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【CUA練習訪問】50メートル7秒8のチームを勝たせる方法/グラスルーツの視座

6月のCOACH UNITED ACADEMY(以下、CUA)では「グラスルーツの視座」と題し、指導現場からボトムアップで企画したセミナーを公開中です。今回は特集と連動したコラム企画として、CUAで学ぶコーチの指導現場を訪ね、グラスルーツを支える思いや指導理念についてお話を伺いました。お相手いただいたのは川崎市立高津高校サッカー部監督の鈴木祐史先生。川崎という地域や、そこで育った子どもたちへの温かいまなざしが印象的でした。(取材・文・写真/COACH UNITED編集部)

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■指導者の「つながり」が生んだ一貫指導

CUAのオンラインセミナーを視聴されている会員のみなさんを対象に、「あなたのチームの練習を見学させてください!」と呼びかけたところ、最初に手を挙げてくださったのが川崎市立高津高校サッカー部監督の鈴木祐史先生でした。"生まれも育ちも川崎"の鈴木先生は今年で47歳。大学卒業後に着任された川崎市立橘高校で17年間指導されたのち、現在の高津高校へ移られて3年目を迎えるベテラン指導者です。

そんな鈴木先生のもと、気持ちの良い挨拶で迎え入れてくれた同校サッカー部は、選手・マネージャーを合わせて30人。チームとしては少人数ですが、3年生6人、2年生7人、1年生13人、マネージャー4人と、毎年徐々に部員が増えているとのこと。聞けばその背景には、この地域に根差すJクラブ・川崎フロンターレの呼びかけで始まり、川崎市サッカー協会の技術委員長を務める鈴木先生らが中心的な役割を担う『川崎アカデミープロジェクト』の活動があるといいます。

「"川崎育ちのJリーガー・日本代表を育てよう"という思いを込めた『made in kawasaki』をスローガンに、市内の指導者による交流、強化育成、GKの環境整備を図ろうとスタートしたのが『川崎アカデミープロジェクト』です。川崎エリアの特性を生かし、小学校・中学校・高校を7区ある区ごとに分けて7つのコミュニティを立て、各年代の代表者で話し合って指導者講習会などを行なってきました。いまは特にU-13年代の環境整備に力を入れているので、U-13トレセンとU-12トレセンが交流できる場をつくって練習や試合をしたり、トレーニングのためのグラウンドを区内の高校が提供したりという形で、各種の指導者がつながってきています。その結果、指導者の顔が見えているし子どもたちの能力もわかっているということで、エリアの中学校から『先生よろしくお願いします』と、公立の高津高校にも上がって来てくれるようになりました」

川崎市では少年人口が減っているにも関わらず、高校年代のサッカー人口は増えているそうで、桐光学園や法政二高などの私立強豪校への進学も含め、地元の才能が川崎に残って育っていくという狙い通りの流れが生まれつつあるようです。鈴木先生の紹介でお話を伺った川崎アカデミープロジェクトの推進リーダー、川崎フロンターレ育成部の川口良輔さんも、4年目を迎えた活動の手応えを次のように語ってくれました。

「2012年にプロジェクトを立ち上げた時点で描いた短期プランは、鈴木先生をはじめ参加指導者のご理解ご協力もあってすべて予定通り達成し、次の施策としてトレセン活動の整備や種別リーグ戦の創設に着手しています。この3年間の試行錯誤を通じて、各年代の指導者・子どもたちをつないで一貫指導の環境を整えるノウハウが確立されてきており、地域密着の育成スキームとして全国に展開できる先進事例ができたと思います」

実際、川口さんには各地から見学の依頼が寄せられているそうです。また川崎市内の3・4種クラブ・少年団には、川崎フロンターレとのパートナークラブ提案も進めているそうなので、ご興味のある指導者の方はぜひオフィシャルFacebookページをご覧ください。

■「走る速度」の代わりに誰もが磨けるもの

プロジェクトを通じて川崎フロンターレと親交の深い鈴木先生は、高津高校サッカー部の指導にもその傾向が表れているといいます。フロンターレの風間八宏監督が提唱する『トラウムトレーニング』への共感から基本技術を重視しており、訪問当日も「止める」「蹴る」「ターンする」の技術にフォーカスしたドリル練習を1時間ほど、オーガナイズは変えつつも一貫して精度を求めながら行なっていました。その後のトレーニングでも同様でしたが、鈴木先生がとりわけ「止めて蹴る」にこだわるのには理由があります。

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鈴木先生が尊敬する指導者は、元川和高校監督で今年から橘高校の指揮を執る山本義弘先生。「ひと言で言えば誰でも上手くさせられる指導者。ずっと後を追いかけています」と語る。

「恥ずかしい話ですが、いまの3年生に50メートルを走らせたら平均で7秒8でした。圧倒的に走る速度が遅いわけです。普通にプレーしたのでは身体能力の差でつかまってしまう。じゃあ代わりに何を速くするかといったら、『止めて蹴る』の速度と考える速度を上げるしかないんですよ。ですから技術面では『止めて蹴る』までの速度、そして精度を追求しようと、こうして時間をかけてやっているわけです」

ちなみに高津高校では、ボールを「止めて蹴る」までの速度をマネージャーが目視で計測し、具体的な数字にして提示しているそうです。2014年ブラジル・ワールドカップのドイツ代表選手が必ず2秒を切るというデータを引き合いに、「速い子でも2秒ちょっとかかっているのでまだまだ遅い」と言いながらも、鈴木先生は選手たちの成長に目を細めます。

「いまの3年生は中学生のときにほとんど試合に出たことがない子たちなので、こういう技術的なことをちゃんとやると変わるし、上手くなることが実感できるんですね。今年入った1年生には中学の選抜選手が何人かいますが、それでも『止めて蹴る』のスピードでは3年生にまったく敵いません。彼らは高校に上がってきてまず、中学時代に同じ学校で自分が"抜かしていた"はずの先輩たちを見て、とにかくびっくりするそうです。『こんなに差があるのか』と(笑)」

このお話は鈴木先生の指導力を物語る一番のエピソードでしたが、練習でのアプローチはあえて必要最小限の声掛けに抑えているように感じられました。最後にご自身の指導スタイルについて、鈴木先生は次のように説明されています。

「まず『しみこませて』、あとは『あふれる』のを待つだけですね。うちに来る子は最初は何もないので、1・2年生の間は『こうだよ』ってしみこませないといけない。でも十分にしみこませて3年生になったら、あとは彼らの才能がギュウっとあふれ出てくるような携わり方をしないといけません。それまで私が与えてきた答えを、自分たちで考えて気付くようになるのが理想です。彼らはいずれ私たちの手を離れて、もしかしたら同じように指導者になるかもしれません。そうなったら将来、お互い対等な指導者として対戦してみたいじゃないですか。でもそのときに"しみこませた"ものしかなかったらガッカリしますよね。教え子にはぜひ、『ああ、コイツそこまで考えてるんだ...』と思わせて欲しいものです(笑)」

鈴木先生の周りではすでに、橘高校時代の教え子たちが指導者となって活躍されているそうです。そうした好循環は川崎アカデミープロジェクトの後押しによって、さらに大きな輪となって広がっていくことでしょう。鈴木先生はもちろん川崎のグラスルーツ指導者のみなさんに、COACH UNITEDではこれからもエールを送り続けたいと思います。

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