12.05.2024
子供達にレベル差があって日々の練習に悩むビギナーコーチ必見!ベテラン指導者が教えるトレーニング構築法
サッカーの指導を学ぶことができる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、指導経験の浅いコーチに向けて、U-8~U-10年代を指導する際の参考になる動画を配信中だ。
今回のテーマは「子ども達にレベル差があっても取り組める、ボールを保持するパス回し」。とくにU-8~U-10年代の子どもを指導する上で、レベルの差に悩むビギナーコーチは少なくない。
そこで今回から、指導歴25年を超え、多くのJリーガーを輩出するALA裾野代表の杉山心持氏に、レベル差があってもできるトレーニングを実施してもらった。
ベテラン指導者が作り出す雰囲気、わかりやすいコーチングは、指導の参考になること間違いなしだ。(文・鈴木智之)
グリッドを分けてレベルの近い同士でパス&コントロールを行う
最初の動画テーマは「レベル差でグリッドを分けたパス&コントロール」。ここでは、対面の選手から来たボールを止めて、相手に返す動きを繰り返す。
杉山コーチは「どこに止めたら蹴りやすいか。蹴った後、どう足を運んだら走りやすいかを考えてやろう」と声をかけ、トレーニングがスタートした。
選手たちのプレーを見ながら「力を抜いて、顔を下げない」「どんどんボールを呼んでみよう」「試合中、黙ってやるかな?」などのわかりやすい声掛けで、選手たちを導いていく。
続いて「ファーストタッチを正面ではなく、斜め前に止めてパスをする」ことにトライ。できないことにフォーカスするのではなく「一回で止められなかったら、ボールを持ち直していいよ」などの声かけを通じて、チャレンジする雰囲気を作り出していた。
ほかに「力を抜いた状態でボールを受ける」「自信がない時はボールを見て、しっかり足に当てる」「相手がコントロールしやすいパスを送る」といったベーシックなことを、わかりやすくアドバイス。このあたりのコーチングも参考にしてほしい。
次は四角形の位置関係に立ち、ボールを循環していく。ある程度、できる選手には、ボールの移動中に、他の選手の状況を見ることをアドバイス。慣れてきたら、コントロールからパスまでのスピードを上げるなど、レベルに応じて要求の内容を変えていった。
続いて「どの選手にパスを出しても良く、出した選手のところに走る」というルールに変更し、最後は来たボールに対して、ワンタッチでパスを出すことにチャレンジ。
ここでは「パスをワンタッチで蹴ると同時に、ボールと一緒に前に出る」ことをデモンストレーション。身振り手振りを使って、わかりやすく伝えていた。
それぞれのレベルに合ったオーガナイズと要求を行う
続いての動画テーマは「ボールを奪われないボール回しの基本」。杉山コーチは「力の差を考慮して、同じレベルでトレーニングできるようにグループ分けをします。そこで課題を見つけ、グリッドやルールを変えることで、テーマに沿ったことを伝えていきます」と説明。
トレーニングは「4対1」を実施。グリッドの外に立ち、アンダー2タッチでボールを保持していく。守備の選手はボールに触るか、15もしくは20本パスを通されたら交代。「20本以内に触れたらすごい。スーパーディフェンダー!」など、選手のテンションを上げる声掛けで、雰囲気を盛り上げていく。
ここでは、パスを受けるときに、ボールと味方、空間、敵のすべてを見られる体の向きを作ることをデモンストレーション。大切なことは手本を見せて、子どもたちに印象付けていく。
続いてはグリッドの外ではなく、中で4対1を実施。プレーエリアを狭くし、徐々に難易度を上げていく。
杉山コーチは「目的はボールを取られないこと。そのために敵をしっかり観る。敵が嫌なのは、近寄ってきたときにパスを出されること」と説明し、技術に加えて判断にもアプローチしていった。
上手くできるチームには「パスを出した後に、立ち位置を移動すること」とアドバイス。さらに、できるチームは2タッチ、できないチームは3タッチと難易度を調整し、守備はボールを奪ったら、グリッドの外にドリブルで出る。それに対し、外の選手は自分のいるエリアを突破されないように奪い返すなど、実際の試合に近づけていった。
以上で前編のトレーニングは終了。動画を参考に、トレーニングメニューに加えて、杉山コーチの声掛けの雰囲気、子どもたちが伸び伸びできるような空間づくりの重要性を感じていただければと思う。
【講師】杉山 心持/
20才から沼津セントラルスポーツクラブ(現在のJ3アスルクラロ沼津)で指導者としてスタート。
アスルクラロ沼津で幼児から中学生までの普及育成を積み上げ、ジュニア・ジュニアユース(当時のジュビロ沼津)年代を静岡県内でもトップレベルに築き上げる。
特にジュニアユース年代では2024年現在、J2ブラウブリッツ秋田監督の吉田謙氏と共に全国大会常連のクラブへと育て上げ、数々の年代別日本代表並びにJリーガーを輩出。
アスルクラロ沼津では、ジュニア・ガールズ・ジュニアユース・TOPチームなど幅広いカテゴリーを指導。
2015年より、自ら静岡県裾野市にてジュニア年代の育成クラブを設立。
一からスクール生を育て上げ、チーム登録初年度で裾野市から静岡県大会へ出場できるチームへと育成。
現在は、スクール活動の傍ら現役Jリーガーのマネジメント及びスカウティングも行っている。
【保有ライセンス】
JFA公認A級ジェネラルコーチングライセンス
取材・文 鈴木智之