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オスグッドの選手がゼロ!?動きの質向上で選手の怪我のリスクを軽減する方法

スポーツ界で頭を悩ませる問題の一つが、育成年代の選手の怪我だ。特に、オスグッド病やシーバー病といった成長期特有の傷害は、トレーニングを積むべき時期に起きやすく、成長という観点からも見過ごすことのできないものになっている。

そこで「COACH UNITED ACADEMY」では、ヴァンフォーレ甲府のフィットネス・ダイレクターとして活動し、トッププロからジュニア年代の選手までの指導を行う、谷真一郎氏に「動きの質を高めて、育成年代の怪我のリスクを軽減する」をテーマに、怪我の発生原因とリスクの軽減方法について説明してもらった。

前編のテーマは「オスグッド病など、代表的なスポーツ障害のリスク軽減」。育成年代の選手によくある怪我を知ることで、予防に務めることができるようになるだろう。(文・鈴木智之)

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動きの質を高めることで怪我を減らす

谷コーチが活動のテーマにしているのが「動きの質を高める」ことだ。これにより、サッカーのパフォーマンス向上とともに、怪我のリスクを軽減することができるという。

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実際、谷コーチがダイレクターを務める、ヴァンフォーレ甲府のアカデミーでは、育成年代によくある怪我をする選手が「ゼロ人」だという。

「昨日時点でコーチに確認したところ、膝下、かかと、股関節周囲、筋肉系のトラブルといった症状を抱えている人はゼロでした。『ゼロなんてあり得ない』と言われますが、本当にいないのです。動きの質を高めるトレーニングに取り組むことで、怪我のリスクを減らすことができます。これを今回のメインメッセージとしてお伝えしたいです」

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育成年代に多く見られる代表的な障害。それが、膝下のオスグッド病、かかとのシーバー病、股関節周囲のそけい部の痛み、足の外側の疲労骨折などだ。

谷コーチは「これらの怪我のリスクを減らすには、メディカル的な観点も必要です」と前置きをした上で「アライメントの問題や柔軟性の問題といった側面もありますが、今回は動きの質にフォーカスし、それを高めることで怪我のリスクを軽減する方法に焦点を当てて進めていきます」と話す。

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オスグッド病のリスク軽減

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オスグッド病は、膝下に痛みが出る症状で、大腿四頭筋の過剰な収縮が主な原因だという。特に問題となるのが「ボールを持つ相手に接近して急停止する際の動作」だ。

従来の指導では、相手に接近する際に「腰を落とし、重心を低くする」という考え方が一般的だ。しかし、その方法だと「大腿四頭筋が常に収縮した状態になり、炎症を起こしやすくなります」と指摘する。

「横から何かがぶつかってくる際には、この姿勢で耐えられますが、素早く動き出そうとする時には、低い姿勢は非常に動きづらいです」

代わりに提案するのが、やや高めの重心位置だ。「その姿勢なら、どの方向にも素早く動き出せます。大腿四頭筋の収縮も弱くなり、負担が減ります」

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動画では、止まる際やターンする際は、つま先を正面に向けるのではなく、半身の姿勢をとることをデモンストレーション。

「下半身を半身にして、母指球とかかとを感じながら接地する」「半身の姿勢で動きやすい重心の高さにすると、前後左右への動きがスムーズになる」といった動作を実演しているので、ぜひ「COACH UNITED ACADEMY」の動画を見て理論を学んでほしい。

科学的根拠に基づいたアプローチを紹介

動画内では、かかとの痛みで知られるシーバー病についても言及。詳細は動画に譲るが、「ブレーキをかけず、前に進む力を得る方法を身につける」といった観点から、デモンストレーションを交えて説明している。

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ほかに「かかとに負担がかからない接地の仕方」「足に負担がかからないキック動作」「トレーニングシューズ使用のすすめ」や、グローインペインやジョーンズ骨折についてなど、多角的な視点でアドバイスしている。

育成年代の選手たちの怪我を予防するには、昔からの指導法や理論に頼るのではなく、科学的な根拠に基づいたアプローチが必要だ。

その意味で、谷コーチの説明はわかりやすく、実践しやすいものになっている。

育成年代の選手を預かる指導者にとって、知っておくべき事例が詰まっているので、ぜひ「COACH UNITED ACADEMY」で動画を視聴して、選手たちの健全な成長に役立てていただければと思う。

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【講師】谷真一郎/
柏レイソル、ベガルタ仙台、横浜FC、ヴァンフォーレ甲府とJリーグのアカデミーからトップまで約30年にわたりフィジカルコーチを歴任。パフォーマンスアップとケガ予防(コンディショニング)の観点から、育成年代のグラスルーツから日本代表クラスまで「動きの質」の改善をテーマに多くの選手を指導してきた。