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選手権で準優勝、ケガ人ゼロの國學院久我山が取り組むリカバリープログラム/コンディショニングの実践者 (5)

第94回全国高校サッカー選手権大会で準優勝という結果を残した東京都の國學院久我山高校は大会中、グラウンドの狭さや練習時間などの「厳しい制約」が大きな話題となった。しかし、今大会の國學院久我山で最も注目すべきは1回戦から決勝までの6試合でケガ人、体調不良者ゼロのまま乗り切ったコンディショニング面での成功ではなかったか。今回は國學院久我山の三栖英揮フィジカルコーチに、同校のフィジカルトレーニング戦略とその中でのリカバリープログラムについて話を聞いた。(取材・文・写真/小澤一郎)

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COACH UNITED(以下CU):スポットではなく「毎日必ず何かのプログラムに取り組む」常駐のフィジカルコーチとして今年で6年目となりますが、まずは國學院久我山でのフィジカルトレーニングの戦略について教えて下さい。

三栖:高校サッカー選手権が終わり2016年度のシーズンに向けた新チームが立ち上がりましたので、今シーズンも「トレーニング・ストラテジー(戦略)」と題した資料を選手に配布しています。私はフィジカルトレーニングを、競技パフォーマンスを前提として戦略的に捉えてプログラムすることを心がけています。國學院久我山高校サッカー部でのフィジカルトレーニング戦略は3つの領域に分かれています。①は『予防プログラム』です。このプログラムは特定のスポーツ傷害に対してプログラムされているのではなく、身体機能の改善、維持を目的とし、具体的には各関節の可動性や安定性を正常に保つことをポイントにしています。②は『競技力向上プログラム』です。プログラムとしては、ストレングス(筋力)トレーニング、スピードトレーニング、エネルギーシステム(持久力)のトレーニング、競技動作のトレーニングになります。これらプログラムは決して独立したものではありません、筋力が強化されることで、スピードに影響を与え、スピードが向上することでエネスギーシステムは改善し、競技動作はスピードを要求することでパフォーマンスへとつながります。このようにメニューとしては各要素別になりますが、プログラム全体としては相互に影響し合っています。そして最後が③の『リカバリープログラム』です。

CU:リカバリープログラムでは具体的にどういった取り組みがあるのでしょうか?

三栖:リカバリープログラムというのは試合やトレーニングで身体機能にストレスがかかった状態から、いかに素早くリカバリー(回復)させるかというプログラムです。試合や高負荷のトレーニングから48時間を目安として、リカバリーが促進されるようにプログラムを①Aerobic excise(有酸素運動)、②NutritionⅠ(直後の栄養補給)、③Body maintenance(ストレッチなど)、④Hydrotherapy(アイスバス、温浴、交代浴など)、⑤NutritionⅡ(当日の食事)に分け、プラスアルファで睡眠と水分補給について選手にアドバイスをして取り組ませています。直後の①に関しては、筋グリコーゲンの再合成などの点ではマイナス面も考えられるので、「必ず」ではなくチームスケジュールを考慮して実施しています。『代謝性の疲労』の主な原因は、エネルギー源の枯渇なので、対策は栄養補給つまり食事を摂るしかありません。どのタイミングで、どのような栄養素を摂るのか。自分たちで考えて摂取できるようにアドバイスをしています。例としてはプログラム②ですが、ここでは水分、糖質、タンパク質の摂取を意識させています。水分摂取は体重の減少に対して必要量の摂取を直後より意識させています。糖質摂取は筋グリコーゲンの再合成率が最も高いとされる運動直後に体重1kgあたり1.5g目安に摂取させています。タンパク質は直後の摂取でタンパク質合成の効率が改善されると考えられているので、10g前後を目安に摂取させています。現在は市販のプロテインなどで、タンパク質だけでなく糖質などの栄養素もバランス良く摂取できるもが数多くあるので、うまく活用させるようにしています。『神経-筋の疲労』は、微細な筋損傷からいかに素早く回復させるかです。何か特別なことをして短時間で急激にリカバリーされることはないので、48時間を目安に筋の回復を促進させるプログラムに取り組ませます。ストレッチやセルフマッサージなどのプログラムもですが、栄養補給、入浴や睡眠など自分のライフスタイルの中にリカバリープログラムを組み込んで実施するようにアドバイスをしています。そして、一番注意しているのはチームスケジュールが過負荷となってリカバリーが促されなくなることで、その点を監督と常に相談しながらトレーニングを計画しています。

CU:プロテイン、食事はチームとして用意しているのでしょうか?

三栖:プロテインの管理はすべて選手です。全員が通学生なので食事も各家庭になります。通学時間や家庭環境も様々なので、各選手に任せています。管理するのではなく様々な情報をアドバイスして繰り返しコミュニケーションを図る中で、選手が自ら判断、自立できるようなサポートを心がけています。

CU:アミノ酸摂取のタイミングなども指導されているのでしょうか?

三栖:選手が摂取しているモノに関してある程度は確認しますが、『これにしなさい』などと必要以上に管理はしていません。例えば分岐鎖アミノ酸 (BCAA)などの成分が入っているアミノ酸を摂取している選手がいた場合、BCAAの運動前の摂取によって遅発性筋肉痛(いわゆる筋肉痛)や筋損傷が軽減されることが示唆されているなどの情報をもとに、選手とコミュニケーションをとります。選手自身が少しでも考えながら取り組むようにして、最終的には選手に判断させるようにしています。また現在はいろいろな媒体を通じて選手が多くの情報に接しています。選手とのコミュニケーションの中で私自身が理解できていない情報があれば、必ず勉強をして正確な情報を持ち、コミュニケーションをとるよう心がけています。当たり前ですが基本的に選手たちはこういった取り組みに最初は興味がありません。資料や知識だけを選手に与えても高校年代でいきなりしっかりと取り組めるわけがないので、3年間繰り返しコミュニケーションを取り続け、こういった取り組みのメリットを感じさせ、時にはかなり厳しく指摘しながら、自分で考え判断し取り組めることを増やしていけるようにしています。そういうベースやリテラシーを育成年代までに作っておかないと、嘘か本当かわからないような情報にも流されてしまいます。大切なことは、まずは自分で試してみて、自分に合った取り組みを見つける、つまり自分の型を作ることもコンディショニングでは大切だと考えています。

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三栖英揮(みす・ひでき)
1978年8月生まれ。(株)M's AT project代表取締役。箕山クリニックサポートスタッフ。2003年日本工学院八王子専門学校健康スポーツ科学科卒業、日本体育協会公認アスレティックトレーナー、日本トレーニング指導協会認定トレーニング指導者。現職は國學院大學久我山高校サッカー部フィジカルコーチで、SFIDA世田谷FC、川崎市立橘高校サッカー部、ジェファフットボールクラブでも指導を行なっている。監修書籍として『プロサッカー選手を目指すトレーニング戦略―育成年代に最適なフィジカルトレーニング』『サッカー専用ボディ強化計画』(共にスタジオ タック クリエイティブ)など。

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