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あなたはどう考える?サッカーにおける"本物の技術"とは

 J1川崎フロンターレ・風間八宏監督が監修するサッカースクール「トラウムトレーニング」。風間氏の独自のサッカー理論をベースに「個人技術・個人戦術」に特化したトレーニングを行ない、世界にも通用する"本物の技術"の習得をコンセプトにしています。前回ご紹介した「カテゴリー分けのないトレーニングの効果」に続き、今回はトラウムトレーニングが提唱する"本物の技術"について総監督を務める内藤清志氏に伺ってきました。

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■どう止めるか?大切なのは「止まる」という結果

 一般的に"個人技"や"個人技術"と聞くと、「ドリブルのテクニックをイメージする人が多いのではないでしょうか」と内藤監督は言います。トラウムトレーニングではその『個人技術』を

1)ボールを扱う技術
2)身体を扱う(操る)技術
3)心(頭)を扱う技術

 というテクニック、フィジカル、メンタルの3つ要素にわけ、スポーツでよく使われる「心・技・体」が伴ったものを個人技術と定義しています。技術を1つひとつ明確にし、トレーニングに落とし込むことで子どもたちはわかりやすく習得できるようになります。

 例えば1)の「ボールを扱う技術」では、さらに「止める」「蹴る」「運ぶ」「外す」という4つの項目に細分化し、実際にボールに関わる技術をより深く、より明確に指導しています。この4つの中でとくに重要な要素だと感じたのは「止める」という技術です。なぜ止めることが大事なのか。内藤監督はこう説明します。

「野球のボールとゴルフボールでは野球のボールの方が大きいですよね。ではなぜ野球の方が空振りが多いのでしょうか。それは、野球のボールは動いている状態を打ち、ゴルフボールは止まった状態を打つからです」。

 それはサッカーにも置き換えられ、動いたボールを蹴るよりも、止まった状態のボールを蹴る方が正確にポイントを捉えて蹴ることができます。もちろん、試合の状況でボールを動かしながらプレーすることはありますが、一番の基本は「止めて、蹴る」。ここにあると考えます。だから止めるという技術が大事だとトラウムトレーニングでは教えています。

 ただ、ひと口に止めると言ってもまたそこにも解釈があります。まず1つはどう止めるか、ボールの勢いをどう「0」にするかの部分です。ボールを止めるとき、勢いを吸収して止めるか。あるいは向かってくるボールの勢いと同じ力を加えて止めるか、大きく分けると2つの方法があると思います。

 その2つもボールを引き込むようなトラップや、バウンドしたボールを足先でチョンと触るトラップなどやり方は色々とありますが、いずれにしても「ボールの勢いを自分の意図通りに調整できることが大事」(内藤監督)になります。

 さらに止めると言っても、いつも同じボールが飛んでくるわけではわりません。グラウンダーの強いボールであったり、イレギュラーに弾んだボールのときもあります。そして自分が止まっている状態なのか、動いている状態なのか、シチュエーションはさまざまです。そういった中でボールに対して、ボールのどこをどのくらいの強さで触れば止まるのか。「ボールと、さらには自分の身体のことを理解することが止める技術には大事」と内藤監督は言います。

 そしてもう1つはどこに止めるか。自分にとって一番次のプレーをしやすい場所、いつでも次のプレーができる場所に止められるかも「止める」技術では大切になります。その場所のことをトラウムトレーニングでは「家」と表現しています。

 自分にとって一番落ち着く「家」にボールを止められれば、相手はなかなか飛び込んで来られないもの。それだけで相手よりも一歩優位に立った状態でプレーができます。ボールが「止まる」のと、ボールを「止める」のは、この部分に大きな差があります。

 ただ、内藤監督は「この『家』の場所は選手でそれぞれ違うものです。メッシであれば左足の前、フィーゴであれば両足の間、クリスティアーノ・ロナウドは右足の前というイメージです。選手によっては足元に収めず、あえてボールを晒した状態の方がいい場合もあります。そういった選手に足元に収めるように強制することはしません」と、家の場所は体格、利き足、身体能力など様々な要素が関係し、その自分の特性を理解して、練習していく中で自分の家を見つけていくものだと言います。

 この「どのようにボールに触れ、どこに止めるか」という技術や判断を、トッププレーヤーは考えることなく無意識の中でプレーができ、その無意識にでもできるレベルというのは「どれだけボールに触れてきたかに比例する」(内藤監督)ものです。

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■個人技術+考える力=個人戦術

 このように各技術からさらに要素を抽出し、その技術の本質を考えさせることで、子どもたちはその技術を自分の中で整理して習得できるようになります。そして、トラウムトレーニングではこの『個人技術』に"考える力"をプラスしたものを『個人戦術』と定義しています。

 考える力とは、個人技術をどう使うかということになります。サッカーは味方はもちろん、相手もいる複数の人間で行なうスポーツです。そういった周りとの関係を考えた上で、はじめて本物の技術が成立するものだと言います。

 例えばDFが自分よりも足が速かったとします。そのときにスピードに任せたドリブルで勝負を仕掛けても勝てません。その場合、味方を使ってワンツーで崩したり、あるいはDFよりも早い動き出しで裏でパスをもらうなど、そのDFを打開する方法はほかにもあるわけです。相手と自分の力関係を把握して、プレーを選択することは考える力になります。

 そして考える先は味方でも言えます。サッカーはチームスポーツであるので、当然チームがどう機能するかを考えなければいけないものです。しかし、周りに気を使い過ぎて自分の一番得意なプレーを忘れてしまったり、出さずにいることは良い選択とは言えません。

 本当は味方を使うのが得意なプレーなのに、チームのために必死に走り回って使われる側ばかり。それはチームプレーとしては良いのかもしれませんが、トラウムトレーニングのコンセプトである規格外の選手の発見、育成という観点で言うと、そういった気遣いが成長の弊害になってしまう場合もあります。だからといって自分勝手なプレーばかりではチームの足かせになってしまう。どこでどう自分の得意なプレーを出すのかも重要な考える力です。

 このように個人技術の心技体を高めながら、その個人技術を試合の中でどのように使うかという個人戦術を高めていくのが、トラウムトレーニングが目指す「本物の技術」の習得に繋がっていきます。


篠 幸彦(しの・ゆきひこ)
1984年、東京都生まれ。スポーツライター。編集プロダクションを経て、実用系出版社に勤務。技術論や対談集、サッカービジネスといった多彩なスポーツ系の書籍編集を担当。2011年よりフリーランスとなり、サッカー専門誌「週刊サッカーダイジェスト」でFC町田ゼルビアの番記者を担当。著書には『長友佑都の折れないこころ』(ぱる出版)、『高校サッカーは頭脳が9割』(東邦出版)がある。

取材協力/トラウムトレーニング
現・川崎フロンターレ監督の風間八宏氏が代表を務めるサッカースクール。同氏が提唱する世界に通じる"本物の技術"を習得することを目的とし、内藤清志総監督のもと5歳~18歳までの選手を育成している。また、トラウムとはドイツ語で"夢"を意味し、自らに期待し自分で"夢"を生み出すトレーニングのことを指している。

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