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試合での正しい立ち位置を身に付けさせる練習方法/U-12年代までに理解しておくべきポジショニングの概念

サッカーコーチのコーチとして活動中の倉本和昌氏による「12歳までに理解すべき、ポジショニングの概念」。前編では「ポジショニングの重要性と定義」について講義をしてもらったが、後編ではより実戦に即した「U-9、U-12年代におけるポジショニングの指導方法」と題し、具体的な練習の仕方、コーチングのポイントを紹介したい。(文・鈴木智之)

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U-9年代の指導は相手のプレッシャーが少ない数的優位の練習から始める

倉本氏は、多くの指導現場で行われている「1対1」のトレーニングを例に挙げ、次のように語る。

「U-9の子どもたち、なかでも技術レベルが低い選手にとって、1対1をプレーすることは大変です。しかしながら、技術を高めるために、単純なドリブルなどのドリル練習をすると飽きてしまいます。そこで、どうすればいいでしょうか? 私が推奨するのは、まずは2対1から始めてみることです」

9歳という認知力や判断力、技術力が未発達の子にとって、相手と1対1で対峙する状況は難易度が高い。1対1という、常に相手がボールを奪いに来る状況にさらされ続けると、うまくプレーできないことがある。その状況が続くと、「サッカー自体が嫌いになってしまう可能性がある」と倉本氏は言う。

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「私が推奨する2対1は数的優位なので、相手のプレッシャーが半減します。相手がどう来るかを見て、判断を変えることがしやすいので、小学校低学年ではまず2対1の判断やプレー選択を間違えないことをトレーニングで身につけてから、1対1のトレーニングをするのも良いと思います」

2対1から1対1を経て、状況が複雑になるのが3対2だ。その中でパスがうまく行かなければドリル練習でパスをやっても良く、ドリブルの場合もしかりだ。子どもたちにうまくプレーできない理由を説明して、ドリル練習に移れば、モチベーションが高い状態で臨むことができるだろう。

団子サッカーの解消に有効な「4ゴールゲーム」

「まずは数的優位の状況で練習をして、試合は2対2、3対3、4対4などの同数で行うのが良いと思います。試合形式では、ゴールを4つ使うことを推奨します。これは団子サッカーの解消にもつながります。段階を踏んで少しずつ人数を増やしていくことが大切で、最初からU-9の子たちに8人制でプレーさせても難しく、トレーニング効果も少なくなってしまいます」

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4ゴールの中で1対1をすると、2方向に進むことができるので、プレッシャーの方向がひとつの方向に偏ることがない。ボール保持側はプレーしやすく、それは2対2や3対3でも同じだ。

「その状況で、コーチがあれこれ言う必要はありません。プレーにシンクロしながら『どっちのゴールが空いている?』『相手がいない方のゴールに攻めていった方が良いんじゃない?』と言うと、何人かの選手はどう動けば良いか、気がつき始めます。具体的には、ボールとは反対サイドのスペースがある場所で待っていようと、広がる選手が出てきます。これがポイントで、この設定の中で、自然とボールから離れることを学び始めるのです」

続いて倉本氏は、3対3、4対4で起こりがちな問題を挙げ、どのように解決に導いていくかをレクチャーしていく。

3対3
・バラバラに動いてしまう
・3人目の選手がスペースにかぶってしまう(いきなり走り出す)
・ゴールが決まった後、すぐにスタートのポジションに戻れない

4対4
・ダイヤモンドが形成できない、維持できない
・深い位置を取れない
・「俺はここ!」とポジションで固定されてしまう

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「3対3は、最初はとくにコーチングをせず、自由にプレーをさせます。そうすることで選手たちは、どうすればうまくいくかを考え始めます。4対4になると、ポジショニングの概念が出てきます。基本的には、ダイヤモンドのポジションをとることが望ましいです」

動画ではそれぞれの問題点の詳細を解説。そこから、「4ゴールゲームを実際のサッカー(8人制)にどうつなげるか?」という視点で話は進んでいく。

「8人制の試合ではゴールは1つずつですが、子どもたちの成長、サッカーを学ぶという観点から考えると、ゴールが1つの場合、その方向に選手が集まってしまうので、あまり良い設定とは言えません。4ゴールゲームの考え方としては、8人制ピッチの中盤にゴールが4つあるイメージです。グラウンドの右、左、中央に選手がいて、さらに一人加えてダイヤモンドの形にポジションをとることで、前と後ろ、中盤とポジションが決まっていきます」

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動画ではミニゲームのルール設定や人数を増やした場合の設定変更方法など、指導の現場ですぐに使えるアイデアが紹介されているので、ぜひ参考にしてほしい。

さらに動画では「なぜプレッシャーを受けるのか?」という切り口から、ポジショニングの大切さに言及。U-9からU-12へと年代が上がり、理解力の向上に応じて身につけるべきポジショニングの基準を「パスの3原則」から紹介している。

倉本氏が大宮アルディージャのコーチ時代、オランダ人コーチからクラブに継承されている原則を知り、「受け手がフリーだったらターンする」「受け手にゆるくマークが付いていたら、ワンタッチで落として前向きにサポートする」「受け手が最初からタイトなマークを受けている場合、最初から深くボールを入れて、前向きにサポートする」という原則をベースに、どう動くかを解説。

後編は50分に及ぶ大作となっており、この動画一本でも、U-9、U-12の指導における大切なことを、数多く学ぶことができる。ジュニア年代のみならず、ポジショニングの基準や原則、サッカーの原理原則を知りたい指導者にとって、必見の映像と言えるだろう。

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【講師】倉本和昌/
サッカーコーチ専門コーチ。高校卒業後、スペインのバルセロナに留学。アスレチック・ビルバオにて育成の仕組みについて学び、スペイン公認上級ライセンスを日本人最年少で取得。帰国後は湘南ベルマーレ南足柄、大宮アルディージャのアカデミーでコーチを務め、2018年よりサッカー専門コーチとして独立。Jクラブ、大学、高校、町クラブ、幼児など様々なカテゴリーのコーチをサポートしている。

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