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子どもが緊張した時の解決策とは?指導者が実施したい普段通りのプレーを実現させる「スキルの整理」

メンタルトレーナーとして、ジュビロ磐田の若手選手やジュニア年代の強豪クラブを始め、多数のスポーツチーム、選手のメンタルをサポートしている、株式会社43Lab代表取締役の清水利生氏。

「サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』」では、前回より「緊張でパフォーマンスが低下する原因」についての講義を公開中。動画後編では「緊張したときの解決策」について紹介したい。選手が緊張してしまったときに、指導者はどんなアプローチをすればよいのかが分かる必見の内容だ。(文・鈴木智之)

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緊張したときの解決策は2つに分けられる

清水氏はまず「緊張という感情は自然な反応です。大事なのは、緊張で感情が揺れ動く中でも、パフォーマンスを100%発揮することです」と説明。

清水氏によると「緊張はコントロールすることができないもの」だという。そのため、緊張をどうにかしようとするのではなく、緊張していても自分のプレーをするために、どうすればいいかに目を向けることが大切なのだ。

「解決策は2つあります。1つが感情を評価しないこと。もう1つがスキルを整理することです。順を追って説明していきましょう。前編でもお伝えしたとおり、『緊張する』という感情を『プレーがうまくいかない』などの結果と結び付けないことがポイントです。緊張という感情は、人間の自然な反応なので、良い、悪いもありません」

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緊張しているからといって、プレーがうまくいかないわけではない。緊張を感じながらも、プレーが成功することはある。また、リラックスしていたからといって、どんなプレーが成功するわけでもない。

「プレーが失敗したとき、ミスをしたときに『プレッシャーが大きかったから』など、すべて緊張を始めとする感情に原因を求めないようにしてほしいと思います」

指導者がミスの原因を緊張に求めてしまうと、子どもたちは「緊張すると失敗するんだ」「プレッシャーがかかるとミスをするんだ」という認識になってしまう。そこを改めることが大事だという。

「緊張は、手をぶつけたときに痛いと感じるのと同じです。物事が起きたときに、自然と出てくるもので、コントロールすることはできないのです。ご飯を食べたときに、美味しいと感じたとして、その感情に良い、悪いをつけませんよね。それと同じです。寒いところ行ったときに鳥肌が立つ。体の反応と同じなのです」

緊張という感情ではなく、行動に意識を向けるための「スキルの整理」

清水氏は「緊張に対する、大人の認識を変えることが、子どもたちの感じ方、考え方を変えることにつながる」とアドバイスを送る。

その前提を踏まえた上で、2つ目の「スキルの整理」というテクニックを提示する。

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「スキルの整理とは、プレーを細分化することです。たとえば緊張を感じるあまり、ドリブルの得意な選手が、相手を抜けなくなるとします。前編で紹介した『アザーフォーカス』と同じで、緊張しているという感情に意識が行きすぎた結果、いつもできているトラップやボールコントロール、ドリブルができなくなってしまうのです」

そこで、緊張という感情ではなく、行動に意識を向けるために「スキルの整理」をしておくことが大切だという。

「ドリブルで相手を抜けるとき、自分はどういう行動をしているのか。そこに目を向けることが、スキルの整理です」

ひとつの例として、ドリブルで相手を抜くことができるときは、以下のような行動をしていることが多い。

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1:相手の位置を見てボールを受ける
2:ワンタッチで前を向く
3:相手のひざを見る
4:ボディフェイクで相手を揺さぶる

「プレーがうまくいくという『結果』は、行動の質を上げることから始まります。これは選手に聞いてみてほしいのですが、ドリブルを例に上げると、1から4までの行動がうまくできているから、相手を抜くことができるとします」

感覚でしている動作を言葉に落とし込み、理解することで、緊張を感じたとしても、いますべき動作に目を向けることで、ドリブルで相手を抜くというプレーを成功させることができるわけだ。

「緊張を強く感じると、そちらに意識が向いてしまい、普段している行動が抜け落ちてしまうことがあります。そこで緊張をどうにかしようとするのではなく、行動に意識を向けることができれば、たとえ緊張を感じていたとしても、普段どおりのプレーができるんだというマインドセットができます」

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大事なのは、緊張していても「1から4がすべてできれば、ドリブルで突破ができるんだ」と選手自身が認識していること。

「選手には、パス、ドリブル、シュート、インターセプトなど、なんでもいいのですが、たとえ緊張していたとしても、『これはしっかり実行したい』というプレーを分析し、スキルの整理をしてもらうといいと思います。分析に慣れると、他のプレーにも派生することができます」

ほかにも動画では、「自分がコントロールできること」「コントロールできないこと」についても解説。

清水氏は「できるだけ、パフォーマンスを上げるための行動にフォーカスしてほしい。自分の行動は自分でコントロールできるので、そちらに意識を向ける意味でも、スキルの整理をしてもらえたらと思います」と話した。

動画ではさらに深い解説や情報提供を行っており、選手を緊張から救いたい、良い心理状態でプレーしてほしいと願う指導者にとって、有益な情報が詰まっている。

ぜひ全容を動画で確認し、選手の心理面の成長に役立てていただければと思う。

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【講師】清水利生/
山梨県韮崎市出身。プロフットサル選手としてFリーグでプレー。
引退後にメンタルトレーナーに転身し、2020年に株式会社43Labを設立。現在は、オリンピック選手やW杯出場選手、女子プロゴルフのツアープロなど日本を代表する選手たちをサポートし、ジュビロ磐田、三菱重工相模原ダイナボアーズ、トヨタ車体クインシーズ、ヤマハ発動機ファクトリーレーシングと契約をしている。講師として、企業研修や講演会、ジュニア育成研修など幅広く活動中。紙面やwebでのコラム執筆も行っている。

著書:「スポーツの本番に強くなる 子どもメントレ」
資格:「スポーツメンタルトレーナー資格」、「行動心理士資格」、「上級心理カウンセラー資格」、「産業心理カウンセラー資格」