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ボールを奪うために必要な3つのポイントとは?/アルゼンチンサッカーに学ぶ「体の使い方」と「メンタリティ」

COACH UNITED ACADEMYでは、元アルゼンチンU-20代表コーチ、アルゼンチン女子代表監督を歴任した、ホルヘ川上氏のトレーニングを公開中。後編ではフィジカルコンタクトを重視した「1対1から2対2」の様子をレポートしたい。

アルゼンチンサッカーの特徴でもある球際の強さ。これはフィジカルコンタクトの技術が高いことに起因しているのだが、日本ではあまり重視されて指導が行われない部分でもある。

動画前編では、ホルヘ氏による具体的なフィジカルコンタクトの技術を紹介したが、後編ではそれを踏まえて、実践の中でトレーニングが行われた。(文 鈴木智之)

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■トレーニングの中に複数のキーポイントを設定する

ここで紹介するトレーニングは「1対1から2対2」。設定としては前編で紹介したトレーニング同様、選手2人が1メートルほどの距離に向かいあって立ち、その後方にコーチがボールを足元に置いてスタンバイ。コーチの笛の合図で3メートル先にあるマーカーを2人が回る。

前方の2人がスタートした直後、後列の2人がそれぞれチームメイトをサポートするポジションをとり、コーチがパスしたボールを受けて2対2が始まる。目的はゴールを奪うことで、1回のトレーニングは20秒以内。(設定詳細は動画を参照

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ここでもホルヘ氏は、最初にコーンを回る2人に「腕を使って相手の内側に入ること」についてコーチング。さらに2列目の選手には、味方が最初にボールを保持したときには、パスを受けられる位置につくこと。守備に回ったときには、協力してボールを奪うポジションに入るという、攻守の切り替えを強調。「2番目の選手(サポートに入る選手)は声を出そう」と指示の大切さも伝えていた。

また、フットサルコートの中、両サイドから2グループで同じトレーニングを行うので、目の前の2対2だけに没頭していると、反対サイドで2対2をおこなっているグループの選手と重なったり、ぶつかったりしてしまう可能性もある。そこでホルヘ氏は「顔を上げて、周りを見よう。ぶつからないように!」と、状況把握をうながす声掛けをしていた。

単純に2対2をするだけでなく、「フィジカルコンタクトスキル」「攻守の切り替え」「攻撃か守備か、素早い判断とポジショニング」「他のグループの選手にぶつからないよう、周りを観ること」など、2対2のトレーニングに複数のキーポイントが含まれている。少人数でありながら実際の試合に近いオーガナイズは、トレーニングを組み立てる際の参考になるだろう。

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■守備時における3つのコーチングポイント

続いては、フットサルコート全面を使った2対2。各チームの選手がゴールの脇からセンターサークル付近に向かって出てきて、コーチが手でボールを地面に落としたらスタート。ゴールはワンタッチシュートのみ認められるというルールだ。

ここでは、ホルヘ氏が守備時の対応について、戦術的な部分での指導を行っていた。「先程のカバーリングに入った練習(1対1から2対2)を思い出して」と言うと、次の3点についてコーチング。

・ボール保持者の近くにいる選手がボールを奪いに行く
・2人目の選手はカバーリングのポジションをとる
・守備側は味方と同じ高さのラインにポジションをとらない。

具体的な動きはCOACH UNITED ACADEMY動画を参照して頂ければと思うが、守備時のチャレンジ&カバーの原則を学ぶことができるコーチングが随所に見られた。

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また、ホルヘ氏のコーチングは「観る」「聞く」「声を出す」という、ボールを蹴る部分以外にも働きかけていたのが印象的だった。「笛の音でスタート」というルールの中で、ホルヘ氏が「ハイ!」と声を出し、子ども達は練習が始まったと思ってプレーを開始する。

そこで「笛が鳴ったらスタートだって言ったよね?」と問いかける。このように注意力や観察力なども高めようとする狙いがあり、コーチと子どもたちの駆け引きが随所に見られたのも、アルゼンチンらしい光景だった。

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COACH UNITED ACADEMYでは、ホルヘ川上氏のトレーニング風景を公開中。普段、なかなか目にすることのできない、アルゼンチンのトップレベルの指導者によるコーチングをぜひ動画で確認頂ければと思う。きっと多くの気付きや発見があるはずだ。

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【講師】ホルヘ川上/
1963年、アルゼンチン生まれ。アルゼンチンサッカー協会S級ライセンス保有。1992年から2013年までアルゼンチンサッカー協会のコーチとして、U-20代表コーチ、女子代表監督などを歴任。U-20W杯優勝、女子W杯、北京五輪(女子)出場など、数々の経験を持つ。

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