10.06.2022
ゴールデンエイジ世代で身に付けておきたいスキルは3つ。効率的に基礎技術を習得するトレーニング
「サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』」では、サッカーを始めたばかりのU-10からU-12年代を指導する際に参考になる、指導動画を配信している。
ゴールデンエイジという言葉を一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。
運動能力が急速に発達する期間であり、サッカーに必要なあらゆるスキル(状況に応じて技術を発揮すること)の獲得に最適な時期として位置づけられている。
U12年代のゴールデンエイジで多くの指導者が大事にする「止める、蹴る、運ぶ」の育成年代の三大要素をどのように磨いていけばよいのか?
そこで今回は、「ゴールデンエイジ期で取り組む駆け引きと効率的な基礎技術の習得」をテーマに、ボンフィンフットボールパークのダイレクターを務め、東京都キッズリーダーのチーフインストラクターや指導者養成に係る、川村元雄コーチによるトレーニングを紹介したい。(文・鈴木智之)
相手を見てプレーを選ぶための動きづくりと基礎練習
トレーニングの開始前、川村コーチは狙いを次のように説明する。
「ゴールデンエイジと呼ばれるこの年代では、複合的なトレーニングを取り入れます。相手を観ながら走る、動きながらボールやプレーに関わる、次のプレーを意識した選択肢を持つなどが、それにあたります」
最初のテーマは「動き作りとボールフィーリング」。動きながら相手を観ることや、スピードを変化させることを学び、ボールフィーリングでは、ボールの高さや状況に合わせて、体のどの部位を使うといったことを体験していく。
1つ目のトレーニングは「複合トレーニング」と題し、「観ながら鬼ごっこ」「サッカーテニス(グラウンダー)」「2人組パス&コントロール」の3つを行う。
「観ながら鬼ごっこ」では、2人組になり、鬼と逃げる役に分かれて実施。逃げる方は横向きで逃げ、鬼に捕まりそうになったら前向きでダッシュする。これは「相手の動きを観ながら動く」ことにフォーカスしたトレーニングだ。
2つ目は「サッカーテニス(グラウンダー)」。テニスの要領で、向かい合った状態で手でボールを転がして投げ、投げられた方は自分の後方へボールがいかないようにキャッチする。投げる側は相手に取られないように、サイドに速いボールを投げるのがポイントだ。
川村コーチは「軸足を踏み込んで、手で転がす動作はキックも同じ。軸足を踏み出して、ボールを転がそう」とアドバイスを送っていく。
続いて、コーンの幅を広げ、キック(グラウンダー)で、左右の空いているコースを狙ってボールを蹴る。
ここでは、ボールを受ける前に両足でステップを踏むことで準備を行い、トラップからキックの動作をスムーズに行うことに意識を向けさせていく。
続いて「2人組パス&コントロール」。2人組で向かい合って立ち、片方が手でボールを投げ、片方がインサイド、インステップ、アウトサイド、すね、もも、胸、肩、頭でボールを返す。これで1周、60秒間行う。
川村コーチは「ボールに触るときに、足の形をしっかり作ろう。胸でボールをコントロールするときは、腕を広げて胸を開くこと。肩でコントロールするときは、ボールが落ちてくる下に入って当てよう」とデモンストレーションし、ポイントを意識させていく。
「相手を見る」と「駆け引きする」ことを習慣化するドリブル練習
2つ目の動画のテーマは「緩急をつけたドリブルで相手を外す」。川村コーチは「顔を上げて状況を判断しながら、ドリブルする習慣をつけていきます」と話し、「駆け引きするドリブル」のトレーニングに入っていった。
設定としては、選手がドリブルをし、ゴールにいるコーチの手が上がった瞬間に、インサイドでシュートを打つ動作を実施。時間は1分間で、早く、正確にプレーすることが目標だ。
続いては「コーチが左右のどちらかに手を上げるので、上がった方にシュートを打つ」というルールに変更。ここでは「ドリブルをするときに、顔を上げてコーチを見ること」「シュートの際は、蹴る方のひざを外側に開かせること」「コースを蹴り分けること」をコーチングしていった。
次は「緩急ドリブル」。2人組を作り、1対1の状況で向かい合って立ち、ボール保持側は左右どちらかにドリブルをして、コーンで作った枠に到達すれば勝ちとなる。
このトレーニングでは、ドリブルの最中にステップを踏み、相手の動きを観て逆をつくこと。それにともない、ボールを正確にコントロールすることが求められる。
プレーの流れとしては、相手を観ながら緩急をつけて逆を突くことや、スピードを上げて相手より速く枠に到達し、枠内にボールを止めることがポイントだ。
川村コーチは「ボールを触っていない方の足を使うと、相手と駆け引きができるよ」とアドバイスを送っていた。
トレーニングを通じて、川村コーチの説明はていねいでわかりやすい。サッカー経験の少ない子であっても、チャレンジしやすい雰囲気を作る様子は、ぜひ参考にしてほしい。
また、練習メニューや設定に加えて、説明の明快さや声のトーンなども参考にすると、実施する際により良いトレーニングになるだろう。
【講師】川村元雄/
4年間の体育講師(幼児教育)を経て、現在の徳島ヴォルティス、JFA四国担当、FC東京で普及部長を務めた。現在はボンフィンフットボールパークにてフットボールダイレクターとして地域のサッカーの普及育成に携わりながら、、指導者養成に係り、日本サッカー協会100周年記念事業においては特別功労者表彰を受賞。
取材・文 鈴木智之