球際で負けない強さを身に着ける。守備の優位性を作り出すサポートの位置やプレスのかけ方を習得する練習法

クラブ創設３年目ながら「全日本U12サッカー選手権茨城県大会」で、２年連続ベスト４に進出しているFC COLORZ。

球際で負けない強さがあり、複数人が連動してボールを奪い、素早くボールを前に運んで攻めるスタイルを標榜している。

そこで今回はFC COLORZの棚橋徹太ヘッドコーチに「グループでのボール奪取から、素早い攻撃につなげるトレーニング」を実施してもらった。

ジュニア年代の選手たちに対して、どのようなコーチング、トレーニングオーガナイズで落とし込んでいくのか。きめ細やかなコーチングで、選手のプレーを向上させていく様子は必見だ。（文・鈴木智之）

ボールを奪うには味方同士の連動が重要。２人の距離感をよくする

前編では「味方同士で連動する動き方の基本の習得」をテーマに「２人のコンビネーション」「２対２」のトレーニングを実施。

棚橋コーチは「今回のトレーニングでは、２人のコンビネーションを上手く使うこと、ボールホルダーに対してファーストディフェンダーが限定・誘導し、守備の優位性を作ることをポイントとします」と話し、トレーニングに入っていった。

トレーニングを行うのは、今夏に行われた「TOBOGERI U-10」で優勝した、U-10の選手たちだ。

まずはウォーミングアップを兼ねた「２人のコンビネーション」から。最初はパスを出して、斜めにランニング→ワンタッチで縦に流す。次にパスを出して正面にランニング→フリックの順で行う。

棚橋コーチは「２人の距離感を意識すること。パスを出した後のサポートスピードを速く」と声をかけていく。

さらに「試合を意識しながらやろう。パスを出した後に、斜めにランニングすることで、相手の守備を動かす。相手を動かしたところで、そこを使う」とデモンストレーション。

ほかにも「パスを出した足が、ダッシュの第一歩になるように」と強調し、「パスを出した足でプレーしよう。止まらず、スピードを緩めない」とアドバイスしていった。

次に「パスを出して正面にランニング→フリック」に移行。ここでは「２人の距離が近いと上手く行かないので、フリックした選手は相手から速く離れよう」とポイントを伝えていく。

また「パススピードを意識するけど、フリックする選手との距離を縮めすぎない」と、状況を観て、距離感を調整することにも言及。

フリックする選手のデモンストレーションも行い、「前に行く準備をしよう。おへそを後ろの選手に向けず、スムーズに動こう」と手本を示していった。

続いてのトレーニングは「２対２」。縦30m×横10mのグリッドで実施。互いに、ドリブルで相手の背後にあるラインを突破したら勝ちとなる。

ここでは「ファーストディフェンダーがボールホルダーのプレーを限定し、サイドに誘導。ボールホルダーがヘッドダウンするか、プレーの選択肢がなくなったら２人がかりで奪いに行く」という考え方を提示。

「ボールホルダーに抜かれることを恐れて下がるのではなく、相手のプレーを限定できているのなら、狙いを持って奪いに行くこと」を奨励していった。

さらに「ファーストディフェンダーは何をしないといけない？」と質問し、「パスコースをどう切る？」と投げかけていく。ほかにも、以下のようなアドバイスを送っていた。

「ファーストディフェンダーが縦を塞いでいるのであれば、相手は横パスしかないので、そこを狙う」「足を出して奪うのではなく、体を入れて奪う」「奪いきった瞬間に、もう一人の選手は飛び出し、素早く２対１を作る」

以上で前編のトレーニングは終了。棚橋コーチは「２対２のトレーニングでは、２人がつながることを狙いとしています。また、ボールを奪ったあとは、攻撃への切り替えを速くすることが大事になります」と話し、締めくくった。

トレーニングを通じて、状況に応じた判断、周囲との関わりの中でプレーすることに注力する姿が印象的だった。それがグループでボールを奪い、攻撃につなげていくためのポイントと言える。

ぜひ動画を繰り返し観て、棚橋コーチのコーチングやデモンストレーションを参考にしてほしい。

後編では、３対３、４対４とゴールを意識しながら、実戦形式を行っていく。

【講師】棚橋徹太／
18歳から指導者をはじめ東京都、千葉県で10年指導実績を重ね、現在は創設3年目のFC COLORZ(茨城県)でhead coachを勤める。全日本U12サッカー選手権茨城県大会では、2年連続ベスト4進出へ貢献。

取材・文　鈴木智之　　