02.28.2025
「たくさんインプットして、自分なりの形でアウトプットする」。サッカー指導を追求する、加藤到コーチが語る、指導者としての成長プロセス
サッカーの指導が学べる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、強豪チームや豊富な実績を持つ指導者によるトレーニング動画、指導していく中で必見な理論や情報を配信中だ。
COACH UNITED ACADEMYに出演してくれた指導者による「サッカー指導を学ぶ」をテーマにしたインタビュー。第2回に登場してくれたのは、SC豊橋アゼリア(社会人チーム)ヘッドコーチ兼GMの加藤到氏だ。
加藤氏は高等学校の教諭、サッカー部コーチを経て、現在は現役Jリーガーの個人分析官、プロサッカーコーチとして活動。現在ITARU METHOD FOOTBALL 代表を務めるほか、サッカー指導者塾などを通じて、選手と指導者のレベルアップに取り組んでいる。
数多くのチームや選手の指導に携わり、独自の視点からサポートを行う加藤氏に、指導者としての歩み、そして日々の指導における考え方、学び方について話を聞いた。(文・鈴木智之)
教育実習がきっかけで指導者に
加藤氏は大学まで選手としてプレーし、東海リーグを戦うチームに所属していた。当初は社会人として働きながら、選手を続けることも視野に入れていたという。
「大学時代は卒業後もサッカーを続けてたいと思っていたので、東海リーグのチームに所属しながら、仕事に就くイメージを持っていました。ただ、大学は教員免許が取れる環境だったので、それならばと取得を目指して勉強しました」
教育実習で訪れた高校での経験が、その後の人生を変えることになる。
「教育実習先のサッカー部は、自分が所属していたチームとは全く違うアプローチをしていました。そこで新しい指導の形に触れ、もっと勉強したいという思いが生まれました。高校時代、インターハイには出たのですが、選手権予選で負けてしまった経験があって、いつか母校を全国大会に連れて行きたいという思いもありました」
その後、教員として働きながら部活動の顧問も務めていた加藤氏だが、大きな転機が訪れる。それは、JFA公認A級ジェネラルライセンスの取得前後の時期だった。
「地域の指導者講習会で、講師を務める機会があったんです。それまでは参加者として勉強する立場だったのですが、講師として指導者の方々と関わる中で、私のやってきたことでも、悩みを抱えている方の役に立てることがあるんだと気づきました。その経験が、教員を辞めて、サッカー指導者として活動していく大きなきっかけになりました」
目的を明確にした指導

現在はプロのサッカーコーチとして活動する加藤氏。指導をする上で、サッカーに対する学びは不可欠だ。高校サッカー部で指導を始めた当初は「本を読んだり、トレーニングを見学させてもらったりして、インプットを増やしていました」と振り返る。
「朝早く起きて、30分でも、15分でも、サッカーに触れる時間を作るようにしていました。いまはJリーグもよく観ますが、当時は空き時間をみつけては、海外サッカーを観て、トレーニングを考えていました」と振り返る。
トレーニング計画については「最初の頃は、自分が選手として経験したメニューをベースに考えていました」と話す。
「本で見つけたものや、映像で見たトレーニングをコピーすることも多かったです。恥ずかしい話ですが、明確なテーマを持つというよりは、『このトレーニングが面白そうだな』という感覚で選んでいました。何のためにそのトレーニングをするのかというよりも、いかに選手が楽しくプレーできるかしか、考えていなかったかもしれません」
そこから経験を積み、現在はより目的を明確にした指導を心がけているという。
「今はまず目的があって、その目的のために何をすべきかを考えています。根本にあるのは『選手が生き生きとプレーすること』です。そこに『なぜそのトレーニングを行うのか』『何を身につけさせたいのか』という明確な目的を加えた形で、トレーニングを組み立てています」
コピーや真似から始めてもいい
加藤氏も登場するCOACH UNITED ACADEMYには、様々な指導者によるトレーニングが収録されている。加藤氏は自身の経験を振り返りながら、動画での学習の意義を語る。
「指導者として学び始めた頃、色々な方のトレーニングを見る機会があったらいいなと思っていました。単にメニューを知るだけでなく、何を伝えようとしているのか、どんなポイントを大切にしているのかが分かると、より学びが深まりますよね」
さらに、こう続ける。
「最初はコピーや真似から始めてもいいと思います。私自身、多くの指導者の方々のトレーニングを見て、真似することから始めました。その中でしっくりくるものを取り入れ、『自分はこう思う』という要素を加えていきました。サッカーの指導に正解はないと思うんです。大切なのは、いかに多くのものをインプットして、それを自分なりの形でアウトプットしていけるかだと思います」
指導者の思考を整理する独自のメソッド
加藤氏は、独自のメソッドを通じて、指導者のサポートも行っている。「私のメソッドは、単にトレーニングメニューを提供するのではなく、指導者の方々の考えを整理していくことに重点を置いています」と語る。
具体的なアプローチについて、加藤氏は次のように説明する。
「トレーニングをどのように考えているのか、チームのコンセプトをどう作り上げていくのか、プレーモデルという形でチームの設計図をどう描いていくのか。これらを一つ一つ整理していきます。例えば、チーム内での共通言語を作る過程で、自然と考えが整理されていきます。私はそのお手伝いをさせていただくようなイメージです」
COACH UNITED ACADEMYには、加藤氏のトレーニングも収録されている。興味のある方は、ぜひ動画を見てほしい。新たな考え方のヒントや、指導者として成長するために必要なものがみつかるはずだ。
取材・文 鈴木智之