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「エコロジカル・アプローチ」をどう活用する? 具体的なトレーニングメニュー紹介!

サッカーの指導が学べる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」では、強豪チームや豊富な実績を持つ指導者によるトレーニング動画や、指導していく中で必見な理論や情報を配信中だ。

今回のテーマは「エコロジカル・アプローチのチーム導入とトレーニング解説」。講師はFCガレオ玉島U-15で指導する古賀康彦監督だ。

前編では理論の基礎から3つの制約、5つの原則を紹介したが、後編となる今回は、古賀監督がエコロジカル・アプローチを導入し、チームにどのような変化が起こったのか。そして具体的なトレーニング方法について語ってもらった。(文・鈴木智之)

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チームに生じた3つの変化

後編のテーマは「エコロジカル・アプローチの導入と実践」。エコロジカル・アプローチによる指導を始めた古賀監督は、大きく分けて3つの変化を挙げる。

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1つ目は身体の変化だ。ガレオ玉島では、週1回マルチスポーツを実施している。

「金曜日の体育館練習で、あらゆる動作の経験、コーディネーションをさせています。バスケを経験することが直接サッカーのプレーに何か影響を及ぼすかわからなくても、いろいろな動作自体を経験できる。それがゆくゆくはサッカーにつながるのではないかと考えています」

マルチスポーツの効果は顕著だった。コーディネーションパターンが変わり、スムーズに動ける選手が増え、何より怪我が劇的に減少した。

「20数年指導者をしていますが、これまでどのクラブでも経験したことがないぐらい怪我人が少ない状況になっています。いろいろな運動パターンを経験することが、怪我の防止にもつながっているのではないでしょうか」

2つ目は習慣の変化。練習メニューは毎回違ったものにする。最初は戸惑っていた選手たちも、徐々に慣れ、様々な制約や条件付けに反応できるようになった。

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また、休息と食事にも配慮。練習量や頻度を詰め込みすぎず、しっかりと休息を設ける。食事については近くの大学と提携し、講義やデータ取得を通じて選手の意識を高めている。

3つ目は認知度の変化。SNS、特にインスタグラムでの発信を積極的に行い、マルチスポーツの様子や他では見られないトレーニングを紹介した。

「練習見学に来られる方も増えました。さまざまな大人に触れる、見られるという経験ができるのはすごくいいこと。選手自身も刺激を受けていますし、そういった循環が良い変化につながっているのではないでしょうか」

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選手のキック技術が劇的に向上

COACH UNITED ACADEMY動画では、古賀監督が実践する具体的なトレーニング例が紹介されている。

初期段階では、公園のボルダリングを登ってから練習したり、鬼ごっこから練習をスタートするなど、まずは楽しむことからスタート。体育館では柔道の受け身の練習、裸足でのフットサル、独自ルールのバスケットボールなど、多様な動きを経験させている。

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「バランスボールを蹴らせたり、利き足と逆の腰にビブスをつけて1対1のボールキープをさせたり。ビブスを取ってもいいし、ボールを奪ってもいいというルールにすると、利き足と逆の足を使う頻度が自然と多くなります」

具体的な蹴り方の指導や反復練習を行わなくても、マルチスポーツやさまざまな練習メニューを通じて、選手のキック技術が劇的に向上した例も紹介された。

「中学1年生からサッカーをスタートした選手が、1年ちょっとでだいぶ蹴れるようになりました。具体的な蹴り方の指導はしていません。もちろん体が大きくなったなど他の要素もありますが、エコロジカル・アプローチの影響で、彼のコーディネーションパターンが豊かになっている可能性はあると考えています」

「COACH UNITED ACADEMY」の動画では、実際にキックの映像を見ることができるので、上達の様子を確認してほしい。

制約を工夫することで選手のプレーを引き出す

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サッカーの練習でも、制約を工夫することで選手のプレーを引き出す。例えば、3対3にレーンを設け、パスを出した選手は必ずレーンを移動しなければならないルールを設定。同じレーンではパス禁止とすることで、自然とパスを出したらポジションを取る習慣が生まれ、ドリブルでの移動も増える。

COACH UNITED ACADEMY動画では、ほかにも「縦横・攻撃方向が途中で変わるミニゲーム」「3対3+GK(相手にタッチされたらボール奪取と同じ)」「疑似ストリートサッカー」など、ユニークなトレーニングを紹介。

また、古賀監督が意識している「5つの指導のポイント」など理論から実践まで、多岐にわたって収録されている。

エコロジカル・アプローチに興味がある人、チームに導入したい人にとって、非常に理解しやすい動画になっているので、ぜひ繰り返し見て、参考にしていただければと思う。

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【講師】古賀康彦/
兵庫県出身。先天性心疾患のためプレイヤー経験はなく、16歳で指導者の道へ。高校年代のコーチや監督を務めた後、スペイン・バルセロナで指導の研鑽を積む。帰国後は早稲田大学大学院に進学し、卒業後はオーストラリアに渡りジュニアチームを指導する。15年からFC今治に入団し、アカデミーのコーチやトップチーム分析などの任にあたる。18年から19年まで東京ヴェルディ、19年から22年までヴィッセル神戸、22年から23年まで鹿児島ユナイテッドFCの各アカデミーで指導した。指導歴は23年。現在はFCガレオ玉島U-15の監督を務めている。JFA公認A級ライセンス取得見込み。