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「指導者に必要なのは、プランニングする力」スモールサイドゲームとエコロジカルアプローチから学ぶ、トレーニング構築術

サッカーの指導が学べる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、強豪チームや豊富な実績を持つ指導者による、トレーニング動画を配信中だ。

COACH UNITED ACADEMYでは、前回より、育成年代での導入が推奨されているスモールサイドゲームについて、「サッカー スモールサイドゲーム研究 課題を制約主導アプローチで解決するためのトレーニングデザイン入門」などの著書を持つ、筑波大学サッカーコーチング論研究室所属の内藤清志氏による講義を公開中。

動画後編では、スモールサイドゲームから8人制につなげるためのポイント、練習メニューの構築の仕方について紹介したい。(文・鈴木智之)

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どこの局面を切り取っても、サッカーが存在しなければいけない

スモールサイドゲームは、2対2などの少人数からスタートし、4対4、5対5など、年代に応じて人数を増やし、コートを広げていく。プレーの機会を確保するとともに、段階を経てサッカーを複雑化させ、8人制や11人制につなげていくことが狙いだ。

内藤氏はスモールサイドゲームに対する考え方について、「戦術的ピリオタイゼーション理論」を例にあげ、次のように説明する。

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「サッカーはカオスでありフラクタルであるという言葉がありますが、フラクタル図形とは、三角形の中に小さな三角形があり、その中にまた小さな三角形があって...というように、どこを切り取っても三角形だという考え方です。つまりサッカーのトレーニングも同じで、どこの局面を切り取っても、サッカーというものが存在しなければいけないと考えています」

これをスモールサイドゲームに当てはめると、少人数の中にゲーム要素があり、味方がいて相手がいて、判断を伴うものだと言い換えることができる。これらは11人制や8人制に通じる、フラクタルな部分だ。

この考えは、近年、注目されている「エコロジカルアプローチ」に通じる部分がある。

エコロジカルアプローチとは、「さまざまな制約を工夫することで、選手が自然と望ましい行動を取るように導く」という考え方で、具体的にはコートサイズや使うボール、人数、ルールなど、環境に伴う制約を加えることで、学習を促進させるという指導方法だ。

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たとえば、パス&コントロールやドリブルのドリルトレーニングなどにおいて、相手を取り除いてコーンなどを使いプレーの実行の質を重視するトレーニングは、エコロジカルアプローチでは「タスク分解」に位置される。

ドリブルやパスといったタスクを切り出し、分解して、その動作を繰り返し行うトレーニングと捉えると、わかりやすいだろう。

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タスクを単純化する

エコロジカルアプローチはタスク分解ではなく、「タスクの単純化」を通じて技術を高め、試合で発揮できるように導いていく。

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たとえば「ファーストタッチを向上させたい」という目的がある場合、タスク分解だと、プレーを切り取り、「パスの受け手の前にコーンを置いて、ファーストタッチでかわしてシュート」といったトレーニングを行うことが一般的だ。

しかし、エコロジカルアプローチにおける「タスクの単純化」の場合、サッカーからは切り離さずにトレーニングを行う。

「ファーストタッチの向上を目的に、トレーニングをするのであれば、サッカーの特性である、味方がいて相手がいて、自分がいるという環境は変えず、『ファーストタッチ』というタスクを単純化させることを考えます」

内藤氏は、次のように例をあげる。

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「例えばフリーマンを入れてみます。攻撃側の人数を増やすことで、守備側は狙いが定めづらくなります。その結果、ファースタッチをするときに、守備が近くにいる確率は下がるので、ファーストタッチの負荷は減ります」

状況によっては、守備者が近くにいることもあるだろう。プレッシャーは軽減されるが、皆無ではない。このように実際のサッカーの状況に近い形で、トレーニングをするのが「タスクの単純化」といえる。

指導者に求められる、プランニングする力

一方でゲーム形式には、デメリットもある。それは「狙った現象が、必ずしも頻繁に起きるとは限らないこと」だ。

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その場合は「ドリル系のトレーニングや、グリッドでのトレーニング、ワンウェイのトレーニングなどを組み合わせて調節することが求められます。その意味では『プランニングする力』が、指導者に求められるものではないでしょうか」と補足する。

COACH UNITED ACADEMY動画では、「一人称の練習」「二人称の練習」「三人称の練習」など、自分とボールから始まり、味方とプレーを共有することや、周囲の動きに合わせて判断することなど、戦術的な思考力を高めるための考え方についても紹介。

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トレーニングを組み立てるうえで、非常に参考になる動画になっているので、スモールサイドゲームを入口に、トレーニングの考え方やプランニングの勉強になること間違いなしだ。

ぜひ繰り返し「COACH UNITED ACADEMY」の動画を見て、トレーニングの質、向上に役立てていただければと思う。

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【講師】内藤清志/
筑波大学を卒業後、同大学大学院に進学。それと同時に指導者を志し、筑波大学蹴球部でヘッドコーチなどを長く歴任。谷口彰悟や車屋紳太郎など日本代表選手を指導。その後、サッカースクール・ジュニアユース年代の指導を経験した後、現在は筑波大学大学院に戻り自身が所属するサッカーコーチング論研究室の研究活動の傍ら、サッカーの強化・育成・普及活動を行う。