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【女子W杯コラム】なでしこ連覇のカギを握るか メニーナの『通過儀礼』が生んだメンタリティ

岩清水梓、大儀見優季など数々のなでしこ戦士を育ててきた日テレ・メニーナの寺谷真弓監督に、彼女たちの"秘話"を語っていただくインタビューシリーズの第3回は、メニーナ伝統の練習メニューをピックアップ。カナダ女子W杯に挑んでいるなでしこジャパンの大会連覇のカギを握ると予想する、メニーナ時代の"通過儀礼"とはいったい何か。(取材・文/小須田泰二 写真/金子悟)

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<<澤穂希選手はなぜ世界一の選手になれたのか?

■大人の輪に入って培われた負けん気根性

グラウンドの片隅で、ひとりの少女が大人に交じってボール回しに参加している。その少女はメニーナに所属する選手だ。小学校を出たばかりの12歳の子どもが、ベレーザに所属する憧れの選手たちに食らいつこうと必死になる。しかし結果は想像通り、果敢にドリブルでチャレンジしてはあっさりとボールを取られたり、ボールを奪いに行っても股抜きされながら失点を許したりと、ボールに触ることすらできない状況が続く。ミニゲームをしてもボール回しをしても、まさに"子ども扱い"されるのである。それが、日テレ・ベレーザの下部組織にあたるメニーナ独自の練習メニューであったと、寺谷真弓監督は言う。

「他のクラブでは考えられないかもしれませんが、トップからジュニアまですべてのカテゴリーのチームを持っている『ヴェルディ』だからこそできることでもあるんです。メニーナに入ったばかりの選手にレベルの高さを体感させることで、いろんなことを感じてもらいたんです」

聞くところによると、岩清水梓、大儀見優季など、なでしこジャパンに名を連ねる選手もまた、そのメニーナ独自の"大人の練習"を体感してきた。澤穂希にいたっては、ラモス瑠偉や北澤豪、武田修宏といった当時のヴェルディのスター選手と交じってボール回しをしていたという。まさに、一流のサッカー選手になるための"通過儀礼"といったところだろう。

「ベレーザの選手にちょっと早く練習場に来てもらえないかって頭を下げて、メニーナの練習をやっている時間に来てもらうように仕込んでおく。それでセットプレーや紅白戦の練習のメンバーから外れた選手を対象に、『手加減しないで本気でやってくれ』ってお願いするんですよ」

こうして通過儀礼のセッティングは完了。メニーナの指導にあたりながら、寺谷監督は「大人と子どもの真剣勝負」を横目で確認しては、感情を押し殺して心の中で喜びをかみしめているという。

「やっぱり、やられて覚えることって多いと思うんですよ。ベレーザの子たちにお願いするときはもちろん、たまにスタッフチームを作るんですが、そこでも徹底的にボールを回してあげるんです。こんなことができるんだ、あんなことができるんだって。実際に肌で体感して身に付くことはたくさんあるので、絶対に手を抜くことはしません。生ぬるい環境を与えても何も得るものはありませんし、成長もしないと思いますから。最近はベレーザの練習時間が変わってできていないんですが、またいまの選手たちにも経験させられるようになったらいいですね」

大人との本気のミニゲーム。大人との本気のパス回し。通常ならば和気あいあいとした楽しい空間が生まれるものだが、そこに参加するメニーナの表情に笑顔がこぼれることはない。むしろつねに張りつめた緊張感が漂う。そんな中メニーナの選手は必死になってボールを追いかけては、一生懸命にやればやるほど遊ばれてしまう。レベルの高さにただただ圧倒されるのである。終わったときには極度の緊張もあるせいか、まさに心身ともに疲れ切ってしまうという。

■メニーナ出身組のメンタリティが連覇のカギとなる!?

大人の輪に入れる。そこにはもうひとつの目的があるという。寺谷監督は言う。

「ひと言でいうと、メンタルを鍛えることですね。カルチャーショックというか、メニーナに入ってまず一度、その鼻を折ることが大事だと思っていますから。メニーナに入る子どもたちはエリートが多いんです。ほとんどがお山の大将で活躍してきた選手ばかり。ですから入団したときに初めて挫折を味わう子が多いんですよ。チームの中には高校生もいますので、エリートとはいえ中学1年でいきなり通用する選手なんてほとんどいません。挫折した後にどう自分と向き合うか。できない自分、通用しない自分を受け入れることができないと、その先伸びていきませんから。大人とのミニゲームやボール回しも、そんな狙いがあるんです」

メニーナに入って挫折して何をすべきか。それを体感して学んだ選手は、言い換えれば代表クラスの選手になれる素質があるという。

「素直にやれる選手は成長します。大人の輪に入って何を感じ取ることができるか。ああダメだって思うか。私もこうなりたいって思うか。ベレーザでプレーしたいという気持ちを強くしてもらいたいですし、自分もそのレベルまで行けないと代表になれないんだって思ってほしいですね。そのまま心が折れてしまっては、私自身も困りますから(苦笑)」

大人の輪に入ることで負けん気に火がつき、物怖じしないメンタリティが養われる。そういった点で、今回の女子W杯ではメニーナ組の負けん気に期待しているという。

「やっぱり澤や大儀見なんかもそうですし、負けん気の根性は相当あると思いますよ。他のメニーナ出身の子たちにも、そういったメンタルの強さを発揮してほしいですね。チームが苦しいときに打開する力を発揮できる、流れを変えることができる、そんな逆境に強い選手になってほしいですね。私は子どもたちから『厳しすぎる...』と言われていますが、厳しさの中で学ばせるのは大舞台に強い選手にさせたいという意図でもありますから、この指導方針は変えるつもりはありません(苦笑)」

今回の女子W杯に話題を移すと、そこでもその負けん気の強さを発揮してほしいと期待している。たびたび訪れるであろう逆境をいかに乗り越えるか。そこで選手たちがどこまで負けん気根性を出すことができるか。それが大会連覇のカギになるだろう、と寺谷監督は予想している。

「サッカーは勝負事ですから、ここぞという場面で"負けん気根性"を発揮できるか。前回のドイツ女子W杯で日本が優勝できたのも、それを発揮することができたからだと思っています。チームは生き物ですから、すべてが連鎖することがあるんです。準々決勝のドイツ戦での劇的勝利があって、アメリカ戦での澤選手の劇的なゴールにつながった。今大会でも同じように、どこかで大事な試合、大事な場面を迎えると思います。そのときに彼女たちがメニーナ魂を発揮してくれることを願っています」

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寺谷真弓(てらたに・まゆみ)
1971年11月24日生まれ。東京都出身。現役時代は読売クラブ・ベレーザ(現日テレ・ベレーザ)、鈴与清水ラブリーレディースでGKとしてプレー。1999年から指導者の道へ進み、日テレ・メニーナ監督、日テレ・ベレーザ監督を歴任。岩清水梓、大儀見優季をはじめ、多数のなでしこ選手を育て上げた。日本サッカー協会公認A級コーチライセンス取得。現在は東京ヴェルディ・女子グループテクニカルダイレクターと日テレ・メニーナ監督を兼務する。

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