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相手を背負った状態を"ピンチ"から"チャンス"に変えるには?/サッカーに活きるフットサルの理論&トレーニング

今回、COACH UNITED ACADEMYに登場していただくのは、元フットサル日本代表で、Fリーグのフウガドールすみだでプレーする稲葉洸太郎氏だ。

稲葉氏は現役選手のかたわら、「サッカーに活きるフットサルの技術」を、自らが主宰するスクール「ポテンシア」でサッカー少年・少女に伝えている。

ブラジルやスペインなどサッカー先進国では、育成年代の選手を伸ばすための有効な方法としてフットサルが積極的に取り入れられている。

だが、日本でテクニック面ばかりが強調され、フットサルをどうやってサッカーに落とし込むべきかあまり知られていない。

そこで今回は稲葉氏に、サッカーの試合で実際に起こる現象を解決するための、フットサルのトレーニングを教えてもらった。(文 北健一郎)

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ネイマールやイニエスタはフットサル出身選手

サッカーの試合では、相手を背負ってパスをもらった選手に対して、指導者や周りの味方から「下げろ!」「戻せ!」という声が飛ぶことが多い。相手を背負った状態はピンチだからセーフティーにプレーするべき。それがサッカーの常識となっているのだ。

だが、稲葉氏は「相手を背負っている=ネガティブな状態」という考え方を真っ向から否定する。「フットサルの技術を身につければ、相手を背負っているのは、むしろポジティブな状態になります」。稲葉氏はそう言う。

ブラジル代表のネイマールのプレーを思い浮かべてほしい。

左サイドのネイマールがパスを受けるために下がってくる。だが、背後にはピッタリ相手がくっついている。それでも、味方の選手はネイマールの足元にグラウンダーのボールを出す。当然、相手はプレッシャーをかけてくるが、ネイマールはグッと腰を落としてキープし、一瞬の隙を突いてクルッとターンする----。

相手を背負った状態でキープできれば、味方の選手はその間に押し上げる時間を作れる。さらに、うまく入れ替わって前を向ければ、シュートやパスなどチャンスを作ることができる。

守備側のプレッシャーが強まり、時間も空間もない中でプレーすることが求められる現代サッカーにおいて、「フットサルの技術」を習得するメリットは計り知れない。実際にネイマールは9歳でサントスの下部組織に入ってから14歳まではサッカーとフットサルを並行してプレーし、幼少期にフットサルのスキルを学んでいる。

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ボールキープは「腕→肩→お尻」

相手を背負った状態でのプレーを向上させるトレーニングとして、稲葉氏が行なったのは、2人1組での「ボールキープ」。フットサルはコートが狭いため、必然的に相手との距離がサッカーよりも近い。そのため、「ボールを守る技術」が重要になる。

ボールを持った選手に対して、ディフェンスの選手が後ろからプレッシャーをかける。デモンストレーターを務める子供たちは、普段はサッカーをしているので、相手を背負った状態でキープすることに慣れていない。ボールを突かれてしまったり、バランスを崩してしまったりする場面も。

それを見ていた稲葉氏が、子供たちにコツをアドバイスする。

「みんな、腕を使ってた? ボールをキープする時は足だけじゃなくて腕を使おう。腕でグッと相手を抑えれば、そのぶん距離が空く。もっと来た時は、肩で抑えよう。でも、肩で行くと相手に下から回り込まれることがあるから、お尻を相手の前に入れてブロックしよう」。

ボールをキープするコツを覚えたら、次は背負った状態から前を向くためのトレーニングへ。2人1組になって、攻撃側がボールを背負ってキープしている状態からスタート。ルールは「攻撃側が前を向いたら1点」、「守備側がボールに触ったら1点」で、得点数を競うというもの。それができたら、「前を向いた後に3秒ボールに触ったら1点」などルールを変えていく。

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試合に近い状況を設定する

稲葉氏が主宰するスクール「ポテンシア」では、前日本代表監督のミゲル・ロドリゴ氏をメソッド・プロデューサーに迎えて、膨大な数のトレーニングメニューを作っている。

ミゲル氏と稲葉氏の2人が大事にしているのは、練習でやったことを、いかに試合に出せるようになるか。スクールで重点的に行うのが、チームとして取り組みたい課題や意識づけしたいプレーを抽出し、その事象が起こるように人数・サイズ・ルールを設定した「グローバルトレーニング」。

今回、COACH UNITED ACADEMYで紹介してくれた「1対1+2フリーマン」も、そのようなコンセプトで作られたメニューだ。

四角形のコートを作って、ピッチの中に攻撃側と守備側が1人ずつ、両方のサイドにパスを受けるフリーマンの選手を配置する。スタートの合図と共にボールを奪い合う。ボールを持っている選手は、両方のフリーマンにパスを通すことができたら1点。ただし、どちらかのフリーマンからパスを受けた後は、逆方向のフリーマンにしかパスを出せない。

このようなルール設定にすることで、「狭いピッチの中で相手から失わないようにボールをキープする」、「相手を背負った状態からターンする」、「ターンした後に正確にパスを出す」という、複数の要素を同時にトレーニングすることができる。

ただし、稲葉氏が行なっていたように、選手たちのプレーを見ながら、コートの幅を広げたり、あるいは狭めたり、ディフェンスの立ち位置を修正したりといった、細かい修正をその都度することが、トレーニングの質を高めるためには必要不可欠になる。

どのような声かけ、ルール変更などのオーガーナイズを行なっているかは、ぜひCOACH UNITED ACADEMYの動画で確かめてほしい。

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【講師】稲葉洸太郎/
1982年12月22日生まれ、東京都出身。暁星高校を卒業後、フットサルを始める。2004年、21歳でフットサル日本代表に初選出され、同年にはファイルフォックスで国内3冠を達成。07年よりFリーグのバルドラール浦安に移籍する。日本代表として08年、12年のFIFAフットサルワールドカップに連続出場し、日本人通算得点数1位を誇る。15年よりフウガドールすみだでプレー。自身が主宰するスクール「ポテンシア」では、ミゲル・ロドリゴ監督をメソッド・プロデューサーに招き、サッカーに活きるフットサルの技術を子供たちに伝えている。
POTENCIA FUTSAL SKILL UP SCHOOL