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パスを回す上で抑えておきたい3つの局面とポイント。試合になるとパスが繋げなくなる時の対処法

「パスの練習をしているのに、試合になるとうまく繋げない」。そんな悩みを持つ指導者、選手は多いのではないだろうか? そこで今回は、蹴和サッカースクール代表の上田原剛コーチに、「試合になると、パスが繋げなくなる時の対処法」を教えてもらった。

国内外での指導経験豊富な上田原コーチは、どのようなトレーニングで「パスの繋ぎ方」を教えるのだろうか?(文・鈴木智之)

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パスを回す上で起こる局面は全部で3つ

上田原コーチは鹿島アントラーズのアカデミーやブラジルでのコーチ経験を持つ指導者だ。COACH UNITED ACADEMYの『お団子サッカーの解消をテーマにしたU-8向けトレーニング動画』にも出演してもらっており、わかりやすい指導で好評を博している。

上田原コーチは「パス交換の基準を身につけるトレーニング」に取り組むにあたり、状況を3つの局面に分類。それが、以下の3つだ。

1)ボールにプレッシャーがない状態 → パスの受け手は、出し手から離れる。パスは強いボールを出す

2)ボールにプレッシャーがある状態 → パスの受け手は、出し手に近寄る、下がる。パスはスペースへ弱いボールを出す

3)ボールに強いプレッシャーがある状態 → パスの受け手は、ボールよりも低い位置(パスの出し手よりも後方)で受ける

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これらの状況に応じて、パスの受け手の動き方(サポートの質)、ボールの強弱を使い分けていく。基礎の段階では、小学校低学年から中学年を想定して行い、ゾーン1からゾーン2へのビルドアップ、前進を目的にトレーニングしていく。

まずは「ひし形のパス&コントロール」を実施。マーカーの前でボールを受け、パスを出した後に、次のマーカーへ移動する動きを繰り返す。

このトレーニングは試合中に行う、ゾーン1(自陣ゴール前)からゾーン2(中盤)へのビルドアップをイメージしている。

そのため、前後左右どこへでもパスを出すことのできる場所に、ボールを置くことがポイントとなる。いわゆる「オープンの位置」だ。

ここで上田原コーチが強調したのが、ボールに対してプレッシャーがないときは、パスを強く出すこと。パスが弱いと相手にカットされたり、ボールの移動中に寄せられて、フリーで受けられなくなる可能性があるからだ。

上田原コーチは「ボールをオープンに置いて、強いパスを出そう。そして、ボールを受ける前に、パスを出す相手がどこにいるかを見ておこう」と声をかけていく。

選手たちは右足でコントロール、右足でパスを繰り返していく。(パスがずれたら、体を移動させて右足でコントロールする)。次は逆回りになり、左足でボールを止める。キックはどちらの足でもOKだが、パスの受け手に前を向かせるために、速いボールを出すことがポイントだ。

加えて、上田原コーチが言及したのが、左足でボールを止めて右足で蹴るときに、ボールを止めてから、蹴るまでのスピードを速くすること。

実際の試合では、相手に近い位置にボールを置くことになるので、寄せられる時間を少なくするために、止めてから蹴るまでの時間を短くしたい。これは、ジュニア年代から意識させたい部分だ。

様々な状況を想定した「周囲を見ること」もパスを回す上で重要な要素

続いて、「周囲を見ること」を説明。見るべき要素は、状況によって変わる。それが次の3つだ。

1)フリーのとき → ゴール、スペース、味方、相手など、たくさんの要素を見ることができる

2)自分にボールが転がってくるとき → 見る時間が限られるので、まずは奪いに来る相手選手を見る

3)ボールを持っているとき → 自分より有利な味方を見る

これらを踏まえて、パスの出し手がボールを足下にコントロールした瞬間、パスの受け手はマーカーから離れて受ける動きにトライ。パスの受け手には、進行方向を見るため、ボールに対して左右に角度をつけた位置、体の向きを作って受けることを意識させていく。

上田原コーチは「ボールの位置でサポートの場所は変わるよ」「みんながサポートの角度をつけると、自然と三角形やひし形ができる」という声掛けで、選手たちを導いていった。

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続いては「タイミング」に言及。パスの出し手の足下にボールが止まった瞬間が、受け手が動くタイミングだ。「移動中は何を見る?」「前を向きやすいパスってどんなパス?」「角度をつけて」などの声をかけて、ポイントに意識を向けさせていく。

動画では、パスの受け手がプレッシャーを受けた状況を想定し、下がるサポートのトレーニングを実施。「プレッシャーのかかり具合で、サポートの高さを変えよう」と、コーチがプレッシャーをかけて、シンクロしながらコーチングしていく様子が収録されている。

さらには、小学校高学年から中学生を対象とした「応用編」もあり、ビルドアップを経て前進を目的に「パスの3原則」をトレーニング。

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ここでは「フリーの状態でパスを受けたらターンする」「DFがついてきて、ターンできなければワンタッチで落とす」「DFがタイトについていたら、そこを飛ばして前向きのサポートに切り替える」など、より実戦的なプレーにチャレンジしていった。

今回の動画は、パスの繋ぎを選手の感覚に頼るのではなく、「この状況ではどうすればいいか」という共通理解を提示することで、選手たちに理解させ、プレーに反映させることが狙いだ。

トレーニングメニューも複雑ではなく、取り入れやすいものなので、「コーチングのポイント」に目を向けて、トレーニングに役立てていただければと思う。

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【講師】上田原剛/
15歳の時にジーコサッカーキャンプに参加、ジーコにスカウトされアントラーズユースへ入団、その後大学を経て指導者の道へ。CFZ(ブラジル)で指導者をスタート。2005年〜2021年までの15年間は鹿島アントラーズのアカデミーにて指導。茨城県トレセンU12、ナショナルトレセン(関東)U12担当。2021年4月に蹴和サッカースクールを立ち上げ現在は小中学生の指導にあたる。スクールのほか指導者育成活動(練習会や講義)を行い、2021年6月からスタートした「お父さんコーチ向け練習会」には既に150名以上の指導者が参加している。