08.12.2025
得点パターンを増やす! 中央やサイドで有効な、コンビネーションを使った攻撃トレーニング
サッカーの指導が学べる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、強豪チームや豊富な実績を持つ指導者によるトレーニング動画や、指導していく中で必見な理論や情報を配信中だ。
今回のテーマは「得点パターンを増やすトレーニング」。サッカーにおいて多彩な攻撃パターンを持つことは、相手の守備を崩すための重要な要素である。なかでも、自分がどこのエリアでプレーしているかを理解し、そのエリアに応じた最適なプレーを選択するための基準は持っておきたい。
そこで今回は、愛知県で活動するSC豊橋アゼリアのGM兼ヘッドコーチ、加藤到氏によるトレーニングを紹介したい。加藤氏は公立教員として指導をはじめ、愛知県国体選抜チームや愛知県トレセンU-15の監督を歴任し、現在は愛知県社会人リーグに所属するSC豊橋アゼリアのヘッドコーチを務める、実績豊富な指導者だ。
SC豊橋アゼリアではどのようなトレーニング、コーチングをもとに、多様な得点パターンを身につけていくのだろうか?(文・鈴木智之)
味方がプレーを選べるようにボールを落とす
COACH UNITED ACADEMY動画、前編のテーマは「ZONE3の中央やサイドで有効な、コンビネーションを使った攻撃方法」。そのスタートとなるのが「2人組の突破」トレーニングだ。
このトレーニングではコーンを相手選手に見立て、斜め後ろからのパスに反応し、「ワンタッチでラインを通過すること」を目指す。加藤コーチは「一瞬でマークを外して」「自分がコントロールできる範囲で」と、動き出しのメリハリとボールコントロールの重要性を強調していった。
続いて、「落とし」のパターンを導入。ここで加藤コーチが重視したのは「味方がプレーを選べるようにボールを落とす」という考え方だ。動画では具体的なパスコースを示しながら、受け手が次のプレーを選択できる場所へ正確にパスをすることの重要性を指導しているので、詳細は「COACH UNITED ACADEMY」で映像を確認してほしい。

状況に応じたプレー選択のバリエーションを提示
次に、パスを出した後に、受け手の背後を周り、クロスオーバーで突破する形にトライ。ここではパスかドリブルかの2択の中で、パスの受け手が選んでいくのだが、加藤コーチは動きのディテールを細かく指導。スイッチの形をデモンストレーションし、ドリブルとの使い分けをうながしていく。
基本的な2人組の連携を確認した後は、ディフェンダーを1人配置して対人練習に移行。より実戦に近い状況設定で行っていく。
ここで加藤コーチが強調したのは「パスを受けて前を向くこと」「そのためのボールを受ける際の身体の向き」。相手が食いついてきたら、背後でボールを受けるなど、状況に応じたプレー選択のバリエーションを提示していく。
攻撃のスイッチを共有する
トレーニングは段階的に人数を増やし、「中央エリアでの3対2+GK」へと発展。加藤コーチは「ボールを持っている選手は、どこの相手を崩しに行くのか」と話すとともに、前線の選手に対して、「ボール保持者が前を向いてフリーだったら、前線の選手はアクションを起こす」「ゴール前ではワンタッチでシュートを打つ選択肢を持つ」という思考の重要性を強調していった。
続いて守備を同数にし、「3対3+GK」を実施。加藤コーチは「攻撃の選手は、まずはゴールから狙おう」「前にアクションを起こそう」と声をかけ、パスが受けられなくても、動きを止めずに継続してアクションを起こすことの大切さを説いていく。
前編最後のトレーニングは「ハーフレーン3対2+GK」。加藤コーチは「中央からの攻撃と、ハーフレーンというアウトサイドと中央の間のレーンがある。ここを取ると相手は困る」と、ハーフレーンの戦術的な価値について説明。
「そこにパスを出した瞬間、攻撃がスタートする。縦パスがライン間に通った、これが攻撃のスイッチ」として、攻撃の起点となるパスのタイミングを明示していた。
ほかに「誰が出てきて、どこにスペースができるのか」と、攻撃の選手がアクションを起こすことで、守備の選手を引き付け、どこにスペースが空くのかを理解することも強調していった。
以上で前編のトレーニングは終了。今回の動画は加藤コーチのわかりやすいコーチングとデモンストレーション、フォーカスするポイントなど、非常に簡潔で理解しやすいものになっている。
その他に、段階的なトレーニング設計、実戦を想定したシチュエーション作りなど、多くのポイントに目を凝らし、指導の参考にしていただければと思う。
【講師】加藤到/
愛知県名古屋市出身。大学卒業後公立高校教諭を経て、現在へ。「ITARU METHODFOOTBALL」 代表(著書「ITARUメソッドの教科書」)、社会人チーム「SC豊橋アゼリア」ヘッドコーチ兼GM、サッカー指導者勉強塾「蹴到ラボ」代表をしている。海外でのプロジェクトも着々と進めており、台湾「EC.DESAFIO TAIPEI」のコーチデベロッパーとして約2ヶ月に1度台湾に赴き現地の選手・コーチたちとチームの強化に当たっている。また指導者講習会やクリニックを展開して指導者養成・選手育成に力を注いでいる。ネパールやウガンダのサッカーアカデミーのコーチとしても活動をしている。JFA公認A級ジェネラルライセンスを所持。
取材・文 鈴木智之