが有効的なプレーで、パスを受けたらファーストタッチで一気に前進するのも効果的だ。

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DFに変化を加え、スペースを作るためにはパスを出したら動き続ける、選手がポジションを入れ替えるといった動きも選手に求めたい要素。DFが食い付いているのか、スペースがどこにあるのか確認するためにはなるべく顔を上げて、相手、味方、スペースを見るようにも意識させたい。

その際に役立つのが、前編で行ったパス&コントロールのトレーニングで、ポゼッションしながら、相手の重心がどこにあり、何を狙っているのか考えられる選手を目指したい。

ゴール前を崩すワンツーは、パススピードを意識

3vs1のロンドで興國高校の「ポゼッションしながら、仕掛けて行く」スタイルの意識を高めたら、ゴール前を想定した崩しのトレーニングへと移行する。昨年の夏以降よく取り組んでいるのが、ビルドアップからのゴール前の崩しまでを想定したひし形のパス&コントロール。

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パスによる崩しをイメージするばかりに鋭くゴール前に進めなくなるのを防ぐため、ワンツーでの崩しをトレーニングで行い、攻撃の型を身に付けるのが狙いだ。繰り返し練習する事で、実際の試合での判断や質を高めていく。

複数のパターンに取り組むが、いずれも「ビルドアップ→崩し→ボックス内を破るイメージ」でメニューが組まれているので意識して欲しい。

サイドへの展開は相手が素早いスライドで対応してくるため、遅いパスでは通らない。相手の警戒が強まる縦パスも同様で、パススピードが求められる。前線にボールが入ればOKではなく、強いボールをしっかりコントロールし、後方から走り込んだ選手に預けるポストプレーの質も必要になってくる。

ただパススピードが速ければ良いわけではなく、近距離でも同じ速度でパスを出すと味方が上手くコントロールできない。そのため、近距離ではパススピードを落とし、素早く動き直してリターンパスを受けるのが正解だ。

上下のマーカーに位置する選手はゴール前を想定しているため、DFがいると想定し、3vs1のロンドで培ったファーストタッチで前進するイメージを持ちながらプレーして欲しい。

ゲームはゴール前の攻防を増やすための設定が重要

後編の3つ目のとして行うのは、「4vs4+4のロンド」。4人組3チームで行い、1チームが鬼役、残り2チームが攻撃役としてワンタッチボールを回す。ボールを失ったら素早く攻守交替するのがルールだ。

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DFを避ける形でパスを繋ぐのは簡単だが、3vs1のロンドと同じくパス回しだけで終わらず仕掛ける意識を持つのがメニューの狙い。試合でサイドレーンに当たる外側でボールを奪われないようパスを回しつつ、DFの状況を見てハーフスペースに当たる中央のスペースへと仕掛けて行きたい。

中央に立つ選手とのワンツーも効果的なプレーだ。中央はDFが警戒し、難易度の高いゾーンであるため、相手と味方の状況を認知し、いつどんなタイミングで、どういったアクションをすべきか判断するのかが重要となる。

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練習の締めくくりとして行うのは、11vs11のゲーム。興國ではゴール前の場面を作りやすくするため、プレッシャーをより高めるため、両方のゴールをPA手前まで出してコンパクトなサイズで行っているのが特徴。

一連のトレーニングで高めてきたボールを失わないようパスを繋ぎながらも、ドリブルで積極的に仕掛けるプレーを意識しながら、ゲームを行う。

COACH UNITED ACADEMYではゲームで生まれた良い判断を余すことなく、動画で紹介しているのでこちらも是非チェックして欲しい。メニューを真似するだけでは同じような選手は育たず、コーチングのタイミングや質も重要になってくる。こちらも動画で内野監督のコーチング見て、指導の参考にして欲しい。

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【講師】内野智章/
1979年7月31日生まれ。現役時代は初芝橋本高校、高知大学でMFとして活躍。卒業後は愛媛FCでもプレーした。
1年間の社会人生活を経て、2005年に興國高校の教員に。翌年からサッカー部監督に就任し、近年はFW古橋亨梧(セルティック)やMF樺山諒乃介(横浜F・マリノス)ら毎年のように複数のJリーガーを輩出している。2019年には、「全国高校サッカー選手権大会」に初出場を果たした。