08.13.2024
南米での選手経験を持つコーチが実践! 激しい守備でボールを奪い、瞬時に攻撃を展開するためのトレーニング
サッカーの指導が学べる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、強豪チームや豊富な実績を持つ指導者による、トレーニング動画を配信中だ。
サッカーにおいて、攻守の切り替えは、試合の行方を左右する生命線だ。たとえ攻撃が失敗したとしても、チーム全体が即座に守備態勢に移行することで、相手の速攻を防ぐことができる。
また、そうすることで相手の攻撃を未然に防ぐだけでなく、自チームが再び攻撃に転じる機会を早期に作り出すことにつながる。
今回のCOACH UNITED ACADEMYでは、攻撃から守備への迅速な移行という、現代サッカーにおける不可欠な要素を高めるために、FC Kanaloa代表の須藤純矢コーチに「切り替え0秒のトランジショントレーニング」をテーマに、トレーニングを実施してもらった。
須藤コーチはアルゼンチンやウルグアイといった南米でのプレー経験があり、指導者としてはFC Kanaloaを率い、昨年度の日本クラブユース選手権U-15全国大会に出場。関東大会ではJクラブを撃破するなど躍進を見せた。
はたして、経験豊富な須藤コーチは、どのようなトレーニングで「攻撃から守備への切り替え」を向上させるのだろうか?(文・鈴木智之)
状況を判断し、即座に切り替えることが大切
トレーニングのテーマは「攻から守のトランジションで大切な、個の意識付けと基本戦術」。須藤コーチは「状況を判断し、即座に切り替えることが大切。選手たちの頭と体が自然と反応するようにコーチングしていきます」と話し、トレーニングがスタートした。
最初のトレーニングは「3対1 ボールポゼッション」。グリッドを3つ作り、2つのグリッドは3対1、1つは守備なしの3人でボールを回すエリアとする。
まずは「ボールを奪われた選手が、守備なしのエリアに入って守備役になる」というルールでスタート。攻撃側はアンダー3タッチ。パスを8本回されたら、守備の選手は守備なしのグリッドへ移動。もしくはボールを奪われた選手が、守備なしのエリアに入って守備役になる。
須藤コーチは「グリッド移動する守備役は、攻撃側の死角から入ってボールを奪う意識を持つこと」をデモンストレーション。
攻撃側には「いつ来るかわからないから、周りを常に観ておこう」「守備役にボールを取られたとしても、すぐに取り返せば継続できる」とアドバイス。
続いて「ボールを奪われた選手のひとつ前の選手が移動」というルールに変え、「みんなの頭が働いていないといけない」と声をかけていく。
ほかに「間違えてもいいので、守備側はできるだけ早く、空いているコートに行く」「観える選手が声をかけてあげよう」といったコーチングで、切り替えに意識を向けさせていく。
最後は「ボールを奪われた際、ボールに関わっていなかった選手が移動」というルールにチェンジ。その理由を「試合中、全員で取り返す意識を持つため」と説明し、攻撃側は最初はアンダー3タッチだったが、より難易度を高めるために、アンダー2タッチへと変えていった。
攻撃から守備へ、素早く転じる
2つ目のトレーニングは「1対1」。グリッドを縦半分に区切り、片方のサイドで1対1を行う。もう片方に攻撃の選手がボールを持ってスタンバイし、すぐに攻撃に移ることができるようにする。
コーチがプレーの状況を見て笛を吹くと、隣のグリッドの選手がドリブルで攻撃を開始。最初に攻撃だった選手が守備になる。ここで瞬時に攻撃と守備が入れ替わるイメージだ。
攻撃側から守備側になる選手は、なるべく早く相手との距離を詰め、相手をシュートを打てるエリアから遠ざけることがポイントだ。
須藤コーチは、相手に対して正面を向き、両足を揃えて守備をしていた選手に対し、「(その立ち方だと)横や背後に弱くなるので、斜めに向けて、ステップワークも意識しよう」とアドバイス。ディテールにもこだわっていく。
ファーストDFを素早く決める
前編最後のトレーニングは「2対2+GK」。攻撃側のボールでスタートし、守備側が手前のエリアでボールを奪ったら、コーチにパスをするか、相手のラインをドリブルで突破する。
攻撃側がグリッド中央付近でボールを奪われたら、守備側のスタート地点にあるラインを踏みに行ってから、戻る形でディフェンスをする。
ゴールを決めるか、守備側がボールを奪ったらプレー終了。攻撃側がすぐに守備側になり、次にスタンバイしていた選手が攻撃となり、プレーを続ける。
須藤コーチは、ボール保持者に対して、素早く寄せたプレーを称賛。「ファーストDFを素早く決めよう」とアドバイスし、そのためには「選手自らが意思表示すること」「GKが声をかけること」の重要性を伝え、GKを含めた3人で守ることを強調していた。
その後、「スタート時に攻撃側がパス交換をし、パスが繋がった本数に合わせて、ゴールを決めたら点数が加算される」というルールにチェンジ。守備側は、攻撃側がパスを回している間に素早く寄せ、インターセプトを狙っていく。
以上で前編のトレーニングは終了。南米での経験が豊富な須藤コーチらしく、デュエルを軸に、素早く攻守の切り替えにアプローチすることができるトレーニングだ。
認知・判断を含め、個人からグループでの守備へと、段階を経て学ぶことができるトレーニングなので、ぜひ「COACH UNITED ACADEMY」の動画を確認して、日々の活動の参考にしていただければと思う。
【講師】須藤純矢/
日本サッカー協会公認B級ライセンス保持。FC Kanaloa クラブ代表。川崎フロンターレU-18を退団後アルゼンチンの名門リーベルプレート4軍(U20)への留学を経て、ディフェンサイフスティッシア(アルゼンチン2部)に入団する。その後、アルビオンFC(ウルグアイ3部)でプレーし、帰国後は、YSCCでプレーする傍ら、サッカー指導者を始める。2010年に現役を引退し、指導者としてのキャリアを本格的にスタートする。2017年にジュニアユース設立、2019年に独立、カナロアサッカースクールを開校する。2023年日本クラブユース選手権U15関東大会では、横浜Fマリノス(関東1部首位)などJクラブを破り、5期生で全国大会出場、全国ベスト32に進出した。現在は、U13監督を務めながら、川崎市トレセンコーチ・神奈川県クラブジュニアユース連盟理事を務める。
取材・文 鈴木智之