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ジュニア育成30年のベテランコーチから教わる!楽しみながら体と心の準備が出来るウォーミングアップ

サッカーの指導を学ぶことができる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、指導経験の浅いコーチに向けて、U-8~U-10年代を指導する際の参考になる動画を配信中だ。

前回より「子どもが楽しみながらボール扱いを身につけるウォーミングアップ」をテーマに、育成に携わって30年の信原正人コーチ(瀬戸FC)による、楽しみながら体を動かすことができるメニューを公開中。

信原コーチはU-8のクラスを担当し、トレセンでは技術指導を実施。出張スクール、園児教室、部活指導、地域スポーツクラブなどに携わるベテラン指導者による、わかりやすいコーチング、子どもたちがチャレンジしやすい雰囲気づくり、飽きさせないメニュー構成は、トレーニングの参考になること間違いなしだ。(文・鈴木智之)

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楽しみながら、ボール扱いを身につける

動画のテーマは「相手との駆け引きを磨く、ウォーミングアップ」。信原コーチはまず「コーンタッチドリブルゲーム」を実施。

設定としては、コーンを4mの位置に離れて置き、2人が向かい合ってスタンバイ。攻撃側がボールを足で扱い、ドリブルをしながら左右どちらかのコーンに手でタッチする。

守備側は先回りして、攻撃側より先にコーンにタッチすることを目指す(守備側が踏んだコーンには、攻撃側はタッチできない)。

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信原コーチは「攻撃側は顔を上げる、軸足リード、スピードの緩急、切り返しなど、ドリブルの技術が身につきます」と説明し、次のように続ける。

「守備側は相手をよく観察し、予測や駆け引き、ステップワークやアジリティなどの対応力が身につきます。スタートの方法を守備側からのパス&アプローチに変えると、ディフェンスの1対1の対応のトレーニングにもなります」

信原コーチは、子どもたちのプレーを観ながら「何を観なければいけない?相手の動きをよく観て。いつスピードを上げる?」と声をかけていく。

さらには「試合で相手に勝つためには、もう少し工夫したほうがいいよね」と問いかけ、考えてプレーするようにうながしていく。

「相手がどうなってるかを観ないと駄目だよね。攻撃側は相手選手がどこに立っているか、ついてきているかを観て、行けるときにさっと行けるといいよね」

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試合中は相手に遠慮せず、一瞬のチャンスを生かすことがポイントになる。そのためチャンスをうかがい、相手を観ながらドリブルしたい。ディフェンスはそれに対して、先回りをすることで、攻守の攻防がトレーニングできる。

ここからは「ディフェンスは3回相手の突破を阻止したら1ポイント」「攻撃側はコーンに触れたら1ポイント」というルールにチェンジ。

その後、スタートの仕方をサッカーに近づけて実施していく。ここでは、「守備側が攻撃側にパスをしてから1対1がスタート」というやり方に変え、守備側がボールの移動中に寄せに行くので、攻撃側はそのプレッシャーをいなして、左右のコーンに進むことにアプローチしていった。

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エリアや距離を変えることで難易度を調整

続いては「柔軟に難易度を調整できるウォーミングアップ」をテーマに「ボール宅配リレー」を行う。2グループで対抗戦を実施し、スタート地点から中継エリアを介して、ゴールまでボールをリレーする。

やり方としては(1)ハンドパス、(2)トスボレー、(3)ゴロの順番で実施(トスボレーとゴロはドリブルでゴールインする)。

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最初は手でボールを扱い、次の対決では手でボールを浮かして、足で蹴ってボールを渡す。最後は足を使い、グラウンダーのパスをするという流れだ。

このトレーニングでは、走ることと投げる・蹴ることが行われるので、体も十分に温まる。さらにはチームワークにも言及し「こっち向いて」「準備して」「いくよ」などの声をかけながら行うことの重要性も伝えていた。

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動作自体はシンプルだが、コースを作って競争形式にすることで、プレーに対する集中力が上がる。また、エリアの大きさや距離を変えることで、難易度を調整することができるので、子どもたちのレベルに合ったものにしやすいのもポイントだ。

信原コーチは「ボールが来るのを待っている人は、足踏みしながら準備をすることや声をかけること、仲間の位置を確認するために周りを観ることを意識しよう。その中でテクニックを出していこう」と説明。

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加えて「ボールを貰う時に横を向くと、ボールを受ける人と、次に出す人の両方を観ることができるよ」とアドバイスしていった。白熱する対決の様子は、ぜひ動画で確認してほしい。

以上でウォーミングアップは終了。信原コーチは次のように振り返った。

「今回は低学年の指導なので、遊びの要素があり、ルールがわかりやすく、ボールが蹴れて、勝敗があることを重視しました。遊びの中で自然と技術が身につけばいいなと思います。動画をご覧のみなさんも、いまされているメニューをアップデートし、どんな練習がいいかを、常に考えてみてください」

ウォーミングアップはトレーニングの取っ掛かりとして、心と体を温めるために重要な取り組みだ。子どもたち対象の場合、様々な工夫をこらして、楽しみながらプレーの準備に入りたい。今回のトレーニングは大いに参考になるだろう。

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【講師】信原正人/
JFA 公認 B 級ライセンス/キッズリーダー資格
小学校部活動のパパコーチとして指導者の道を歩み始める。
その中で指導者が子供に与える影響の大きさ(良くも悪くも)を知り、勉強を重ねライセンスを取得し地元のクラブチームに転職し本格的にプロコーチとしてのキャリアをスタートする。クラブ指導だけでなく、出張スクール、園児教室、部活指導、地域スポーツクラブ、トレセン活動などおよそ16年間、広く育成の現場に関わり続ける。地元サッカー協会の技術部長として市町トレセンの運営から県のトレセン事業までサポートし指導の幅と質の向上に努めながら若い指導者への情報発信や勉強の場を設ける活動も行う。
現在は瀬戸市を代表するクラブ「瀬戸フットボールクラブ」のアカデミーとスクールの両コーチとして活動。
30年近くの育成現場での経験を活かした指導で多くの選手を育てながらも、今尚、より子供たちが成長できる指導を追い求め続けている。