11.13.2023
個でボールを扱う技術と奪われない力を身に着ける。大阪の強豪街クラブが行うドリブルの基本トレーニング
関西の強豪として知られ、今年度のチビリンピック全国大会やジュニアサッカーワールドチャレンジに出場しているアイリスFC住吉。
ジュニア年代では基本技術を中心にトレーニングを行い、中島大嘉(名古屋グランパス)や菊井悠介(松本山雅FC)など、個の力に優れた選手を輩出している。
今回はU-12の監督を務め、JFAトレセン大阪U-12でも指導をする久保秀太郎氏に「ボールを運ぶ、仕掛けるスキルを習得するドリブルトレーニング」を実施してもらった。
上のカテゴリーで活躍する選手を多数輩出するアイリスFC住吉は、どのようなトレーニングで個の力を高めていくのだろうか?(文・鈴木智之)
「ジュニア年代では個のスキルの習得に力を入れています」(久保氏)
前編のテーマは「ボールを扱う技術と駆け引きを身につけるトレーニング」。
久保監督は「サッカーで必要な技術、判断力を身につけるために、ジュニア年代ではボールを持ったときに個人で打開する力、ボールを失わないことに力を入れて指導しています」と、考え方を紹介する。
それらを高めるための「ボールを運ぶ、仕掛けるスキルを習得する」をテーマに、トレーニングを実施していく。
まずは「3色ドリブル鬼ごっこ」から。グリッド内で1人1個ボールを持ち、ドリブルしながら氷鬼ごっこをする。
赤→青→黄→赤と、ビブスの色に応じてタッチする相手が決まっており、タッチされたらボールを手で持ち上げ、股を開ける。逃げている味方に、股にボールを通してもらったら復活できるというルールだ。
久保監督は「足からボールを離さないように」「プレーには逃げる、捕まえる、助けるがある。ドリブルしながら観て、何をすればいいかを考えよう。周りを観て選んでよ」と声をかけていく。
ほかにも「相手をタッチしに行って、全滅させよう」「ボールだけ、目の前だけを観ないように」とシンクロしながらコーチングしていった。
ドリブルのスピードを強化させる様々な「コーンドリブル」
2つ目は「コーンドリブル」。コーンを1~1.5mの間隔においてドリブルを行う。最初はジグザグドリブルから。
ここでは「引き技など、足裏を使うことを意識すること」「ジグザグドリブルの最後はスピードを上げてゲートを突破する」といった声かけで、選手たちを意識付けしていた。
コーチングとしては「ボールだけを観ていて、プレーを選べる?」「スピードを変えることを意識しよう」と、シンクロしながらアドバイスしていった。
次はコーンを横に倒して「ダブルタッチ→アウト→ダブルタッチ」でドリブルを実施。久保監督は「アウトの後のインのタッチをできるだけ速く触り、相手を抜き去るイメージを持とう」とイメージを提示。選手たちはリズムよくドリブルを繰り広げていく。
最後は「8の字ドリブル」。ポイントは「必ずアウトサイドでボールを触ること」「8の字で回り終えた後、前にスピードを上げるときのインサイドのタッチを速くすること」の2つ。
試合中、相手をかわすために、ターンを伴うアウトサイドタッチは有効で、インサイドでボールを触り、スピードアップすることで、相手を抜き去ることができる。そのイメージでトレーニングしていった。
続いては競争形式で、ジグザグドリブル、ダブルタッチ→アウト、8の字ドリブル(アウトサイド、インサイド)を実施。
じゃんけんをしてからドリブルがスタート。あいこのときは動いてはいけないというルールだ。勝ち負けを競い、勝った選手が手前のグリッド、負けた選手が奥のグリッドで行うなどして、競争意識を高めていった。
相手を見て、相手から遠い足でボールを持つ
最後は「1対1」。4つゴールがあり、そのうちの2つをドリブルで通過したら勝ちとなる。(同じ選手は、一度通過したゴールを使えない)
久保監督は「まず、相手がどちらから来ているかを感じること」と話し「手で相手を触ること」の重要性を説いていく。
「手で相手を触ることで、どこにいるかを感じることができるし、相手の力を利用してターンすることもできる」
加えて「インサイド、アウトサイドのどちらで触るかも大事」「体が小さい選手は、相手を背負って踏ん張ってキープしないこと。駆け引きをして、相手を外そう」と、ポイントをわかりやすく伝えていく。
ほかにも「相手から遠い足でボールを持つ」「相手の位置に合わせて、右と左を持ち変えてターンする」をデモンストレーションしているので、ぜひ動画で確認してほしい。
以上で前編のトレーニングは終了。久保監督は次のように振り返った。
「前編では、ボール扱う技術、ボールを失わないスキルを身につけるトレーニングを行いました。1対1のトレーニングでは運ぶだけ、前進するだけではなく、前に行けないときはキャンセルできること。ボールを失わずに前を向くこと。ボールの持ち方、回り方を意識付けしました。後編では、試合に近い状況で、どのように実践していくのかを紹介していきます」
指導経験豊富な久保監督のコーチングは、簡潔でわかりやすい。子どもたちもポイントを意識しやすくなっており、それも上達の一因だろう。
トレーニングメニューに加えて、久保監督の声かけの内容にも、注目して聞いていただけたらと思う。
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【講師】久保秀太郎/
第39回全日本U-12サッカー選手権大会にコーチとして出場しベスト16に。
2017年、23年とジュニアサッカーワールドチャレンジ予選を勝ち抜きチームを本大会に導く。23年はベスト16。JA全農杯全国選抜小学生サッカー大会(チビリンピック)ベスト8。中島大嘉(名古屋グランパス)、菊井悠介(松本山雅)をジュニア時代に指導。
取材・文 鈴木智之