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日本サッカーの育成に必要なのは「ゲームを観て議論する文化」

前回は、イングランド、オランダ、ドイツなど様々な国で指導者として活躍し、国内でも横浜F・マリノスやFC東京など豊富な指導経験を持つ平野淳さん(ファンルーツアカデミー代表)に「日本の育成現場で見失われがちな『サッカーの本質』」をテーマにお話していただきました。

今回のテーマは「指導の質を上げるための第一歩とは何か」です。

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Photo:U15-IMG_1015 / Schwarz Johann

■指導者に求められる「ゲームを観る力」

平野さんは指導者のコーチングの力を底上げするには「サッカーの本質の部分、つまり、『ゴールを奪う』、『ゴールを守る』、ということ念頭に置きながらトレーニングを構成すること」が全ての土台になると指摘した上で、さらに、その大前提として「指導者にはゲームを観る力がないといけません」と強調します。

「指導者がいかにゲームを観る力があるか。ジュニア年代の指導者でしたら、4対4や5対5というシンプルなミニゲームのなかから、いかにエラーを見つけ出し、課題をトレーニングに落とし込めるかが重要になります。逆にいえば、そこをしっかり抑えないとどんなに工夫したメニューを組んでも軸がぶれてしまうと思います」

 MTM=マッチ・トレーニング・マッチ。まずゲームをよく観て、そこから出た課題をトレーニングで改善して、またゲームを観る、というサイクルが大切だと平野さんはいいます。

「小学生のうちはフットサルコート(18m×36m、20m×40m)のピッチを見渡す能力があれば十分だと思います。もちろん、それ以上の広範囲にピッチを見渡せる能力を身に付けるに越したことはないのですが、そのピッチサイズのなかで、ボールの受け方やサポートの仕方、カバーの仕方などといったグループ戦術をどう身に付けられているのかをよく見ると良いでしょう。

そして、ミニゲームのなかから、ゴールへの意識だったり、球際の厳しさだったり、5メートルのパスは通っていても、10メートルを超えるとパスが通らなかったり、そういういくつかのエラーをを取り出し、トレーニングに落とし込んでいく。

そのトレーニングはシンプルなものから始めて、だんだんと相手を入れたり、ゴールをつけたりしながら最終的には再びゲーム形式で確認するという流れをつくるのが理想でしょう」

ここで重要なのは、実戦に適した形でトレーニングを行っていくことです。

■短い練習時間でも常に心拍数の高いドイツ

「トレーニングのなかでゲームのエラーを解決していけば、サッカーの多様な局面を打開できるようになり、試合中、無意識にプレーすることができるようになるでしょう。もちろん、トレーニングで求めることは、チームの技術、年齢(プレー経験)によって変わってきます。年齢が下がればシンプルなもの。年齢が上がれば複雑なものとなります。だからこそ、欧州などでは各協会が指標を出しているように、年齢が下がるにつれて少人数制の試合形式となるのです。

そして、もうひとつ大切なことは、全力で行うということ。過去にドイツの選手と日本の選手のトレーニング中の心拍数を計測したというデータを見たのですが、日本人選手は、トレーニングをしている時間こそ長いものの、心拍数は低い数字で推移していました。逆にドイツ人選手は、トレーニング時間は短いものの心拍数は常に高い数字を維持している。つまり、トレーニング時間よりも、いかにトレーニングに集中しているか、全力で取り組んでいるかという部分が大切になっているのでしょう。やる時はやる。休む時は休むというオンとオフの切り替えは本当に見習う部分かもしれません。

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Photo:2012-11-17_Hamburg3 / Markus Unger

ちなみに、ファンルーツで海外遠征のサポートなどを行っているのですが、先日ドイツへ海外遠征に行ったときも、日本のチームはせっかくだから6本でも7本でもゲームをやりたい。逆にドイツのチームはそんな長時間やっても意味がないという。結局、30分×2本しか対戦させてもらえなかったほどです。これは逆をいえば、長時間やることで、プレーの質が落ちてしまう。短時間でやることで質を高く、高い運動量のなか、集中してプレーできるのです。」

それだけ負荷が高く、実戦に限りなく近いミニゲームなどのトレーニング環境があるからこそ、そこで出てきたエラーを読み取る力が指導者にとって大きな意味を持つのは言うまでもありません。

しかし、欧州にそうした『試合を観る環境』がごく日常的にあるのも、日本との大きな差なのだと平野さんは指摘します。

■試合を観て議論し合える環境が必要

「子どもたちは贔屓のクラブの試合観戦に行ったり、テレビでライブを観たりするのが日常の一部。そこでプロ選手たちが、ゴールへの意識だったり、球際の激しさだったりを体現していれば、子どもたちも自然と感化され、トレーニングや試合に臨む姿勢も自ずと高まっていくのは当然のことなのです」

平野さんは「日本サッカーが短期間で急成長を遂げたことを世界は認めている」ことを実感しながらも、その豊富な国際経験からくる個人的な感覚として「日本は欧州からまだまだ遅れていることを感じます。というよりも、常に欧州は進化しようと努力をしています」といいます。

「子どもたちが試合をよく観るという環境もそうですが、日本には指導者たちが一つのゲームを観て、それを題材に議論し合うような文化がまだ浸透していません。オランダやドイツでは、平均的な指導者の質を上げるために『いかにゲームを観るか』という部分にフォーカスして徹底的に指導者同士が議論をしながら試行錯誤を繰り返しています。

以前、丘の上から自分が指導する様子をビデオで撮影して、それを題材に議論をしたことがあります。厳しい言葉をもらい、落ち込んだ記憶もあります。ただ、そのように自分の指導を映像を通して見ることで、自分が思っていたものと違ったことに気付いたのも確かでした。だからこそ、積極的な議論というものは大切だと思います。そのような経験をした私はラッキーだったのだと思います。真剣に議論しあう環境を作ることも大切かもしれません。」


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平野 淳(ひらの・じゅん)
大学卒業後、欧米にコーチ留学。UEFAライセンスをはじめ、イングランド、スコットランド、オランダ、ドイツ、米国などで指導者ライセンスを取得。横浜F・マリノスやFC東京などJクラブのジュニアからユース年代の指導に携わったほか、海外でも子どもたちの指導経験を持つ。現在はファンルーツアカデミーおよびFCトレーロスの代表を務め、国内外で普及活動を展開している。


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