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風間八宏氏が監修する「大人の発想を超える"規格外の選手"育成法」とは?

 みなさんは"トラウムトレーニング"というサッカースクールをご存知でしょうか。それはJ1川崎フロンターレの監督を務める風間八宏氏が筑波大学蹴球部監督時代に立ち上げたスクールです。このスクールのコンセプトは「個人技術・個人戦術」に特化してトレーニングを行ない、本物の技術を習得することにあります。風間監督といえば、Jリーグの監督の中でも独自のサッカー理論が話題となっており、低迷したチームを立て直して昨季はACLの出場権を獲得したことで、その理論・手腕はさらに注目を集めています。そんな同氏が提唱する"本物の技術"とは一体どのように習得するのか――。スクール設立時から指導に携わり、現在、トラウムトレーニングの総監督を務めている内藤清志氏にその育成法について伺ってきました。

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■カテゴリー分けのないトレーニングが生み出すもの

 トラウムトレーニングはつくば校を拠点にし、現在は水戸校、旭川校(現在休校)、特別コースなどで活動しています。つくば校ではメインのコースとして5歳から18歳の男女を対象とした「通常クラス」が週3回あり、中高部クラスが週2回、キーパーコース、カラダトラウムという特別コースがそれぞれ週1回となっています。

 これでお気づきの人もいるかもしれませんが、サッカースクールのコースとしてはじつに特殊なスクールなのです。通常であれば、例えば小学生では10歳以下のコース、12歳以下のコースなど2歳ごとに年代を区切るところや、あるいは学年ごとに区切ってコースを設けるスクールが大方です。しかしトラウムトレーニングは「5歳から18歳の男女」というだけ。このスクールの大きな特徴の1つがこの「カテゴリー分けのないトレーニング」にあります。

 なぜカテゴライズしない方針になったのか。内藤監督は「規格外の選手を発見、育成するため」と話します。ここにトラウムスクールの独自性が表れています。従来のスクールであれば同じ世代の選手の中で、同じようにボールを触わらせ、同じようなテクニックが備わるようにトレーニングされています。通知表で言えば1や2の選手でも3や4になるようなメカニズムです。

 確実に3の選手が育つという意味では優れたものかもしれませんが、この方法では、「5」、さらには「6」「7」の選手、つまり"規格外"を育てること、あるいはそうなれる可能性のある選手に天井を作ってしまうことに繋がるのでは――。この発想から生まれたのがカテゴリーを取り払ってしまうトレーニングだと言います。

 このトレーニングで思い出されるのは「ストリートサッカー」。古くはペレやマラドーナ、現在ではメッシやネイマール、クリスティアーノ・ロナウド、ファン・ペルシーなど、数多くの規格外選手がストリートサッカーから生まれています。年齢は関係なくサッカーが好きな選手が集まって、ときには大人も混ざり、体格も技術も違う中で、どうプレーしたらいいかをそれぞれが感じて自由な発想で解決しなければいけない。そんなストリートという環境が、規格外という"5"以上の選手が生み出されるバックグラウンドになっています。

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■目的達成のプロセスは選手の発想を尊重する

 ではスクールの中でカテゴリーをなくすことでそうした環境を作り出し、選手たちにどのような効果があるのか。まず年齢が下の選手は自分より年上とやることで高いレベルのテクニックやスピードを目の当たりにし、そこで自分がどう上手くプレーできるか工夫しなければいけません。対象は5歳から18歳なので前述した天井はどこまでも遠いところに置かれています。上手い子を見れば、自分ももっと上手くなりたいと思うのがサッカー少年の性です。その意欲は計り知れません。

 さらに内藤監督はこう話します。「スクールでは具体的なスキルを教え込むことはしません。指導者が見るべきポイントは上手くできたかどうか。目的が達成できたかどうかということです。したがって目的を達成するためのプロセスは子ども達の発想を尊重しています。もちろん基礎としての「止める」「蹴る」といった例は示しますが、これはあくまで食事でいうお箸の持ち方のようなものと捉えています」。例えば1対1の状況を打開する手段としてワンツー、ドリブル、スルーパスなど様々ありますが、そのどれを選択して、またどうその手段を表現するかは選手が発想していくもの。つまりDFを抜くために具体的なドリブルのフェイントを教え込むといったことはしないそうです。

 技術は年上の選手たちと一緒にやることで、そこで周りがやっているテクニックを見て、盗んで、自由にチャレンジして習得していく。これがトラウムトレーニングの1つのキモであると感じました。それはまさにストリートサッカーと同じ特性だからです。そうして覚えた技術を同年代の相手にも、上の年代の相手にも通用するように磨いていく。これは従来のスクールの方法ではなかなかできないことだと言えます。

 そして年齢が上の選手にとっての効果は、下の年代とやることで自身の技術の確認であったり、認識の整理ができると内藤監督は言います。「どこにボールをコントロールしたら相手が取りに来られないのか、どうボールを運んだら相手の裏を取れるのか。そういったことを自分より年下の選手とやることで余裕のある状況で確認しながらプレーができるのです。また、よくやるのがボールを使った鬼ごっこです。年上の選手は体のスピードでは明らかに差がありますが、加速させるスペースを与えないよう人数、グリッドを調整し、同じ条件でプレーできるようオーガナイズします。よって体のスピードではなく、技術のスピード、頭のスピードが大切になってくるのです」。年上の選手といっても、全員が技術の習得において大事な育成年代。確実に自分の中に技術を落とし込んでいくことはとても大切な作業です。

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<カテゴリーをミックスさせた鬼ごっこ>

    ・人数:60~70人
    ・グリッド:40m×30m
    ・ボールの数:20個
    ・鬼の数:20人
    ・ルール:鬼にタッチされないようにボールをキープする。鬼はボールを持っている選手にタッチをすると交代できる。パスカットは無し。パスは可能。最後にボールを持っている選手が勝ち。


 このようにストリートサッカーの要素を取り入れたトラウムトレーニングは、自由な発想で型にとらわれない、規格外の「個人技術・戦術」を持った選手を輩出していく可能性を秘めた新しいサッカースクールと言えるかもしれません。

では、風間八宏氏が提唱する"本物の技術"とはどのようなもので、具体的にどう指導されているのか?それは次回の更新にてご紹介していきます。


篠 幸彦(しの・ゆきひこ)
1984年、東京都生まれ。スポーツライター。編集プロダクションを経て、実用系出版社に勤務。技術論や対談集、サッカービジネスといった多彩なスポーツ系の書籍編集を担当。2011年よりフリーランスとなり、サッカー専門誌「週刊サッカーダイジェスト」でFC町田ゼルビアの番記者を担当。著書には『長友佑都の折れないこころ』(ぱる出版)、『高校サッカーは頭脳が9割』(東邦出版)がある。

取材協力/トラウムトレーニング
現・川崎フロンターレ監督の風間八宏氏が代表を務めるサッカースクール。同氏が提唱する世界に通じる"本物の技術"を習得することを目的とし、内藤清志総監督のもと5歳~18歳までの選手を育成している。また、トラウムとはドイツ語で"夢"を意味し、自らに期待し自分で"夢"を生み出すトレーニングのことを指している。

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