10.03.2022
サッカーの本質は相手の逆をつくこと。パスの種類やタイミングを使い分けてゴール前を突破するトレーニング
今年度の「JA全農杯 全国小学生選抜サッカー選手権」(チビリンピック)で、準優勝を果たした、高部JFC。代表を務める設樂幸志監督は、大島僚太(川崎フロンターレ)や千葉寛汰(清水エスパルス→FC今治)などを指導した経験を持っている。
チームとして、止める・蹴るをベースに、相手の逆を突く。その中で常にゴールを意識させることを重視する高部JFCが取り組む「相手の逆を突いて、ゴール前の崩しの選択肢を増やす練習法」。
後編では「相手がいる状態で、ゴールを目指すトレーニング」を紹介したい。(文・鈴木智之)
相手の重心がかかったところを見逃さず、パスかドリブルを判断する
前編のトレーニングでは「パス&コントロールの基礎技術」「周囲を見て、味方と意思を合わせること」を重点的に行なったが、後編からは実際の試合に近い形で、技術と判断を高めていく。
後編最初のトレーニングは「2対1+GK」。ゴール前の状況で、攻撃2人、守備1人+GKを実施。DFとパス交換をしてスタートするのだが、回を重ねるごとに、スタート位置を中央から左サイド、右サイドと変えて行う。
設樂監督は「攻撃の2人に考えてほしいのは、シュートで終わること、1対1の状況にならないこと」と、数的優位を活かし、シュートに持ち込むように意識付けをして、トレーニングがスタートした。
設樂監督は選手たちのプレーを見ながら「シュートまで行けたけど、味方は使えた?」「最初のトレーニングでやったように、声を出すこと。どこでボールが欲しいか、はっきりとした動きで矢印を出そう」などのアドバイスを送っていく。
さらに、守備のプレッシャーが来ていたときは、素早く判断して、ダイレクトでパスを出すことの重要性を説いていく。
「攻撃の選手は常に顔を上げて、守備の選手が何をしようとしているかを見ること」と話し、相手の状況を見てアウトサイドでパスを出すなど、前編で行ったトレーニングとつながっていることを強調していた。
続いて設樂監督は「味方を使うためにはどうすればいい?」と質問。選手から「パスをする」「パスを出すふりをする」「声を出す」などの答えが返ってくるので、それに加えて「DFを見て、相手の重心がかかったところを見逃さず、パスかドリブルかの判断をしよう」とプレーイメージを伝えていった。
動画では監督が「最高のタイミング」と褒めるプレーが出ているので、ぜひ確認してほしい。
「2対1+GK」の最後には、スタート位置をサイドから中央へ移して実施。ここでは「どこにスペースがあるかを確認しよう」とアドバイスするとともに、横にパスを出したいのなら自分の意識を縦に持っていき、守備の選手に食いつかせておいて、横に出す動きを実演。このあたりのコーチングの様子も参考になる。
「自分がだめな状況だからパスするのはパスではない」(設樂監督)
続いては「3対3+1フリーマン」。20m×30mのグリッドでゴールを設置し、GKをつけて行う。トレーニングの目的はゴールを奪うこと。設樂監督は「シュートのトレーニングなので、顔を上げてゴールを意識しよう」と話してスタートした。
ここでは「相手は3人、味方は4人。誰が空いている?」「いい状態の人にボールを早く入れよう。自分がだめだからパスするのはパスじゃない」と、連携や判断に働きかけるコーチングを行っていく。
さらには、パスの受け手が矢印をはっきりと出すことで、パスが繋がることを指摘していった。トレーニングは雨が強く降る中で行われたが、アウトサイドの的確なパスや思い切りの良いシュートなど、選手たちが集中を切らさずにトレーニングに臨む姿が収録されている。
最後は「4対4+1フリーマン」で締めくくり。設定は同じで、人数が増えるため、強度がアップする。設樂監督は「人数が増えたので、パスコースが増えた。積極的にゴールを狙おう」と話し、まずゴールを狙い、難しそうであればパスに切り替えることに意識を向けさせていた。
トレーニング終了後、設樂監督はCOACH UNITED ACADEMY読者に、次のようなメッセージをくれた。
「この年代では、大きさや速さに頼りがちですが、我々はサッカーの本質である、相手の逆をつくことをテーマに、成長過程に左右されないトレーニングをしています。ぜひ参考に、日々のトレーニングに励んでください。一緒に頑張りましょう」
動画を通じて、設樂監督の声掛けのタイミング、内容を参考にしていただけると、より実践しやすく、トレーニング効果も見込めるだろう。繰り返し見て、指導のポイントを理解していただければと思う。
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【講師】設樂幸志/
清水東高校、関東学院大学を卒業後、地元の清水に戻り、「JFA全日本U-12サッカー選手権大会」で8度の優勝を誇る清水FCのコーチになり、指導者としての活動を始める。
清水FCでは、大島僚太(川崎フロンターレ)や風間宏希(ザスパクサツ群馬)、風間宏矢(ジェフユナイテッド市原・千葉)を指導した。
2001年に高部JFCを立ち上げ、静岡県大会で5回、東海大会では2度の優勝という実績を作り、2022年度は、「JA全農杯 全国小学生選抜サッカー選手権(チビリンピック)」で準優勝、「フジパンカップ県大会U-12」で優勝を果たしている。
取材・文 鈴木智之