TOP > コラム > GKからのビルドアップとカウンターアタックへの備え/ACミランの哲学に基づく守備の改善トレーニング

GKからのビルドアップとカウンターアタックへの備え/ACミランの哲学に基づく守備の改善トレーニング

イタリアの名門・ACミラン。育成に定評があり、2016年度の下部組織(U-15~U-18)に所属する選手のうち、計38名がイタリアの年代別代表に選ばれるなど、国内屈指の育成機関を有している。

そこで今回のCOACH UNITED ACADEMYでは、千葉県で活動する「ACミランアカデミー佐倉」でテクニカルディレクターを務めるルカ・モネーゼ氏に登場して頂き、本国のミランと同様のメソッドで展開するトレーニングを紹介してもらった。(文 鈴木智之)

この記事の動画はオンラインセミナーで配信中!詳しくはこちら>>

Still1013_00008.jpg << 前回の記事を読む 

正しいポジション取りとスペース管理が重要

GKも含め数的優位の状況を作りDFラインから攻撃のビルドアップを行うチームはジュニア年代でも増えている。そして、相手はそれを狙い前線からハイプレッシャーをかけてくる。後編のテーマは「GKからのビルドアップとカウンターアタックへの備え」。ルカコーチがその狙いを説明する。

「このトレーニングでは4対4をベースにし、選手たちがGKから始まるプレーをビルドアップに繋げていくことに注目して行います。またビルドアップだけでなく、守備側がゴールを決めた時、またはボールを失った時に、素早く攻撃から守備へのトランジションを行い、ボールを奪い返しに行かなければいけません」

その際のポイントは「しっかりと正しいポジションを取ること」「(相手にボールを奪われた際に)攻撃側にスペースを与えないこと」(ルカコーチ)。現代サッカーでは、正しいポジションをとり、攻撃側に進入するスペースを与えないことが守備の第一歩となる。その上で、相手側からボールをどう奪い返すかを考えることが重要で、ジュニア年代から身につけておきたいコンセプトの一つでもある。

映像内オーガナイズの図②.jpg

トレーニングは守備側GKのパスからスタート。守備側(青色)のチームはペナルティエリアの外でボールを受けなければならない。また、攻撃側(赤色)のチームはGKが守るゴールから点を取ることを目指し、守備側(青色)はボールをマーカーでできたゴールにドリブルで通過することが目的となる。

ゴール反対側のグリッドの外には、ボールをひとつ足元に置いた状態で待機するフリーマンがおり、攻撃側のチームがボールを奪ったら、足元のボールは使わずに攻撃側に参加し数的同位を作る。

反対に、守備側のチームがドリブルでゴールを通過したときは、フリーマンは足元のボールをドリブルINして攻撃をリスタートする。そのフリーマンには「プレー機会を待っている間は、グリッドの外の位置でドリブルをする」というタスクが課された。(設定は動画参照)。

ここでは、まず「GKからのビルドアップ」がテーマのため、プレーが切れたらGKからのパスで再開する。守備側がゴールを奪う、またはボールを奪われた瞬間に、攻撃側がフリーマンを加え数的同位でリスタートするため、守備側は素早く相手のカウンターアタックに備えて正しいポジションをとり、攻撃側の進入するスペースを塞がなければならない。

Still1016_00000.jpg

ルールを追加してトレーニングの難易度を高めていく

そして、休憩時間を挟み、ルカコーチは「次からは少し難しくするよ」とさらなるルールを追加する。ビルドアップの起点となるGKに「GKからプレーがスタートするとき、GKには3つの選択肢がある。ゴールの左右にいる選手と真ん中の選手、どれにパスを出せばいいか?」と質問し、できる限り、目の前(ピッチ中央)にいる選手(センターバック)を使おうと指示。

また、「攻撃側は守備側の選手にマンツーマンでついた状態からプレーがスタート」というルールを追加した。そのため、GKのビルドアップのボールを受ける守備側の選手は、常に準備をし、相手のプレスをかいくぐって前進しなければいけない。また、トランジションのシーンも増え、守備側の選手はより高い難易度でコンセプトを実行しなければならない。

このように攻守においてインテンシティの高い状態を作ることで、攻撃側は「相手のビルドアップを止めるにはどうすればいいか」を考え、守備側は「相手のプレスを外して、パスを繋ぐためにはどうすればいいか。またボールを失った際にどのように奪い返すか」を意識しなければならない。これは、ミランのフィロソフィーでもある高いインテンシティの中で戦術的な判断が求められるメニューと言えるだろう。

Still1016_00004.jpg

トレーニングの最後は11対11の試合で締めくくり、11対11でもアウトボールはGKからリスタートし1日のトレーニングを振り返った。ミランのトレーニングに対する考え方として、高いインテンシティを保つために、コーチがなるべくプレーを止めず、選手のプレーにシンクロしながらコーチングをしていく。そのあたりの声掛けの内容やタイミングも、ぜひ動画で確認していただければと思う。

最後に、ルカコーチによる、COACH UNITED ACADEMY読者に向けたメッセージを紹介して締めくくりたい。

「我々は多くのシチュエーショントレーニングを提供しています。なぜなら選手達が取り組み、それを習得するためには多くのチャレンジと経験をしなければいけないと信じているからです。できるだけ多くのシチュエーショントレーニングを行うことで、選手が自ら考え、置かれた状況の中でより良い判断ができるようになります。これは我々ミランが一番大切にしていることであり、みなさんにもぜひオススメしたいと思います」

Still1013_00007.jpg << 前回の記事を読む 

この記事の動画はオンラインセミナーで配信中!詳しくはこちら>>

【講師】ルカ・モネーゼ/ 1981年、イタリア出身。ヴェローナ大学スポーツ運動科学部卒業。ACキエーヴォ・ヴェローナで9年間、エラス・ヴェローナFC(基礎部門責任者)での指導を経て、2012年よりACミランアカデミーで指導を始める。欧州サッカー連盟(UEFA)公認B級ライセンス保持。