10.02.2023
プレーの幅を広げる「オープンな身体の向き」。数的優位な状況を作り出しながら相手の陣形を崩すビルトアップトレーニング
セレクションを実施しない街クラブながら、昨年の全日本U-12選手権神奈川県大会で準優勝を果たした中野島FC。チームを率いるのが、川崎フロンターレのアカデミーで育ち、桐蔭横浜大学から東南アジアのカンボジアでプロサッカー選手としてプレーをした岡本一輝氏だ。
2019年に監督に就任すると、2022年には『アイリスオーヤマ第7回プレミアリーグチャンピオンシップ』で全国優勝を果たすなど、確かな指導手腕を持つ岡本監督(現:U-10担当)に「数的優位な状況を作り出しながら相手の陣形を崩すビルトアップトレーニング」を実践してもらった。
動画後編のテーマは「ビルドアップを実行させる、実践トレーニング」。ビルドアップ主体で攻撃を組み立て、フィニッシュにつなげるためのトレーニングは必見だ。(文・鈴木智之)
身体の向きをオープンにすると、前方が広く見える
動画後編では「ビルドアップを実行させる、実践トレーニング」をテーマに「2対2+1フリーマン+2対2+2サーバー」を実施。
縦24m×横12mのグリッドで行い、隣り合うグリッドに攻撃2名、守備2名が入る。中央にフリーマン、両サイドにサーバーを配置し、オフサイドラインを設け、進行方向のライン突破を目指す。
岡本監督は適宜プレーを止めながら「大事なのは、身体の向きをオープンにすること。そうすることで前方が広く見える。常にゴール方向を意識しながらピッチに立つことが重要。」と説明。
身体の向きをオープンにすることで、前方のパスコースを視野に入れやすくなり、プレーの選択肢が増えることに気づかせていく。
また、パスを受ける位置を指摘し、「立ち位置で相手(守備)をやっつけることを考えよう」と、相手の守備ラインを1本のパスで越えられる位置にポジションをとることをアドバイス。
ほかにも、自陣ゴール前の選手がボールを保持した状態で、前にいる選手がボールを受けるアクションを起こさないことを指摘。
「ワンタッチで縦にパスを入れられそうじゃない? どういうタイミングで動き出してあげればいい?」
この局面では、サイドの高い位置にポジションをとってDFを食いつかせておいて、ボールを受ける瞬間に下がり、味方がワンタッチでパスを出して、それを受けるプレーをデモンストレーション。
「アクションに緩急をつけることが大事。素早く動いてマークを外そう。前線の選手はわかりやすく動くこと。パスが出てこなければ、何度も動き直そう」
さらに「前を向ける」と、メッセージ性のあるパスを受けて、ターンをしてゴールまで行ったプレーを称賛。コーチングにより、選手たちのプレーが向上していく姿はぜひ動画で確認してほしい。
ゲートやグリッドを作って目的の現象が出やすいメニューを行う
最後は「7対7+1GK」。片方にゴールとGKを配置し、もう片方はコーンで3つのゲートを設置。ゲートはドリブルかパス(スペースに走らせるパスを味方が受ける)で突破したら得点となる。オフサイドはなし。
トレーニング前、岡本監督は「できるだけ真ん中の黄色いコーンを通過することを目指そう」と話してスタート。
ここではパススピードに言及し、「速いパスで味方に前を向かせる」「ゆるいパスを出して、リターンパスを受けて広い方に展開する」など、パスにメッセージを込めることの重要性を説いていた。
ほかにも「パスを出して終わりではなく、サポートできる位置に入ることが大事。ちょっとしたポジショニングにこだわってみよう」「前(ゴール)を目指すけど、自陣ではボールを失わないことを意識する」「場所によって、イージーなパスとチャレンジするパスを使い分けよう」と、デモンストレーションを交えて働きかけていった。
トレーニングを通じて、状況ごとのわかりやすいアドバイス、デモンストレーションは非常に参考になる。岡本監督のコーチングを見ることで、サッカーの理解もより深まるだろう。
最後に、岡本監督は次のように話し、トレーニングを締めくくった。
「後編は、より実戦に近いトレーニングとなっています。相手より優位な状況をどのように作り出すか。それをどう生かすかが、このトレーニングの狙いです。
今回のトレーニングを継続することで、サッカーの原理原則を理解していきます。今回ご紹介したものを、日々のトレーニングの参考にしてみてください。日本サッカーを一緒に盛り上げていきましょう!」
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【講師】岡本一輝/
1996年1月28日生まれ。日本サッカー協会公認B級ライセンス保持。中野島FC、川崎フロンターレU-15、川崎フロンターレU-18、桐蔭横浜大学、Angkor Tiger FC(カンボジアプロ1部リーグ)でプレーし、2019年から中野島FCの監督に就任し指導者としてのキャリアをスタート。2022年夏に行われた「アイリスオーヤマ第7回プレミアリーグチャンピオンシップ」でクラブ初となる全国大会優勝を達成した。
取材・文 鈴木智之