08.21.2025
体が小さくてもフィジカルで潰されないボールの持ち方!スペースを有効活用する事でドリブルが武器になる!
サッカーの指導を学ぶことができる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、指導経験の浅いコーチに向けて、U-8年代を指導する際の参考になる動画を配信中だ。
前回より、育成に定評のある、エルマルカサッカースクール代表の山本雅史氏による「足が遅くても、身体が小さくてもドリブルが武器になる練習法」を公開中だ。
サッカーを始めたばかりの年代だと、体格差や運動能力差が大きく、思うようにドリブルができない子が多く見受けられる。
前編では「運ぶ」「眺める」「突破」のドリブルをテーマに指導し、子どもたちにベースを体験させた山本コーチ。後編では相手との駆け引きや状況を見て、味方との関係性の中でのドリブルにチャレンジしていく。(文・鈴木智之)
相手の足を止めるボールの持ち方とスペースの活用法
最初の動画テーマは「相手と正対・逆を取るドリブル」。山本コーチは「U-8では要求が多すぎるとフリーズしてしまうので、徐々に要求を増やしていきます」と説明し、トレーニングを開始した。
トレーニングで行うのは「1対1」。じゃんけんで攻守を決め、勝ったほうが攻撃、負けたほうが守備を担当する。最初にコーチがデモンストレーションをし、どう動くかを説明。
さらに「自分がコントロールできる距離にボールがあるのがドリブル」と、ドリブルの概念をわかりやすく伝えていく。このあたりの丁寧さも、U-8を指導する上で意識したいポイントだ。
トレーニングの流れとしては、コーチからのパスを攻撃側が受けてプレーがスタート。前方か横にあるゲートに対して、ドリブル通過を目指す。守備側はボールを奪い、相手に取られないようにスクリーンでキープする。
山本コーチが強調したのは「ランインザボール」というプレー。「ボールをもらったら、まずボールと一緒に走る」とデモンストレーション。そこで相手が進行方向に入ってきたら、コースを変えるドリブルに移行していく。
続いて山本コーチは「ファーストコントロールのボールの置所」を指導。加えて「体が小さい子は、フィジカルで押されたらバランスを崩してしまう。だから、相手に対して背中を向けないで、おへそを向けながらドリブルすることが大切」と、身体の向きの重要性を丁寧に説明していった。

ドリブルを活かす為の仲間の関わり方と相手との駆け引き
次の動画テーマは「味方のドリブルを活かすオフザボール」。2対2のトレーニングを通じて、ボール保持者のドリブルアクションに加えて、ボールを持っていない選手がどう動けばいいかにアプローチしていく。
設定としては、相手の背後にあるマーカー間をドリブルで通過すれば勝ちとなる。
山本コーチはデモンストレーションを行いながら、「ボールを持っていない味方は、どこにいればいい?」と問いかける。
「(ボール保持者から)離れることでディフェンスの間にスペースができる。そこでパスを受けられれば、ランインザボールでドリブルができる」「もう1つは、味方から離れることで自分にマークがついてくるので、ボールを持っている選手が1対1の場面を作ることができる」と、オフザボールの動きの意味を分かりやすく説明していく。
また、むやみにドリブルで相手に仕掛けるのではなく、まずはスペースに運び、状況に変化を起こすこともポイントだ。
山本コーチは「人に対してドリブルして横に逃げると、追いかけられてしまう。だから、まずは広いスペースに運びましょう」「眺めるドリブルをして、相手が寄せてきたら味方にパスをする」という指導は、U-8年代でも理解しやすい説明となっている。
発展的な動きとして「オーバーラップ」を導入。「ボール保持者の後ろを回る動き」を実演し、「パスを出すフリをしてドリブル」という選択肢も示していった。
山本コーチは常に「なぜそうするのか」を子どもたちに考えさせながら、段階的に難易度を上げていく。「できそうだったらやってみよう」「無理だったらやり直してもいい」といった声かけで、失敗を恐れずチャレンジできる環境を作り出していた。
今回の動画では、1対1から2対2へと段階的に発展させながら、実戦で必要な技術と判断力を身につける方法が紹介されている。
山本コーチの指導で特筆すべきは、複雑な動作を理解させるため、わかりやすい言葉とプレーでデモンストレーションをするところだ。U-8年代の子たちは言葉ではなく、動作の方が理解しやすいので効果的だ。
また「意図的にアクションを起こしたことについて、成功・失敗にかかわらず褒める」といったコーチングの姿勢も参考になるだろう。
ビギナーコーチの方々は、ぜひこの段階的な指導法と、子どもの理解度に合わせた声かけを参考に、指導力向上に活かしていただければと思う。
【講師】山本雅史/
埼玉スタジアム2002サッカースクールで長年指導し、専門学校講師やスポーツ幼児園コンサルタントなどを経験。各年代の監督・ヘッドコーチを歴任し、現在は、///自己肯定感を高める///をコンセプトとした【エルマルカサッカースクール】の代表、///完璧より前進する蹴球///をコンセプトとした【FCマルカラボ】の総監督兼育成アドバイザーとして活動している。
→2023年度U-17サッカー 日本代表1名輩出
また(一社)日本凸凹支援スポーツ協会の代表理事として、障がい児たちにスポーツ療育『ジャッジをしない個育て』の普及も行なっている。
取材・文 鈴木智之