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低学年担当のビギナーコーチ必見!レベル差がある子供達に共通のトレーニングを行う為に必要なコーチング法

サッカーの指導を学ぶことができる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、指導経験の浅いコーチに向けて、U-8~U-10年代を指導する際の参考になる動画を配信中だ。

前回より「子ども達にレベル差があっても取り組める、ボールを保持するパス回し」をテーマに、指導歴25年を超え、多くのJリーガーを輩出する、ALA裾野代表の杉山心持氏によるトレーニングを公開している。

今回は実戦形式のトレーニングを通じて、「できる子、できない子がいる中で、仲間同士でサポートし合う」「仲間のエラーを助ける、仲間を活かせられるようにプレーする」といった部分にアプローチしていく。

U-8~U-10年代の子どもを指導する際に、レベル差に悩むビギナーコーチにとって、非常に参考になるトレーニングだ。(文・鈴木智之)

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成功体験を増やし自信をつける!パス回しで仲間と協力する事を学ぶ

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最初の動画テーマは「プレーの連続性が重要なパス回し」。トレーニングは「4対2(2+2対2)」を行う。ここではレベル差によってグループを分け、できる子のグリッドは狭く、そうでない子のグリッドは広くし、難易度を調整していく。

杉山コーチは「大事なのはボールを取られた後に、すぐに奪い返しに行くこと」とアドバイス。また、レベル的に低いチームは、ボールに対して全員が近寄る傾向にある。するとスペースがなくなるので、攻撃が停滞するとともに、守備側は守りやすくなる。

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そこで「まずは敵の位置を観ること。自分のプレーする空間があるか。そして仲間の位置を考えて、ボールを失わないための選択肢を持つこと」をポイントに挙げた。

杉山コーチが発する、わかりやすいコーチング、子どもたちにプレッシャーをかけない声掛けの仕方は、非常に参考になる。その様子はぜひ動画で確認してほしい。

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チームスポーツを理解させる、ベテランコーチのコーチング法

続いての動画は「レベル差関係なくゲームを行う」をテーマに「4対4+2フリーマン+2GK」を実施。ここでは「攻撃時にフリーマンとGKを使い、ボールを失わずにゴールに向かう」「味方はボールを受けられるポジションをとること」をキーファクターに設定。

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動画前編から続く、最後のトレーニングなので、レベル差によるグループ分けは行わずに実施。その狙いを、杉山コーチは次のように明かす。

「できる子、できない子がいる中で、仲間同士でサポートし合うこと。仲間のエラーを助ける、仲間を活かせられるようにと考えて、ゲームに取り組みます」

動画では開始30秒でGKからのビルドアップを妨害され、ボールを失って2失点。チームの雰囲気が悪くなるところだが、杉山コーチは素早くプレーを止め、「優先順位は相手ゴール」「GKは遠くを観るようにしよう」とアドバイス。

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そうすることで、相手は前からプレスに来るのではなく、一旦下がって守ろうとするので、GKの近辺にスペースができる。そこを使ってビルドアップすればいい。

このメカニズムをていねいに説明することで、次のプレーからはビルドアップを起点とした、良い攻撃ができ始めていた。

ほかに「ボールを持ったときは、(GKを含めて)3人のフリーマンがいる。周りの人は動いてパスコースを作ろう」と、ポジショニングに関するアドバイスも実施。

また、レベル差に関係なくチームを作っているので、プレーが上手く行かないこともある。

杉山コーチは「そこを改善していかないとチームは強くならない。仲間の失敗を助けるのは仲間。言葉で味方を責めている人がいるけど、彼がパスを出せる状況を作ってあげるなどして、違う言葉や形でサポートしてあげよう」と諭していく。

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これは、チームスポーツであるサッカーにおいて、とくに必要な考え方である。サッカーを始めたばかりの子どもたちを教える指導者にとっては、見過ごすことなく、アプローチしたい場面だ。その様子はぜひ動画で確認してほしい。

以上でトレーニングは終了。杉山コーチは次のように振り返った。

「仲間のサポート無くして、ボール回しの成功回数は上がりません。だからこそ、スキルばかりに特化するのではなく、そのスキルを活かせるオフ・ザ・ボールのポジショニング(手の立ち位置や体の準備など)も併せて指導します」

トレーニングの工夫については、「同じメニューの中で同レベルに近いグループを形成しました。オーガナイズやルールを変更することで、なるべくストレスをかけずに成功回数を増やせるよう設定し、各グループにおいてコーチングにも変化を与えました」と説明。

「子ども達の成功回数(パスの成功率)が上がってきたら、ルールを変更するなどして、少しずつ強度を上げられるよう工夫してみましょう。いきなり強度を上げすぎると成功回数が減り、自信喪失につながる可能性もあります」

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動画の最後にはこれらのアドバイスとともに、「プレーのエラーではなく、言動のエラーはプレーを止めてでも説明することが大切」などの金言が収録されている。ぜひ動画を見て、トレーニングの雰囲気づくり、声掛けの内容に耳を傾けて欲しい。

指導のレベルアップにつながる、たくさんの発見があるはずだ。

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【講師】杉山 心持/
20才から沼津セントラルスポーツクラブ(現在のJ3アスルクラロ沼津)で指導者としてスタート。
アスルクラロ沼津で幼児から中学生までの普及育成を積み上げ、ジュニア・ジュニアユース(当時のジュビロ沼津)年代を静岡県内でもトップレベルに築き上げる。
特にジュニアユース年代では2024年現在、J2ブラウブリッツ秋田監督の吉田謙氏と共に全国大会常連のクラブへと育て上げ、数々の年代別日本代表並びにJリーガーを輩出。
アスルクラロ沼津では、ジュニア・ガールズ・ジュニアユース・TOPチームなど幅広いカテゴリーを指導。
2015年より、自ら静岡県裾野市にてジュニア年代の育成クラブを設立。
一からスクール生を育て上げ、チーム登録初年度で裾野市から静岡県大会へ出場できるチームへと育成。
現在は、スクール活動の傍ら現役Jリーガーのマネジメント及びスカウティングも行っている。
【保有ライセンス】
JFA公認A級ジェネラルコーチングライセンス