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ノートとペンがあればサッカーの観方が変わる!「複雑なゲーム」をシンプルに観るための分析術【連載】The Soccer Analytics:第7回

ここまでこの連載では、サッカーを分析すること、ゲーム分析をすることの意味や有益性、サッカーを主観ではなく客観で観ることの重要性についてオランダで活躍する白井裕之さんに聞いてきた。

分析の重要性、有用性については、過去の連載を参照いただきたいが、では、白井さんはどのようにしてゲーム分析を行っているのか? 今回は、続々と新たな才能を生み続けるオランダの名門・アヤックスの17歳から19歳までのカテゴリで白井さんによって実際に行われている分析方法の一端を紹介する。(取材・文/大塚一樹)

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主観を頼りに観るからサッカーは複雑に感じてしまう

「ペンとノートがあれば十分ですよ」

白井さんにゲーム分析の手順を具体的に聞くに当たって、まず必要なものを挙げてもらおうと質問すると、しばらく考えたあとにこんな答えが返ってきた。

つまり、ヨーロッパトップレベルの育成現場でも、ゲーム分析に特別な道具は使っていないということだ。

「ここまでお話ししてきたように、私が行っているゲーム分析の手法はとてもシンプルなものです。核となる理論さえ理解していれば、ノートとペンがあれば、誰でもいますぐに分析をはじめることができます」

白井さんの示す理論とは、これまで聞いてきたサッカーというゲームを分析するためのさまざまな基準のこと。指導者がそうした事実を前提として、目の前に起きているプレー現象を客観的に分析し、評価する。

一見、複雑に見えるサッカーを分析するためには、サッカー自体をシンプルに捉える必要がある。

「ただ漫然とゲームを観る、または主観だけを頼りにゲームやプレーを観ていると、サッカーはとても複雑に感じるでしょう。実際に、ボールが絶えず動き続け、多くのプレーの選択肢があり、しかも足でボールを扱うため予測不能なプレーも頻出するサッカーは複雑なゲームです」

では「複雑なゲーム」であるサッカーをシンプルに観るためには何が必要なのだろう。
「サッカーをシンプルに観るためには、客観的な事実に基づいてゲームを見つめ直す必要があります」

まず行わなければいけないのが、お互いのシステムの確認だ。日本ではシステムと呼ぶがオランダではチームタスクを実行するための「チームオーガニゼーション」という言葉で統一されている。

1-4-3-3、1-4-4-2などノートに互いのチームオーガニゼーションを書き込み、そのかみ合わせを図示する。これが分析の第一歩になる。ノートに描かれるピッチの現況把握図によって、数的有利な場所や数的不利な場所、フリーになる選手の確認など、これから起こり得る事象を予め予測することができる。

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チームオーガニゼーションのかみ合わせチェックが終わったら次はいよいよ、白井さんの提唱する「フィルター分析」の出番だ。

白井さんは、当連載でも再三話題に上っている、オランダサッカー協会が提唱するゲーム分析方法をベースに、独自の分析メソッドを構築している。

サッカーを観るメガネにフィルターを重ねる

白井さんの分析手法はレベルIからIVまでの4つのフィルターに分かれている。この4つのフィルターはレベルが上がるに従って把握しなければいけない要素が増える。いきなりすべてを把握し分析しようとするのではなく、段階を踏んで徐々に複雑な要素を紐解いていこうとするところにもオランダ的合理主義が見え隠れする。

「一枚一枚、フィルターを増やしてくイメージですね」

白井さんは、ゲーム分析に触れる指導者に、自分がサッカーを観る視点の前にレンズフィルターのようにして重ねていって欲しいと説明する。メガネに「サッカーがよく見えるレンズ」を順番に重ねていく様をイメージするとわかりやすい。

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今回紹介するのは、第一のフィルターとなるオランダサッカー協会が提案しているゲーム分析の基本方法だ。

「レベルⅠとしているのは、オランダサッカー協会がすべての指導者に示している、もっともシンプルなサッカーの分析方法になります」

レベルⅠの分析では、攻撃、攻守の切り替え(攻撃→守備)、守備、攻守の切り替え(守備→攻撃)の4つのチームファンクションに対して、それぞれのチームタスクを設定する。

