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高校の3年間でも伸ばせる!ビジャレアルのスタッフを驚かせた興國サッカー/興國高校 内野監督インタビュー(2)

高い個人技と個人戦術、チーム戦術を融合させた攻撃的なスタイルで「関西のバルサ」と呼ばれている興國高校(大阪府)。全国大会に出場経験のない学校でありながら、毎年のようにプロ選手を輩出し、年代別日本代表にも選手を送り込んでいます。

興國高校サッカー部を率いる・内野智章監督のインタビュー後編は『日本サッカーの課題』について、話が進んでいきます。

<<前編はこちらから

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■狭いグラウンドを逆手に取ってプレス強度を上げる

――前編では技術を高めるためのボールコーディネーションについて話を伺いましたが、日々のトレーニングでは、どのような取り組みをしていますか?

内野 興國の基本的なスタイルは4-3-3、もしくは3-4-3のポゼッションサッカーで、攻撃的なスタイルをめざしています。

学校のグラウンドはかなり狭いのですが、それを逆手に取って、狭いスペースでの11対11をして、高いトレーニング強度を保っています。

以前、カンプ・ノウ(バルセロナのホームスタジアム)でレアル・マドリーとのクラシコを見た時に、センターサークルを挟んで、30mの間にフィールドプレイヤー20人が入ってプレーしていたんですね。


――スペースがほとんどなくて、少しでもボールコントロールをミスすると、相手に取られてしまいますね。

内野 そうなんです。そのような環境でプレーしていたら、プレスの強度も上がるし、技術も身につきますよね。

実際に狭いスペースで練習を始めたら、プレースピードが上がりました。週に2回は学校から出て、Jグリーン堺で練習をするのですが、10分×3本はハーフコートで11対11をします。

そうすると、ボールを持って少しでも止まっていたら奪われます。流れるようにプレーしないとダメだということに選手たちが気づき、さらにボールコーディネーションの練習に熱が入る。

トレーニングでやっている技術の習得が、試合の中でマストになる環境を作らないといけないと思って取り組んでいます。

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狭いグラウンドで行う11対11(DVD「興國式サッカーテクニカルメソッド」より)

■スペイン遠征で感じた日本の守備意識の低さ

――興国では毎年スペインに遠征に行っているそうですが、どのあたりに刺激を感じますか?

内野 スペインに行って感じたのは、ボールを足元で動かす部分は日本の方が上だということ。一方で身体をぶつけるとか、ラグビーフットボール的な要素は、圧倒的にスペインの方が上でした。

彼らはまず、シュートをゴールに入れることを考えてプレーしています。そこをどうやって阻止するかを考えるのですが、我々も含めてゴール前の厳しさであったり、ボールをゴールに入れさせないようにする技術は、日本の選手はまだまだですよね。

日本の育成年代は守備の戦術や技術が低いので、突出した運動能力があれば、点が取れてしまう現状があります。一方でスペインのように守備戦術がしっかりしていると、突出した能力だけでは限界が来ます。そこで駆け引きや技術、戦術などの要素が必要になってくるんです。


――たしかに、日本サッカーにおける守備への意識の低さ、戦術レベルの低さは、カテゴリー問わず、課題があると感じています。

内野 鶏が先か卵が先かではないですが、FWがマークを外す動きを執拗にすれば、DFはどうやってマークを外されないようにするかを考えますよね。

その結果、相乗効果でDFのレベルも上がります。それと最近思うのが、サッカーが強い国はフットサルの文化があるということ。フットサルはゴールが小さいので、GKを外さないとシュートが入らないですよね。

GKがある一定のレベルに行くと、GKを見て逆を突く、股間を狙う、トーキックで蹴るなど、工夫しないと点は取れません。興國は小さいゴールを使って練習をしますが、コースを狙って蹴らないと入らないので、しっかり狙うようになりますし、ゴール前でどうやってGKと2対1の局面を作ればいいかを考えるようになります。

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選手に指導を行う内野監督(DVD「興國式サッカーテクニカルメソッド」より)

■ビジャレアルのスタッフが驚いた高校3年間での伸びしろ

――最後に、今年の目標を教えてください。

内野 今年の目標はプロに行く選手を出すこと。それとプリンスリーグに昇格すること、高校選手権に出ることです。

昨年、スペインに遠征に行ったとき、ビジャレアルのスタッフに「興国は相当すばらしいアカデミーを持っているんだろう」と言われたんですね。

そこで通訳の方に「いや、興國はハイスクールのチームでアカデミーはないんです」と伝えてもらったのですが、スペイン人にはハイスクールのクラブのイメージがなくて「何を言っているんだ?」と理解してもらえなかったことがありました。

そこで「ビジャレアルのユースの選手たちは、クラブからお金をもらっているけど、興国の選手たちはいくらもらっているんだ?」と聞かれたので「いや、お金はもらっていない。15歳までみんな別々のチームでサッカーをしていて、16歳から高校に入って、お金を払いながらサッカーをしている」と言ったら、信じられないという顔をして「たった2、3年でこのサッカーができるわけがないだろう!」と。


――ビジャレアルのスタッフは、興國が良いサッカーをしていると評価したわけですね。

内野 彼らからすると、2、3年でこのレベルのサッカーができることを驚いていたんだと思います。

それを選手たちに言ったら、「俺らすごいんちゃうん?」と喜んでいましたが(笑)。僕らがめざしているサッカーはそれだけ難しいことだと思いますし、逆に言うと、完成していないからこそ選手権に出られていないんだと思うんです。

ビジャレアルの人は個々の技術が高くて、チーム全体が勤勉にプレーしている部分を評価してくれましたが、それは興国がすごいというよりも、日本人が持つストロングポイントなんだと思います。

今後も良いものを研究して取り入れながら『ジャパンズウェイ』のオリジナルを作っていきたいと思っています。

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