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バルセロナがGKを育てる4つの段階/Jリーグ育成年代GKコーチ研修会レポート(3)

7月初旬、日本のGKのレベルアップを目指すJリーグが、FCバルセロナの育成組織GKダイレクターのリカルド・シガラ氏を招聘し、Jクラブのアカデミー指導者(GKコーチ)に向けた講習会を行なった。今回は「年代別のGKに指導すること」をテーマに、FCバルセロナが考えるGKの育成法を紹介する。(取材・文・写真/鈴木智之)

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<<バルセロナはGKの何を見ているのか

■GKも"常に判断させる"練習がベースとなる

シガラ氏はFCバルセロナのGK育成部門のトップとして、18歳までの選手の育成を統括している。バルセロナはクラブとして「ボールを保持して攻める」という哲学があり、ジュニアのカテゴリーからトップチームまで、同じ考えのもとにプレーしている。GKに求める要素も例外ではなく、「バルセロナのGK」としての技術、フィジカル、戦術、判断、メンタリティが備わっていなければ、トップチームに上がることはできない。シガラ氏が説明する。

「バルセロナのGKに求める要素は多岐に渡ります。シュートストップという『シュートを止める』技術だけではなく、足元の技術や状況における正しいポジショニング、攻撃のスタートとなるプレー、DFラインとの連携と統率、プレーの流れを読みながら、正しい判断をすることなどを、すべての年代において高めていきます」

シガラ氏によると、GKの育成は年齢によって段階が分かれていくという。具体的には7~9歳は「初歩」、10~12歳は「育成」、13~15歳は「強化」、16~19歳で「完成」と、4つの段階に分けられる。

「GKとしてプレーを始める7~9歳は、初歩の段階に当たります。この年代のトレーニングの特徴としては、足元の技術の習得に費やす時間が長いこと。また1対1、2対2、3対3、1対2など、自分以外の選手がいる状況を作り"常に判断させる"練習をします。重要なのは、サッカーとはどういうスポーツなのかを理解すること。それが以後、10歳、15歳、17歳と年齢を重ね、サッカー選手として成長していく上でのベースになります」

FCバルセロナでは7~9歳の時点で、技術の習得に加えて状況を判断する要素も含まれたトレーニングを行なうという。だからといって戦術的なことばかりを教えるのではなく、選手の創造性も大切にする。

「この年代の選手はまずプレーをさせます。自由にプレーさせて、判断をさせます。"プレーをする"という主導権を握るのは子どもたちです。プレーをさせて、どのようなことが起きるかを体験させた上で、声をかけながら、少しずつ動きを修正していきます。ただ、解決策を与えるのではありません。指導者はアドバイスをして、選手を導いていきます」

シガラ氏がトレーニングの例を挙げる。

「たとえば、GK同士の2対2の練習。ルールとしては、GKは手と足の両方を使ってプレーすることができます。手や足で相手からボールを奪い、チームメイトに渡します。『プレスに行っていいのは一人だけ』というルールを作ると、チームメイトはパスを受けられる位置に、自然とサポートに入るようになります。そこでGK同士で指示を出し合い、コミュニケーションが生まれます。こうやって状況認知、判断の要素を加えていくのです」

初歩段階の7~9歳を過ぎると、10歳からは7人制サッカーが行なわれる。シガラ氏は「この年代で大切なのは、テクニックとコーディネーションの基本」だという。さらには13歳から11人制でプレーするため、正確な技術に加えてプレーの状況を見て判断することも重要になる。

「12歳ではテクニックが相当のレベルに達していないといけません。テクニックとはプレーの状況に則して身に付けるべきです。そのため、ボールポゼッションの練習にGKを参加させますし、そこでは動きの速さも求めます」

■全体練習でGKのためにトレーニングを行なう

13歳になると、11人制のサッカーになる。GKにとっては大きな変化である。ピッチの大きさが変わり、何よりゴールの大きさが変わる。13歳は成長期なので、短期間に一気に身長が伸びることもある。そうなると身体のバランスを崩し、コーディネーションに問題が発生することもある。

「それまでは良い形でボールをキャッチすることができていたのに、腕と足が急激に成長することで、ロボットのような動きになってしまうことがあります。また、ピッチは広くなったのに、筋力的に十分なレベルに達していないので、前方にボールを蹴ろうとしても、蹴る力が足りないこともあります。そのため13歳では、もう一度足元の技術の習得に力を入れます」

シガラ氏が実際にU-15のGKに行なったトレーニングを見学したが、両方の手、両方の足を使ってプレーすることにこだわっていた。これは身体のバランスを整えることだけでなく、利き足ではない逆足のレベルを上げることで、プレーの選択肢を増やすことにもつながる。

「テクニックレベルの高いGKには、難しいトレーニングをします。なかでも空中のボール、足元のプレー、DFラインの裏に出てくるボールへの対処については、監督とコミュニケーションをとり、全体練習のトレーニングのひとつをGKのためにやってもらいます」

もし、GKのテーマが「空中のボール」だとすると、週3回の練習のうち、1回のトレーニングで15分をもらい、全体練習の中で「空中のボール」にフォーカスしたトレーニングを行なう。シガラ氏は「13~16歳までは、一週間、ひとつのテーマに絞って練習をする」という。たとえば、今週のテーマはハイボールのキャッチ、次の週のテーマは足元のボールコントロール、翌週はゴール前でのポジショニング...といった形だ。

そして、GKとしての完成に近づく16~19歳になると、週末のリーグ戦に向けてテーマを設定し、その日ごとに異なるテーマで練習を行なう。これはチーム全体の練習に関連したものになる。また、16歳までは均等に試合の出場時間を確保するが、16歳からはGKのレベルに応じて出場時間が変わる。

「この年代で重要なのは、試合で起こるミスをビデオで分析すること。バルセロナではすべての試合、練習が録画されています。監督やGKコーチは、どんな映像も見ることができます。GK自身に問題を気づかせる、あるいはコーチが指摘するときに映像を使います。もちろん、ミスを修正するためだけでなく、正しい動きができているときも『これは良いプレーだった』と教えてあげます」

バルセロナでは年代に応じて身に付ける能力を整理し、トレーニングに落とし込みながら、選手を常に入れ替え、厳しい競争下でGKを育てていく。それでも、トップチームのGKになるための壁は高い。「バルセロナのGKになるためには、世界で5本の指に入るGKであることが条件」(シガラ氏)というレベル設定があるからだ。かつてのビクトル・バルデス、現在トップチームに所属するマシップに肩を並べるGKの輩出を目指し、カンテラの挑戦は続く。

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