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ワールドカップ上位進出国と日本との差はどこにあるのか。ドイツサッカー協会とプロコーチ連盟によるW杯分析~Vol.2~

ブラジルW杯において、上位進出国とグループリーグで敗退した日本代表との差はどこにあったのか。国際コーチ会議でテクニカルチームが行ったW杯分析から、その違いを考察してみたい。

<<Vol.1

5133385900_82a476ae05_o×600.jpg(取材・文/中野吉之伴 Photo by dmartinigirl

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■個人技術・戦術の必要性

DFBプロコーチライセンス指導教官フランク・ヴォルムートは分析の中で「チーム戦術が洗練されているモダンサッカーでは、やはりそれを切り開く手段として卓越した個人技を持つ選手が必要。個の力というのはこれからも変わらず大事な要素だ」と強調していた。

今大会でもアルゼンチンのリオメル・メッシ、オランダのアリエン・ロッベン、コロンビアのハメス・ロドリゲス、ブラジルのネイマールといった違いを生み出せる選手がチームの躍進に貢献した。しかし個の力が大事というのは、飛び抜けた才能を持った一握りの選手にチームが依存する、ということではない。チーム戦術を作り上げるうえでベースとなるのは個々の選手の個人・グループ戦術理解にある。「チーム戦術=決まり事を遵守」だけでは予想外のことが起きた時に対応できない。いつどこでどのように動き、どういった状況で決まり事を自主的に破り、ゴールを守る、あるいは決めるためのリスクチャレンジすればいいのか。ピッチにいる選手が基本となる動き方、戦い方、ボールの回し方を身につけていなければ、秩序正しい組織とリスクチャレンジのバランスにトライすることができない。

世界の強豪国ではフィジカルがあって技術があって、戦術理解もある選手が普通にいる。「フィジカルで負けるから技術で」と言っていては、いつまでもこの差は変わらないのではないか。「個で負けるからグループで」では、いつまでたっても特定の条件化でなければ何も出来ないのではないか。やり方の一つとして「ただガツガツいくよりも技術を生かそう」「1対1を全面に出すよりもグループとして守り、攻めることを狙おう」という傾向があるのは全く問題がないし、必要なことだと思われる。ただ、基本的なところでそれぞれの選手が1対1の状況においてボールを奪い取る術を持っているかどうかは大きなポイントになる。正面からパワーでぶつかり合うと勝てない相手でもスピードと相手との距離感と奪いにいくタイミングと次の展開を読む目を身につけることで1対1の状況でもより良い対応ができるようになるはず。

そして、1対1での対応はボールがあるときだけではなく、オフ・ザ・ボールの時も重要だ。ボールが逆サイドにあるときの相手との距離感、身体の向き、埋めるべきスペースなどを身につけないと、相手がボールを持った時に適切な状況を作り上げることができない。

1対1でも対応できるようになれば、あらゆる状況で数的有利を作らなければならないという前提も覆すことができるようになるのではないか。そしてそれが出来るだけのポテンシャルは、間違いなく日本人選手にもあるはずだ。

■キーワードにこだわりすぎない! 極論化しない哲学

国際コーチ会議最終日に行われた壇上ディスカッションでシュツットガルト監督アルミン・フェー、フランクフルト監督トーマス・シャーフ、フライブルク監督クリスティアン・シュトライヒらが参加。その中で「今後3バックは主流となりえるか」というテーマがあった。今大会ベスト16に進出したチームのうち4か国(オランダ、コスタリカ、メキシコ、チリ)が3バックを採用。3人はそれぞれの見解を述べていた。

フェー「これまでは4バックばかりだったが、今回は3バックが増えたというトレンドはある。しかし3バックは新しく生まれたものではなく、W杯以前からあった。しばらく4バックが主流だったので3バックを相手にすると最初は対応が難しい。しかし対策を練れば3バックが特別ということはない」

シャーフ「いろいろな方向があり、基本的な陣形がある。大事なのはどんな選手がチームにいて、そこから選手がどのように動くか、だ。あくまでもニュアンスの違いの一つだと見ている」

シュトライヒ「システムはどれがいいかという議論はいつもあるが、最終的に重要なのは実際に選手がいいプレーをしてくれるかどうか。選手が混乱し悪いプレーをしたらシステム論など意味がない」

どのシステムがいいかという議論の前に、まず、自分のチームを把握することが大切ということだろう。そしてシステムそのものが勝利に導くのではなく、システムはあくまでも基本布陣であり、そこからどう守備をし、攻撃をするのかが問われる点になる。

あるいは、よくあるのではと思われる「ポゼッションかカウンターか」というディスカッション。今大会では優勝したドイツ以外にポゼッションを基調としたチームが勝ち残らなかったことで、「今後カウンターを狙うチームが優勢になるのでは?」という声はコーチ会議に出席していた指導者仲間の間でもされていた。
 
確かに今大会では比較的深い位置で守り、カウンターを狙うチームが多かった。しかし決勝トーナメントに入ってからの試合を分析すると、カウンターから決まったゴールはほとんどなかった。カウンター対策を含めて守備組織がしっかりしているチームを相手に、カウンターだけでゴールを狙うのは難しい。例えばアルゼンチンはCKを相手に拾われた後、7秒で7選手が自陣に戻り組織を作っていた。実際に上位に進出した国からは、戦い方に多かれ少なかれバリエーションがあった。

また今大会では交代出場によるゴールが31点も生まれた。DFB専任指導者ベルント・シュトゥーバーは「『単純に選手を交代することで生まれたゴール』というだけではなく、ある選手を交代で入れることでチームの布陣や戦い方を変えて相手を揺さぶろうという意図があったかどうかが議論されるポイントになるだろう」と語っていた。

例に挙げた「ポゼッションかカウンターか」「3バックか4バックか」という2択問題も含め、チームとしても個人としても様々な引き出しを持つことが求められるだろう。そして、ただ選択肢があるというだけではなく、どの戦い方でもしっかりと対応できるだけの質を高めていくことが、今後ますます大切になっていくだろう。

Vol.3に続く>>
 

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中野吉之伴
秋田県出身。1977年7月27日生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで経験を積みながら、2009年7月にドイツサッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU15チームでの研修を経て、元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU16監督、翌年にはU16/U18総監督を務める。2013/14シーズンはドイツU19・3部リーグ所属FCアウゲンでヘッドコーチ、練習全般の指揮を執る。底辺層に至るまで充実したドイツサッカー環境を、どう日本の現場に還元すべきかをテーマにしている。

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