09.12.2022
前進することに重点を置く。大分トリニータU-12の11人制サッカーに繋げるポゼッショントレーニング
2年連続で「全日本U-12サッカー選手権大会」に出場し、前回大会ではベスト16に進んだ大分トリニータU-12。同アカデミーのユースは日本代表の岩田智輝(横浜F・マリノス)を筆頭に、東慶悟(FC東京)や松原健(横浜FM)など、多くのプロ選手を輩出している。
一番下のカテゴリーにあたるジュニア年代では、11人制サッカーに繋げるためのトレーニングを重視しており、ポゼッション(止める、蹴る、前進する)を重点的に指導しているという。
今回、「サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』」では、U-12からU-18までの全カテゴリーで指導経験を持つ首藤圭介監督に、トレーニングを実践してもらった。テーマは「ジュニア年代における11人制サッカーに繋がるポゼッショントレーニング」。前編では「止める・蹴るの習得と動き出しのタイミングの確認」を行っていく。(文・鈴木智之)
前進に必要な止める・蹴るを習得する5種類のパス&コントロール
首藤監督は「大分トリニータU-12では、ボールを保持しながら攻撃するサッカーを目指しています。ただポゼッションするのではなく、前進することに重点を置き、そのために選択肢を作ることを大切にしています。これらをトレーニングしていくことで、次の年代でも活躍できる選手が育つと考えています」と狙いを説明する。
「ポゼッションをするためには、ボールを動かすこと、受けること、パスを出すことが大切なので、動き出しのタイミング、パスのタイミングを意識させるとともに、相手を見て何をすれば良いのか、判断に働きかけるコーチングをしていきます」と話し、トレーニングに入っていった。
最初のトレーニングは「パス&コントロール 5種類」。選手をひし形に配置して、以下の順番で実施していく。
1:前に運ぶ・仕掛ける
2:ワンタッチパス
3:クイック(止めてから逆足でパス)
4:カットインしてパス
5:270度ターン
1つ目の「前に運ぶ・仕掛ける」では、パスの受け手はバックステップやサイドステップでコーンから離れてボールを受け、前にボールを運んでパスをする。
首藤監督からは「ボールと一緒に前に出ていこう」「ボールが来る前に進行方向を見て、動きながらボールに触ろう」などのアドバイスが送られ、選手たちは小気味良くプレーしていく。
続いてはワンタッチパス。首藤監督はコーンを相手に見立て、「マークを外してボールを見て、ボールを蹴る動きと同じタイミングで前に進もう」「動いているボールに足を合わせよう」と声をかけ、意識付けをさせていく。
3つ目の「クイック(止めてから逆足でパス)」は、足元にピタッとボールを止めて、止めた足とは反対の足で素早くパスを出す。
ここでも「しっかりとボールの横に足を運ぶことを意識しよう」「蹴る方向、行く方向をしっかり見よう」と話し、身体操作と見ることの重要性を伝えていった。
4つ目の「カットインしてパス」では、来たボールをコントロールして、コーンの内側へドリブル(カットイン)し、パスを出す動きを繰り返していく。
首藤監督は「足元にピタッと止めるのと、動きながらコントロールするのもOK」とし、「ボールが転がっている場合は、ボールに対して足を運んで蹴りにいくこと」「強いボールを返すために、しっかり踏み込もう。見ることを忘れないように」と、引き続き、身体操作と見ることを強調していた。
5つ目は「270度ターン」。近くにいる相手に対して、ボールを隠しながらターンをしてパスをするプレーだ。ここでも「ボールが来る前に、周りを見ること」を要求。「相手が取りに来るから、ターンをしてボールを守るんだよ」とプレーのイメージを伝えていく。
最後はパス&コントロール。パスの出し手は前と左右の両方に蹴られる場所にボールを置くことを意識し、パスの受け手は、出し手が蹴る瞬間に(マーカーに見立てた)コーンから離れて受けることを心がける。そのタイミングを合わせることで、スピーディーにボールが動いていく。
ボールを受ける選手は、移動中に前進できるスペースを探しておく
前編最後のトレーニングは「4対4+3サーバー」。12~16m×20~24mのグリッドで実施。サーバーは外に2人、中央に1人いるので、サーバーを使ってボールを保持する。片方のサーバーにボールが渡ったら、進行方向が変わり、反対側のサーバーを目指す。
このトレーニングでは、1つ前で実施したプレーが随所に出ており、選手たちの学習能力の高さが見て取れる。また、首藤監督からも「ナイスワンタッチ」などの褒める声が飛んでいた。
ポイントになるのが「ボールの移動中に、前に進めるスペースを探しておくこと」。フリーの選手を探してパスを出し、フリーの選手は、次のプレーを考えておくことで、素早い判断とプレーが可能になる。
首藤監督は「ボールを受ける選手は、ボールの移動中に判断することで、パスを出すのか、自分で行くのか、選択することができる。周りの選手は、パスを出した後にサポートをして、選択肢を作ってあげよう」とアドバイスし、選手たちは質の高いプレーを見せていた。
練習終了後、首藤監督は「このトレーニングでは、ボールの移動中に判断すること、いつ、何を見るかを体感させ、タイミングと判断をジャッジするコーチングがポイントになります」と指導時に意識することを教えてくれた。
後編では、実践の中でボールを運びながら、数的優位を作るトレーニングを行っていく。
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【講師】首藤圭介/
京都サンガ、大分トリニータ(トリニティ)でプレー。その後は、古巣の大分トリニータで指導者の道へ進み、U-15監督、U-15宇佐監督、U-18監督を経て、現在はU-12の監督を務めている。JFA公認A級ジェネラルライセンス所持。
取材・文 鈴木智之