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ゴールを意識したドリブルと味方を助ける2人目の動きとは? / 状況によって使い分けるドリブルと瞬時の判断力

ドイツのケルン体育大学は湘南ベルマーレの曺貴裁監督や広島や浦和を率いたミハイロ・ペトロヴィッチ監督の通訳として活躍した杉浦大輔氏も留学していた名門校である。そこで教鞭をとり、ケルンのユースサッカースクールのオーナーも務めるクラウス・パブスト氏が来日し、ジュニア年代の選手の指導にあたった。彼が実践する練習メニューとはどういったものなのか?

今回のCOACH UNITED ACADEMYの動画では、来日したクラウス氏がジュニア年代の選手たちへどういったトレーニングを教えているかを紹介している。前編では単なるスキルを磨くことではなく、運動と脳トレを組み合わせ、サッカーにおける状況判断・認知の部分を磨くものを紹介。映像の後編ではより実践的なドリブルのトレーニングに着手した。(取材・文 竹中玲央奈)

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■状況を判断しながらファーストタッチを変える

まず行われたのはミニゴールを使った対人メニュー。攻撃の選手は2人のディフェンスを相手にドリブルを仕掛けて2つあるミニゴールを狙っていくのだが、数的不利の中でも「ボールを取られないことを恐れないで、2人に対して自信を持って仕掛けていこう」とクラウス氏はゴールに向かう姿勢を促していた。

また、数的不利の状況でゴールを目指すためにどのスペースへドリブルをすればよいのか。このトレーニングでは2つのミニゴールが設置されている。その両方のゴールを目指すためには、まずファーストタッチはどこにボールをコントロールすればゴールの確率を高められるのか。など相手とゴールを認知、判断しながらプレーすることを求めていた。

そして、このメニューでは1対2のまま終わるわけではない。ここに工夫がある。攻撃陣は実は2人存在するのだ。1人は最初に1対2をおこなう者。そしてもう1人は1人目のスタート位置の後方に用意されていたコーンをスラロームドリブルで進み、最後のコーンを抜けたら対人に参加できるのである。この2人目の攻撃者がコーンドリブルを終えた瞬間、フィールド内では2対2が始まる。その際、1対2の状況が続いていた場合は一時的にボールがフィールド内に2つ存在することになるのだが、コーンドリブルをし終わった選手の持つボールが"有効"となるのだ。プレーが切れた場合は、2人目の攻撃参加を待つことになる。

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対人の場面というのは試合で間違いなく生じるものであるが、数的不利や数的優位での状況がずっと続くことはありえない。試合の流れの中で関わる人数は変わってくることは自明であり、その状況が転換する中で正確なポジショニングをとり、相手の穴をつくなどの判断を講じていかなければいけない。そういう意味では実践の場面を非常に強く想定されていたメニューと言えるだろう。

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■「ゴールを意識した」オフザボールの動き

それだけでなく様々なルールを加えてこのドリブルのメニューが展開されていくが、2対2という局面の中でクラウス氏が強く指示したのは、"ゴールを意識する"ということだ。具体的に言うと、敵にとって嫌なエリア、ゴールに近いところを狙うという点である。決して広くはないスペースの中で2対2を展開する中、あえて狭い方向にボールを受けようとする選手が多かった。それを見たクラウス氏は「動いて味方にスペースを作ろう。広くしよう。ボールを持っていない人が(味方の)近くにいればスペースがなくなってしまう。けど、ゴールに向かって離れることで大きなスペースができる」とアドバイスを送った。

続けて、こう口にする。
「バイエルンやバルセロナは前に、前にというプレーをしている。メッシもボールに近づくのではなく、スペースを作って前でプレーをしている。試合中、常に特にボールを持っていない人は、ボールがどこにあるのかではなくてスペースがどこにあるのかを意識してみよう」

相手より多くゴールを奪うこと、をサッカーの本質とすれば、やはり相手ゴールへ向かう意識というのは必須であり常に意識しておくべき点だ。加えて、その状況でどういったプレーが相手にとって嫌なのか、というところについてはジュニア年代から考えられるに越したことはない。一件、どこにでもあるような練習であるが、今回のクラウス氏がメニューごとに入れた仕掛けや狙いについては一見の価値がある。ぜひ、動画の全編をご覧になって頂きたい。

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【講師】クラウス・パブスト/
かつてブンデスリーガの名門1.FCケルンで育成部長を務め、ケルン体育大学で指導者養成、ドイツサッカー協会のU9、U10、U11、U15の育成プログラムを作成。ポドルスキなど、多数のブンデスリーガを輩出。親日家としても知られており、毎年日本でトレーニングキャンプ等を実施している。