07.20.2023
3対1はグループでボールを保持する「個人の役割と技術」を整理できる!技術が浅くても実践できる練習法
サッカーの指導が学べる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、指導経験の浅いコーチに向けて、U-8~U-10年代を指導する際の参考になる動画を配信中だ。
サッカーを始めたばかりの子どもに対し、どのようなトレーニングをすればいいか、お悩みの指導者も多いことだろう。
そこで前回より、長野パルセイロやフットサルのボアルース長野でプレーした、バロジュニアサッカースクール代表の野澤健一氏による「パスコースと判断力を向上させるトレーニング」を公開している。
指導経験豊富な野澤コーチは、技術レベルや戦術理解、サッカー経験にばらつきのある子に対し、どのようなアプローチでトレーニングしていくのだろうか?(文・鈴木智之)
段階的に強度を高める3対1の練習法
動画後編のテーマは「サポートの角度と連続性」。サッカーに必要なサポートの概念を「3対1」のトレーニングをベースにアプローチしていく。
まずはグリッド内で3対1のパス回しを実施。攻撃側は10本パスをつなぐことを目的とし、守備側は歩いてボールを奪いに行く。(守備は時間で交代する)
開始前、野澤コーチは「来たボールから遠い方の足を出して、壁になるようにして止めると、キックがしやすくなる」とデモンストレーション。
プレーの第一歩となる「ボールを止める」ことのお手本を示してから、3対1に入っていった。
ここでは「鬼は歩いて奪いに行こう」「ボールを止めることを思い出して」と、ルールを始め、基本的なことに対して声をかけていく。
また、パスコースを作る動きをした子を見逃さず「素晴らしい!」と褒め、モチベーションを高めるなど、明るいトーンの声かけ、盛り上げる声なども参考にしてほしい。
続いて「パスを10本連続でつないでみよう」とルールを変更し、子どもたちを飽きさせないように導いていく。
子どもたちがルールや進め方を理解したところで、「ボールを受ける人が準備するよ」「すぐに動かないとパスが貰えないよ」「パスを出したら動くよ」「サポートは右手と左手だよ」など、プレーに関するコーチングを増やしていく。
その後「鬼は走ってもOK」とルールを変更。「鬼が走ると、パスコースがすぐに消えてしまう。パスを出した後はどうすればいい?」「パスが貰える場所にどういうふうに動けばいい?」と質問をし、「ゆっくり歩くのではなく、走って助けてあげよう」とアドバイス。
さらには「3人で走ってボールを受けると守備は疲れるから、これぐらいでやってみよう」と、コーチを交えてデモンストレーション。実際にやって見せることで、どれぐらい動けばいいかを理解させていった。
実践に近づける為にゴールを設置した3対1の練習法
続いてのテーマは「ゴールを目指す3対1」。野澤コーチは「攻撃方向とゴールを設定し、パス、ドリブル、シュートの優先順位と判断を養います。ボール保持の反復回数を多くすることと実戦的になるように、ゴールと攻撃方向が加わっています」と主旨を説明。
「3対1 方向づけ」のトレーニングでは、縦24m×横20mのグリッドを作り、ゴールを1つ設置。グリッドの半分にマーカーを置き、前と後ろでエリアを区切る。
攻撃は後ろのエリアでパスを3本つないだら、前のエリアに進入してシュートを打って良いというルールだ。
野澤コーチはトレーニング開始前、「ゴールに行くために、手前のエリアでボールを取られたら行ける? 行けないよね。3人でまずはボールを取られないようにしよう」とルールを再確認。
さらには「パスを3本つなげるようになった。3本つないだら守備はどうやって守る?」「ゴールを守りながら、ボールを奪いに来るよね。そのときにボールを持っていない2人はどうしたらいいかな?」と投げかけ、「(ボール保持者から見て)左右の位置に行って助けてあげると、右と左でゴールに行きやすい」と、前編から継続的に伝えてきた、「右手と左手の位置に入ってサポートすること」を説いていく。
トレーニング後は、子どもたちを集めて振り返りを実施。「3対1をやってわかったことは?」と質問をし、「パスを出しやすいところで助けてあげる」「相手がいないところに動く」「走って、速く助けてあげる」などの答えを引き出し、学びを深めていった。
トレーニング終了後、野澤コーチはCOACH UNITED ACADEMYの読者に向けて、次のようなメッセージを送った。
「今回は、グループでボールを保持するために、サポートする選手とボールを持つ選手が『いつ、どこに、どのように』プレーすると効果的なのかを身につけるトレーニングをしました。3対1はボールを保持するための、グループの中の個人の役割と技術をトレーニングすることができます。参考にしていただけると幸いです」
テーマを絞り、明快に伝える様子を始め、子どもたちのやる気を高める接し方、飽きさせないオーガナイズなど、指導経験の浅い指導者にとって、参考になる要素が多数、収録されている。
トレーニングメニューだけでなく、全体の雰囲気なども動画から感じ取っていただければと思う。
【講師】野澤健一/
長野県松本美須々ヶ丘高等学校から立正大学サッカー部を卒業後、JFLで165試合出場、AC長野パルセイロではJ3リーグに19試合に出場。
2014年に現役を引退後、指導者に転身し、AC長野パルセイロU-18のコーチや市立長野高校のコーチを務め、ボアルース長野(フットサル)の選手としてフットサルにも進出。
2017年に、北信サッカーの発展に貢献すべく、C.F.BARROを立ち上げ、スクールに加えてジュニアユースも設立。2023年現在ではU-15県トレセンのチーフコーチも務める。
JFA公認A級ジェネラル、JFA公認フットサルB級保有。
取材・文 鈴木智之