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攻撃については、ボールを自陣から相手陣に進めてシュートチャンスを作り出すことを目的にした「ビルドアップ」と、それによって作り出されたシュートチャンスを得点につなげる目的、つまり「得点する」ことがチームタスクとして定義される。

攻守の切り替え(攻撃→守備)では、まずボールを失った状況でチームとしてどう対処したのかを確認する必要がある。その上で、「即座に取り返すためにボールにプレッシャーをかける」もしくは「取り返しに行かずに下がって守備ブロックを作る」のどちらかを選択することになる。

守備も同様に、相手のビルドアップを妨害して、ボールを前に進めさせない「ビルドアップの妨害」と、相手のチャンスを阻止する「失点を防ぐ」ことの2つが定義づけられる。

攻守の切り替え(守備→攻撃)では、「ボールを奪い返した状況でチームとしてどう対処したのか」を確認し、「相手チームの守備が整う前に相手のゴールに進みチャンスを作り出す」ことと、「相手のゴールへは進まずにボールの保持を優先する」のどちらかを選択する。

攻守の切り替えの選択肢については、それぞれのチームが自チームの戦略や戦術に従って選択を行う。

「レベルⅠのフィルター分析では、定義された項目の達成度、つまりできたか、できなかったかに焦点を絞って分析を行います」

4つのチームファンクションをそれぞれ定義づけられたチームタスクについて、達成度という視点で分析することで、自チームの展開するサッカーを客観的に適正に評価することができる。

この分析手法は、レベルが上がるに従い、フィールドの位置、目的、原則といった概念(フィルター)が加わり、より精緻な分析が可能になる。レベル分けされたフィルター分析はⅠから順に実践していくことができ、指導者の理解度に応じて使い分けることも可能だ。

今回紹介したのは、白井さんのフィルター分析のベースになるレベルⅠの分析のみ。レベルⅡ、Ⅲ、Ⅳではさらに要素が増え、「複雑なゲームであるサッカーをシンプルに解読する仕掛け」が各フィルターに備わっている。フィルター分析についてより詳しく知りたい方は、白井さんの分析手法が収録された「ザ・サッカーアナリティクス」をご覧いただきたい。

いつ、誰が行っても適切な分析と評価が可能

もうひとつ、フィルター分析が優れている点は、分析に使用する要素が客観的な事実に基づいているため、理論を理解した人間が分析をすればいつ、誰が行っても同じ結果になることだ。

分析対象が小学生でも高校生でも、プロの選手でも分析のためにやることはかわらない。分析をする人間が元プロ選手でも、サッカー経験者でも、未経験のお父さんコーチでも適切な分析と評価ができるようになる。

取材中、白井さんの話を聞いていて、以前耳にした「科学」の定義を思いだした。「科学とは客観性があって再現性があって、普遍性があるものだ」という話だ。

白井さんのフィルター分析をはじめとする手法は、サッカーを科学的に分析するアプローチに違いない。そのことを白井さんに伝えると、「まさにそのとおりです」と盛り上がった。

続けて白井さんは、「サッカーを科学的に分析するためには、こうしたフィルターを通して誰もが正しく分析を行うことが重要」だと教えてくれた。

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白井裕之(しらい・ひろゆき)
1977年愛知県生まれ。18歳から指導者を始める。24歳のときにオランダに渡り複数のアマチュアクラブのU-15、U-17、U-19の監督を経験。2011/2012シーズンから、AFCアヤックスのアマチュアチームにアシスタントコーチ、ゲーム・ビデオ分析担当者として入団し、その後、2013/2014シーズンからアヤックス育成アカデミーのユース年代専属アナリストとして活動中。UEFAチャンピオンズリーグの出場チームや各国の優勝チームが参加するUEFAユースリーグでも、その手腕を発揮し高い評価を得ている。オランダサッカー協会指導者ライセンスTrainer/coach 3,2 (UEFA C,B)を取得。

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  • JFA技術委員長
    霜田 正浩 氏

  • 湘南ベルマーレ監督
    チョウ キジェ 氏

  • 大学全日本選抜監督
    神川 明彦 氏

  • アヤックス アナリスト
    白井 裕之 氏

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