10.27.2025
守備から攻撃のトランジションにおいてチームメイトを助ける正しいサポートの「認知」/スペイン発のエコノメソッドで学ぶ
サッカーの指導が学べる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、強豪チームや豊富な実績を持つ指導者によるトレーニング動画や、指導していく中で必見な理論や情報を配信中だ。
前回より「賢い選手の育成」でおなじみエコノメソッドを採用する、アメージングアカデミー山梨のトレーニングメソッドを公開中。
今回は、チームとしてボールを前進させるために必要な「サポート」を高めるトレーニングを紹介したい。
トレーニングを実施してくれたのが、アメージングアカデミー山梨でコーチを務める、渡辺将平氏だ。渡辺氏は日本航空高校女子サッカー部監督として、インターハイや高校選手権に導いた実績を持っている。
「賢い選手の育成」を掲げるアメージングアカデミーでは、どのようなトレーニング、コーチングのもとに、選手の認知能力やサポート能力を高めていくのだろうか?(文・鈴木智之)

ボールホルダーの状況を認知する
COACH UNITED ACADEMY動画、前編のテーマは「チームメイトを助ける正しいサポートのための認知」。渡辺コーチは「ボールを持っている選手を助ける際に、正しい角度、距離でボールを受けるために、いつ・何を見る必要があるかをトレーニングしていきます」と話す。
そのために「5対5+4フリーマン」のトレーニングを実施。フラットマーカーで四角形を作り、選手たちはグリッドの中でボールポゼッションを行う。フリーマンの選手はグリッドの外でボールを受け、ワンタッチコントロールでグリッドの中に入るか、グリッドの外でプレーする。共に2タッチ以下でしかプレーできないというルールだ。

攻撃の選手はフリーマンからボールを受けたら、グリッドの中で2本のパスを繋がないと、外のフリーマンを使うことはできない。フリーマンの選手がグリッドの外でボールを持ったら、ディフェンスの選手はプレスをかけられない。一方でフリーマンがグリッドの中に入ってきたら、プレスをかけてもOKだ。
渡辺コーチは選手たちに「ボールを持っている選手がフリーだったら、どんな風にサポートしよう?」と問いかけ、なるべくボールを素早く前に届けられるようにサポートする必要があることを伝える。
このとき、「この選手がどんな風にボールを持っているかを見ることによって、自分のサポートの角度や距離が変わる」と、ボールホルダーの状況を認知することの重要性を説いていった。
 
近くの相手を見て判断する
さらに渡辺コーチは、「ボールホルダーの状況を見ると同時に、自分の近くにいる相手をしっかりと見ておかないと、どの高さ、どの角度でボールを受けるかが決まらない」と、周囲の状況を認知することの大切さを指摘。

「ボールを受ける可能性が高い時に、近くの相手をしっかりと見て、どこでサポートすればいいかを判断してみよう」と声をかけ、選手たちが自分で考えてプレーすることを促していく。
また、「相手のプレスがかかるような場所でボールを受けたら難しくなるぞ」「ボールをプレスのないところに逃して」といったアドバイスを送り、相手のプレッシャーを考慮したサポートの重要性を伝えていた。
渡辺コーチは選手たちに対し、「何を見よう?」「どうやって前進させよう」「プレスがかかる瞬間はいつ?」といった問いかけを繰り返し、選手たち自身が状況を判断し、解決策を見つけられるようにコーチング。
「プレスがかかってないのに、緊急時のサポートは必要?」など、状況に応じた適切なサポートを選択できるよう質問を投げかけていく。コーチングの詳細は「COACH UNITED ACADEMY」の動画で確認してほしい。
質問を通して解決策を導く
今回のトレーニングはここまで。渡辺コーチは「正しいサポートをするために、ボールホルダーの状況を認知することを学びました。フリーマンが明らかにプレスを受けるタイミングとプレスを受けないタイミングをルールとして作り、選手たちに考えてほしいコンセプトについて質問することで、自分自身で解決していくプレーが増えました」と振り返った。
次回の後編では、クローズトランジションとオープントランジションの2つの状況に分けてトレーニングを実施する。

渡辺コーチは「アメージングでは、トランジションの状況を2つに区別しています。1つ目はボール周辺にスペースがない状況で、これをクローズトランジション。2つ目はボール周辺にスペースがある状況で、オープントランジションと捉えています」と説明。
これらのポイントを整理して、トレーニングに活用したい指導者は、ぜひ次回の動画も視聴していただければと思う。
【講師】渡辺将平/
2011年にNPO法人AGORAスポーツクラブのコーチとして指導者をスタート。2018年4月から2021年3月まで日本航空学園FC甲斐CIELOの監督をつとめあげ、2021年4月から2023年3月までは日本航空高校女子サッカー部を監督としてチームを全国高校サッカーインターハイや、全日本高等学校女子サッカー選手権大会出場へと導いた経験を持つ。
取材・文 鈴木智之


